人と企業はどこで間違えるのか?---成功と失敗の本質を探る「10の物語」

  • ダイヤモンド社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478029770

作品紹介・あらすじ

ウォーレン・バフェットからビル・ゲイツに渡され、20年間読み続けられた最高のビジネス書。

感想・レビュー・書評

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  • 金本位制の章が割愛されていたのはとても残念。

  • ウォーレン・バフェットがビル・ゲイツに贈り、ゲイツが「最高の教科書」と称賛した書籍。米国の名だたる大企業・老舗企業・経営者が犯した過ちについて、冷静に淡々と描いている。ほとんどのストーリーが1950年代から1960年代のものであり、誰もが教訓として知っているはずであるが、なぜか我々は同じ過ちを繰り返す。その本質は「不都合な事実に気づかないふりをすること」「自己中心的に物事を判断すること」の2点に集約されると感じた。

  • ウォーレン・バフェットからビルゲイツに渡されたという、伝説のビジネス本。

    本書は、名門雑誌『ニューヨーカー』で記者として長年勤務したジョン・ブルックスによって1969年までに記されたものである。

    GE、Xerox、フォードといった著名企業の経営者たちに加え、ウォール街のブローカーや成り上がりのビジネスマンなどの物語が10のパートに渡って描かれる。
    彼らがその人生やビジネスにおいて、「どこで間違えたのか(あるいは間違えなかったのか)」が筆者の丁寧な取材を元に、鮮明に描かれる。

    本書は声高に筆者の主張を唱えるものでもなく、成功のためのノウハウを単純に伝えるものでもない。
    彼らの物語や人間性から何かを感じ取るのは読み手の仕事であり、そこに本書の深さと価値がある。

    半世紀余り前に記され、確かに時代背景や事例は古めかしいものではある。しかし失敗や成功の原因となる「人間の本質的な部分」を洞察するにはこれ以上ない一冊である。

    本書は間違いなく、めぐるましく移りゆく現代においてしばし立ち止まり、より良い方向に進路をとるための助けとなる。
    現代に生きる全てのビジネスマンが一度は読むべき古典の1つである。

    「時代は変わる。しかし、人間の本質はそれほど変わらない。」ー本書より抜粋。

  • 訳者あとがき

     本書は一九五九年から六九年にかけて執筆されたエッセイのアンソロジーである。二〇一四年の夏になってビル・ゲイツ氏が「最高のビジネス書」として紹介し、しかもウォーレン・バフェット氏から二〇年以上前に借りて、それ以来何度も読み返している本であるというエピソードがついたことで大きな注目を集めた作品だ。
     著者ジョン・ブルックス氏は一九二〇年にニューヨークに生まれ、一九九三年にこの世を去っている。プリンストン大学を卒業後、第二次世界大戦で陸軍の通信部隊に勤務したのち「タイム』誌の編集者の仕事に就いた。その後、優れたルポルタージュや短編小説を掲載することで定評のある『ニューヨーカー』誌のスタッフライターとなり、ストーリーテラーとしての腕に磨きをかけた。一九二九年の大恐慌、六〇年代の黄金期、八〇年代のM&Aブームなどをテーマに多数のノンフィクション作品といくつかの小説作品を残している。
     本書の各章で取り上げられているのは、いずれもアメリカ経済史の転機となるような出来事だ。株価大暴落、不祥事、法廷闘争、マーケティングの失敗例といった史実に関する記録だが、四〇年以上の時を経ても、それぞれの物語に時代を超えた普遍性が見られるのは驚くべきことである。たとえば第5章「コミュニケーション不全」では、一九五〇年代の価格カルテルについて、経営トップらが「何も知らなかった」と言い切ることの理不尽さが浮き彫りになる。この章を読むと、全米第七位の売上総額を達成しながら二〇〇一年にあっけなく倒産したエンロンの粉飾決算事件を思い出す。創業者からCEOの職を引き継いだジェフ・スキリング氏は社内弁護士による粉飾に関する報告を受けたとき、問題は対処済みとの説明に安堵し、「われわれは雪のように潔白なんだな」と応じたという。真実から目を背け、正しい道を選ぶ機会を逃した姿は本書の人物たち酷似している。
     第4章「もう一つの大事件」は、倒産の淵にあった証券会社の一般顧客を守るため、ニューヨーク証券取引所の旗振りのもとで金融機関が一致団結するという、一九六三年の手に汗握る物語だ。結末はほとんど正反対だが、二〇〇八年九月のリーマンブラザーズ破綻期と重なる。二〇〇八年のケースでは、ヘンリー・ポールソン財務長官の仲介のもとでウォール街の重鎮たちが綱渡りの交渉を重ねたが、民間資金によるリーマン救済は実現しなかった。結局のところ、金融市場の安定化のため巨額の公的資金の投入を余儀なくされたことは記憶に新しい。さまざまな意味で現在と過去に思いを馳せずにはいられない。
     本書の素晴らしい点は、半世紀近くたったいま読んでも、単に歴史的事実の記録にとどまらず、それぞれの出来事の裏側にある人間的な側面が鮮やかに伝わってくることにある。著者は丁寧に取材を重ね、成功と失敗の物語に隠された苦悩や葛藤に斬り込み、また一方で、有能であるはずの各界のリーダーたちがどうして道を誤ったのか多くの示唆を与えてくれる。ブルックス氏の文章はあくまでも抑制されたものであり、お説教めいたことを書き連ねたり、声高に何かを主張したりするわけではない。登場人物たちの心の機微を感じ取るのは読者の役割であり、それが本書を読むことの一つの醍醐味にもなっているように思う。
     また、時代を経た作品であるがゆえの楽しみとして、一九五〇年代から六〇年代にかけての視点に立った著者が折に触れて、「未来の社会」について示唆しているのが興味深い。なかでも、第3章「ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス」にある「六〇年代後半に未来の図書館にもっとも近づいていたのは、ゼロックス傘下のユニバーシティ・マイクロフィルムズだ」という一文は印象的だ。私たちはすでに、デジタル技術により世界中の情報を手元に手繰り寄せることができる時代にいる。一九六〇年代、急成長期にあったゼロックス社はコピー機市場での競争優位は永続しないと判断し、異業種に参入する先見性を持っていた。ところが七〇年代以降、同社はパロアルト研究所でコンピューターのグラフィカル・インターフェースやマウスを開発しながらその果実を手にすることなく、アップルやマイクロソフト、IBMに豊かな市場を明け渡した。高い企業倫理と好業績のなかでも自戒するバランス感覚を備えた組織さえ、安泰ではないのがビジネスの世界なのだろう。
     本書には個性的な人物が続々と登場するが、なかでも異彩を放っているのが第6章「最後の買占め」の主人公であるクラレンス・ソーンダーズだ。伝説の相場師リヴァモアを引き込んでウォール街に勝負を挑んだ逸話はそれだけでもドラマチックだが、事業家ソーンダーズが描いた未来図は革新的なアイディアに満ちている。彼は晩年にKeedoozle(キードゥーズル)という実験的全自動式スーパーを立ち上げているが、その名は"key does all" (鍵一つで買い物ができる)
    に由来すると言われる。時代が少しちがったら、彼こそがワン・クリックのオンライン・ショッ ピングモール第一号を創業していたのではないか。そんな想像をしながら本書を読み進めるの もじつに楽しい。
     時代は変わる。しかし、人間の本質はそれほど変わらない。ブルックス氏は一七世紀のユダヤ人商人の著作を引用したり、シェイクスピアをはじめとするエリザベス朝演劇のモチーフを引き合いに出したりしているが、そんなところにも人の普遍性を見つめる著者の姿勢が表れているように思われる。本書に記された歴史的な成功や失敗の経験には、ビジネスという冒険に踏み出す誰にとっても貴重な教訓があるはずだ。本書はこのめまぐるしい現代においてしばし立ち止まり、よりよい方向に進路を取るための助けになるのではないだろうか。
     なお、原書は『ニューヨーカー』誌に掲載されたエッセイを編纂した一二の物語から構成されているが、アメリカ連邦税法、および金本位制をテーマとした二つの章を割愛し、「一〇の物語」としたことをお断りしておく。
     最後に、本書に出会うことができたのはダイヤモンド社の横田大樹氏のおかげである。横田氏とのやりとりのなかで本書への理解を深められたことはかけがえのない経験だった。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

  • 購入した本。ビルゲイツ、ウォーレンバフェットおすすめの本。

    ゼロックスは「不可能と思うほど困難な目標に向かって、必ず達成できると周囲を鼓舞すること」を大切にしている。

    ソーンダーズの逸話は定期的に読み返したいと思うほど興味深かった。どんな逆境であろうとグリットをもって突破する姿勢は参考にしたい。

    「ビジネスの時代に生きながら、ビジネスに関わらないのは、人生を不完全なものにしている」

    デ・ラ・ヴェガの名言。「株の売買に関して助言をしてはならない。なぜなら洞察力が鈍ったとき、善意の助言が最悪の結果につながることがあるからだ」

    時代は変わるが、人間の本質は変わらない。この本の主題はこれに尽きると思う。ただ各ストーリーのメインメッセージを抽出するのは難しいと感じた。

  • 全部は読めませんでしたが、脇に置いてたまに読むと良いのかもしれません

  • オットーフォン・ビスマルクは、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言っているが、この本では、責任ある立場の人は、判断を誤れば組織の多くの人を路頭に迷わせることもあると言う点で、この様な過去の失敗談や美談として時が経ったものは、一読の価値があると思われる。ただし、この本が一回読んで、あぁそうだなと思うかどうかは、実体験というか置かれている状況の近さと言うか、環境がある程度理解できる人じゃ無いと、面白くないっていう感想になると思われる。もっと楽しいストーリーは他にも幾らでもあるでしょって。

    何故そうなったのか?については、一つのケースでさえ、視点が違えば、違う感想が出て来そうだが、それでも一つの答えが提示されてるから、何も無いわけじゃない。倫理的な観点を学べるわけでも無いし、なんだろう、不思議な本。

    想定読者は、40代以降のサラリーマン(経営層)だと思われる。

  • ビルゲイツが何度も読み直した本と言うことで有名ではあるが、どちらかと言うと大企業のCEOクラスの人たちが読むような内容である。大企業の取締役級における人たちが日頃経営運営する中で経験しうる経験談が記載されている。勉強にはなるが一般的なノウハウ本とするより経営陣が日ごろの抱えている問題や体験物語として読むには最高のビジネス書だと言えるかもしれないが、一般受けするとは思えない。

  • アメリカの事例ベース。理論が書かれているわけでなく事例ベースでそれぞれが示唆を得る形式。

    タイトル通りかもしれないが、ある程度の規模がある組織に属していたり多人数の絡むプロジェクトにいる人のほうが自分ごととして読めると思う。多くの人が絡むとそれぞれの想いが複雑に絡み、そこから良いことも悪いことも起こる。事例を通じて改めて痛感させられる。

  • 日本書籍のタイトルは上記の通りですが、原題は「Business Adventures」。
    つまり企業の失敗話の話ではなく、成功事例も載っていたりして、いわゆる「会社経営って、冒険そのものなのだ」ということを知るための本だと思った。
    例え成功していたとしても、そこで奢らずに、ちゃんと顧客と従業員とに向き合えるか?
    この中でのエピソードで、確かにビジネスで成功を収めたが、大事なものを失っていく様子も描かれている。
    経営に安定はない。それ故の「冒険」なのだろう。
    しかし人間は懲りないものだ。
    これだけ成功事例、失敗事例は体系化され、知識として蓄積されているにも関わらず、いまだに、人と企業はどこかで間違える。
    当社の経営は、本当に正しい道を進んでいるだろうか?
    「真摯さ」を失ってないだろうか?
    自己の反省も含めて考えさせられた一冊!
    (2017/04/23)

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著者プロフィール

John Brooks 1920ー1993 長らく雑誌『ニューヨーカー』のスタッフ・ライターを務め、特に1960年代のウォール街を、金融の豊富な知識とくだけた文体で描き出す独特のスタイルで人気を集めた。銀行家や株式仲買人らからの実地の聞き込みに現場で交わされる専門用語を交えながら、その時々の市場で起きていることを描くコラムが一世を風舞した。本書の底本となった『Business Adventures』は、そのような手法で書かれた連載をまとめた書籍として1969年に出版された、ビジネス書の古典といわれる一冊。

「2021年 『ビジネスの失敗学 ビジネス・アドベンチャーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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