天狗はどこから来たか (あじあブックス 62)

著者 :
  • 大修館書店
3.92
  • (4)
  • (4)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 52
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784469233032

作品紹介・あらすじ

日本を代表する妖怪である天狗。しかし、その正体は、意外にも多くの謎につつまれている。天狗はどのように誕生したのか?天狗の鼻はなぜ高いのか?そもそも、天狗とは何者か?天狗イメージの源流を探り、その誕生の謎を解く、図像学の挑戦。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 学術書の読了後は「……つまりどういうことだってばよ?」となることがたまにあるのですが、本書は
    ・史料引用が巧み
    ・そうはならんやろという論の飛躍がほぼ無い
    ・中盤と終わりにある総括が簡潔で、理解を助けてくれる
    ・品はあるが、ユーモラスで読みやすい文体 
    と理想的な要素がそろっており、身になる読書ができた。

    中世期の天狗はトンビの羽根を身に纏った姿で描かれたり、トビそのものが正体であると解釈されたりすることが多いがその理由とは、というくだりが非常に面白かった。
    後書きにて語られる、杉原先生が天狗研究を始めたきっかけもチャーミングで親近感が持てた。

    ほかにも天狗の初出情報、国内でなぜ知名度が高まったか、中国と日本における天狗概念の違い、名前の音訓についての逸話、絵巻に描かれる外見の具体例、その姿の元ネタなどが初学者でも理解できるように紹介されている。
    すこしでも妖怪や民俗学、中世文学や仏教画に興味のある方には是非おすすめしたい一冊である!

    余談だが、この本があまりに魅力的だったので、大学の講義もきっと面白く学生からの評判も高いのではないかしらと筆者の名前で検索してみたところ、数年前に亡くなられておりしみじみした気分になった。
    同筆者の作品として図像学や妖怪文化の本が出版されているようなので、折りをみて読んでみるつもりだ。

  •  日本で有名な妖怪で浮かんでくるのは、水木しげるの漫画に登場する数々の妖怪をはじめ、河童、天狗などがある。その中で、今回の本では天狗がテーマになっている。

     「天狗」は中国から日本に伝わってきたが、日本と中国では「天狗」の姿が違う。中国では、「四つ足の悪獣」として現代に受け継がれている。中国天狗は、「流星の正体として、天空を吠えながら駆け抜ける犬の姿で登場し、災厄や戦禍を地上にもたらす存在として恐れられていた」というように、極悪街道まっしぐら。

     その一方、日本では、違う形で今に至っている。日本に伝わってきたのが飛鳥時代。日本で、天狗イコール流星の解釈を否定して以来、天狗は妖怪となり中国の天狗とは違う世界を歩むことになったとある。

     天狗の世界もいろいろあるようで、人間の想像力・妄想力のなせる業かな。

  • 時計技師の如く天狗を解体し解説する

  • まさか話がギリシャ神話やアルマゲドンまで行くとは思ってませんでしたが、天狗のルーツについて詳細に調べられてる良本でした。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1954年東京都生まれ。1989年早稲田大学大学院博士課程修了。早稲田大学文学部助手・講師、および他大学非常勤講師。専門は中国古代美術史だが、専門の枠にとらわれず、日中のさまざまな図像を比較芸術の視点から幅広く研究する。2016年逝去。著書に『中華図像遊覧』(大修館書店)、『いま見ても新しい古代中国の造形』(小学館)、『しあわせ絵あわせ音あわせ─中国ハッピー図像入門』(NHK出版)、『天狗はどこから来たか』(大修館書店)、共著書に『カラー版東洋美術史』(美術出版社)ほか、著書・論文・エッセー多数。

「2020年 『アジア図像探検』 で使われていた紹介文から引用しています。」

杉原たく哉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×