木を見る西洋人 森を見る東洋人思考の違いはいかにして生まれるか

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478910184

作品紹介・あらすじ

文化によって世界観が変わっても、人間がものを考えるために用いる道具は同じだと誰もが思っている。肌の色や国籍、宗教が違っても、ものごとを知覚したり、記憶したり、推論したりするために用いる道具は同じである。論理的に正しい文章は、日本語であれ英語であれヒンズー語であれ、正しいことに変わりはない。同じ絵を見ている中国人とアメリカ人がいれば、彼らの脳裏に映る画像は当然同じものである。だが、もし、すべてが間違っているとしたら?本書は、東洋人と西洋人の心や思考のかたちが文化によっていかに違うか、その違いはなぜ生じるのかを科学的に解明する。「世界についての考え方は根本的にひとつである」とする認知科学の大前提に挑戦した知的興奮の書である。

感想・レビュー・書評

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  • *****
    孔子とアリストテレスの比較から始まり、
    心理学的に東洋と西洋の思考スキームの違いを考察していく。
    包括的、文脈的に、全体感に沿って流動的な事象を考察する東洋。
    線形に、要素還元的に、普遍的法則を抽出する施行をする西洋。
    東洋は変化が前提、西洋は安定が前提。
    *****
    東洋人に含まれる日本人にとって、数字を用いた要素還元的な論理的思考が「相対的には苦手」にあたるというのは肌感覚的にも良く分かる。
    安直なところで言えばアメリカ的な「○○のための3つのポイント」みたいな表現も納得。
    *****
    あくまで、西洋的なgoing concernを是とした利益至上主義的な企業経営、という枠組みの中で考えれば、西洋的な考え方は確かに理に適っている。
    東洋的に、全体感(たとえば"社会"という全体)の中で企業体が果たすべき役割を考えれば、変化する全体の中での全体への貢献、という結論に辿り着く。
    求心力や突破力が一時的にあることと、長期的に社会を維持できることは必ずしも一致しないし、求められる風土は環境によって変わりうる。
    *****
    あとついでながらこの本は珍しく邦題の翻訳がもの凄く秀逸だった。
    *****

  • 西洋人(主にアングロ・サクソン)と東洋人(主に儒教圏)の根本的な思考の違いについて。
    カテゴライズする西洋人と背景を読む東洋人。納得する部分が多い。
    お茶を飲んでる人に「もっと飲む?」と尋ねる中国語話者に対して、「More tea?」と尋ねる英語話者。端的だけどわかりやすい例。

  • タイトルを見た瞬間に「面白そう!!」と思った本で、内容は、タイトルのとおり。
    この本で著者は、西洋人と東洋人の間にある「思考の違いがどのように生まれるのか」を、様々な心理学的実験を通して紹介し、考察しています。

  • 基本的に西洋人は個人、東洋人は調和を尊重する。
    個人を尊重したいが立場や関係上調和しようとしてしまうのが東洋、日本の現代社会の本筋ではないか。
    人の考え方として参考にしたい。

  • 原題は「The Geography of Thought: How Asians and Westerners Think Differently…and Why」なので、なかなか秀逸な邦題。文化心理学に関する授業で紹介されていた本だったので、内容は知っているものも多かったが、言語構造の違いから思考プロセスの違いを考察するあたりは、初めてで興味深く読めて楽しかった。
     
    大航海時代はともかく、情報や物流が格段にグローバル化するようになって、まだ人間は1世代交代したどうかくらい。そのうち何代かあとには、思考プロセスも集約するのか、多様化を認めた上で成り立つのか、興味あるけど、まあ、なるようになる!だろう(笑)

  • 簡単な内容ではないが、読み進めると違いが面白く感じてくる。
    自分が左利きだからか、考え方、見方の違いはいくつになっても興味がある。

  • 東と西の認知バイヤス、思想を研究者の目で客観的に捉えた優れた図書。とても参考になる。
    【高度な推論プロセスほど、形式的な論理規則に従っている。矛盾率はその一例である。】

  • 【西洋】
    唯一民主的な文明だったギリシャがルーツ
    集合体の一員

    対象物に焦点を当てる
    行動の原因を行為者本人に求める傾向がある

    歴史の授業は結果と原因についての議論がされる(目的志向型推論)

    西洋人は単純さを好み


    【東洋】
    集団的な主体性の感覚をベースにしている→儒教
    道タオ、陰陽
    世の中は絶え間なく変化し矛盾に満ちている
    人間万事塞翁が馬

    万物は互いに影響しあう
    世界の中心にいるから知識に興味が少ない

    個人主義に相当する語がない
    他者の感情に焦点を当てる傾向がある

    関係に焦点を当てる

    行動の原因を文脈に求める


    上り坂にあっては儒教に従い、下り坂にあっては道教に従うということわざ

    東洋人は複雑さを仮定する
    矛盾のことわざが多い


    ーーーー
    価値観は変わらない
    日本は資本主義に経済になって100年たつがほとんど変っていない

  • 世界を牽引してきた西洋が、東洋に対するこのような作品が生まれたのは嬉しい。近年、私が頭の隅に疑問に思っていたのですぐに手に取って読んだ。そんなにいつも西洋は正しいのか?と。という事はいつの日か、中東文化やアフリカ文化にもこのような思いを持つのかもしれない。翻訳の関係でいつも文章がまどろっこしく難しいが、どうにか大事なところは私の程度でも拾えたのでホッとしている。

  • 全と個っていう本。

    『間人主義の社会 日本』をアメリカ人の視点で少し俯瞰して見た様な内容だった。

    翻訳された本で、アメリカ人をメインターゲットとした本なのでしょうがないとはいえ、「東洋人」「アジア人」「東アジア人」「中国人・韓国人・日本人」の表記の違いの意味がはっきり明記されておらず、気になってしまった。

    それこそ、西洋人と「東アジア人」だけではなく中東やロシア、アフリカや南アメリカに住んでいる人達はどういった見方をする人が多いのか知りたくなった。




    p. 5

    注目すべきことに、社会の構造や人間観と言うものは、それぞれの社会に生きる人々が持つ信念体系や認知プロセスと非常によく合致しているように思われる。


    p. 83

    言うまでもなく、東洋人は日常的に相互協調的なプライミングを受け、西洋人たちは相互独立的なプライミングを受けている。たとえ彼らの受けたしつけがどちらか一方に偏ったものではなかったとしても、周囲のさまざまな手がかりのおかげで、相互協調的な社会に生きる人は概して相互協調的な行動をとるようになり、相互独立的な社会に生きる人は概して相互独立的な行動をとるようになるだろう。


    p. 114

    西洋人は自分の力で直接的に人生を制御することが非常に重要だと考えているのに対して、アジア人の場合は、単に他者と同じ船に乗っているだけで結果は良くなると信じているようだった。

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著者プロフィール

リチャード・E.・ニスベット
ミシガン大学心理学教授。アメリカ心理学会科学功労賞、アメリカ心理学協会ウィリアム・ジェームズ賞、グッゲンハイム・フェローシップ受賞。

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