残酷物語 (筑摩叢書 52)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480010520

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  • ヴィリエ・ド・リラダン著/斎藤磯雄 訳『残酷物語』。
    この傑作、読み終えるのに10年かかった!

    ■「ビアンフィラートルの姉妹」……“神聖なる売春婦”という逆説がテーマなのだが、そもそも男の性にとって、聖女と淫婦は同義なのだ!
    ■「ヴィラ」……北村薫は自作中で本作を「神の手になる作品」と呼んだ。然り!
    ■「民衆の声」……耳を聾するほど騒然たる閲兵式の最中、おのがじしの民衆の心にはひとつ哀訴の声がこだまする。「哀れな盲にお情けを」と!
    ■「二人の占師」……金を払って我々出版社を儲けさせてくれるのは愚衆。よって才能のある文士など無用の長物。我々に必要なのは、奴らの好尚にかなった、無名、無能、俗悪、傲慢な三文文士なのだ。テーマはまさに21世紀のポピュリズム批判そのもの!
    ■「天空広告」……リラダンが予言したのは映画か、テレビか、はたまたインターネットか? いずれにせよ人心を惑わすのは夜なのである!
    ■「アントニー」……なぜ男たちは彼女の虜となるのか、なぜそんな女が存在するのか、そしてなにを彼女は思うのか――すべては謎である!
    ◆「ポートランド公爵」……これが書かれた時代が時代だから、リラダンのレプラに対する偏見はいたしかたない。ここで『Disease 人類を襲った30の病魔』から一部抜粋をしておこう。「科学者たちは、レプロシーの免疫や感染の仕組みについて明らかにしようと研究を続けている。感染については、おそらく、常にというわけではないが、感染性の浮遊粒子を吸い込むことによるものだろう。研究者たちはまた、その例外的なほど弱い感染性と長い潜伏期間の理由を解明しようとしている。この病気は、ハンセンが想像したように感染性ではあるが、感染症の中では最も感染しにくいものの1つである。また全人口の95%の人びとは自然に免疫になっているらしい。」
    ■「ヴィルジニーとポール」……15歳。はじめてのデート。無垢なふたりの、燃える四つの瞳が見据えるのは将来の結婚、そして別荘、はたまた職業、結局はお金、お金、お金!
    ■「思ひ違ふな」……仕事人間を死体よりも下と見くだし、一般社会と訣別するリラダン。きびしィ~!
    ■「群衆の焦燥」……誇り高きレオニダスの勝利の使者がスパルタに凱旋するが、――勘違いされて、群衆につばを吐かれて、婚約者に石を投げられて、城砦から締め出されて、挙句の果てはカラスの餌食に。アチャ~!
    ■「サンチマンタリスム」……若き詩人の心臓に女は遅効性の毒薬をたらした! 詩人のピストルによる自殺シーンが実に素晴らしい!
    ■「豪華無類の晩餐」……19世紀のパリで分限者たちによって繰りひろげられる『美味しんぼ』対決。全く同じメニューで勝敗を決したきめ手は、「オマケ」であった!
    ■「人間たらんとする欲望」……人間の心を持ち合わせていないある悲劇役者が、大規模に街に放火して、焼け死んだ多数の犠牲者たちの霊に責めさいなまれて、いかにも人間らしい感情である悔悟の念に苦しめられて満足しようと夢見たのだが――。結果、肝心の幽霊はひとりも出てこず、役者の目論見おおはずれ!
    ■「闇の花」葬式で使った生花。使ってすぐ捨てるのではもったいない!
    ■「追剥」……相対する二者の緊張が張り詰める。それによって生じた共振が高まり、やがて大揺れを引き起こす。構成物質は引き伸ばされ圧縮されついに限界点に達する。その瞬間、すべてが一気に粉砕される!
    ■「王妃イザボー」……女の残虐性には底がない。もしその女があり得ないほど美しくても。――いや、美しければ美しいほど、その心は醜いのだ!
    ■「暗い話、更に暗い話し手」……本文から三か所だけ抜粋して、この傑作のエッセンスが伝わればと思う。「可哀さうなお母さん!」 「さうです、諸君、完璧! まさにそれです!」 「要するに、我等はすべて死すべきものなのです!」
    ■「前兆」……いかにもひと昔前の怪奇譚。だがリラダン渾身の自然描写は一読の価値あり!
    ■「告知者」……わ、わからん!

  • リラダンの中では、これが最も好きと言っていいかな。

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