- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015594
作品紹介・あらすじ
「研究ノート」や「詩作ノート」など、未発表資料を紹介しつつ、これまで世にあまり知られていない側面に光をあて、「加藤周一とは何か」という問いに答え「加藤周一の生き方」の基本に迫る。
感想・レビュー・書評
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生まれた日から、いかに大家「加藤周一」になったか、自ら語ってきたこと、著者がわかり易く説明する。「羊の歌」が中原中也のそれを意識してネーミングしているなど、若き日に情熱に燃えて歌を詠んだ日々。妹との別れの場面における愛情に満ちた表現は感動的だ。(P54)丸山眞男との対話の迫力、また読む人と林達夫との対比において書く人であった。行動の人・小田実に対して「9条の会」を立ち上げながらも政治に距離を置いたなど、巨人の全体像をよく理解できる本だった。加藤周一という人が合理的、理性的であるという一方で、どのように情熱に富み、ざっくばらんに市井の方たちと接していたか、遊び心、ウイットに富む文章を書いているかなど、この人のイメージが大きく変わった。英独仏3か国語を日本語同様に自由に操った日本の最高知性が、大学教授の道を選ばず、自由人として生きたという選択肢も痛快ですらある。
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ながく編集者として交流があり加藤逝去後、資料整理をしている鷲巣氏にしか書けない、著作活動の背景の事情や情報。著作集などを既読の読者にも、背景や連関の解説によりその理解を深くさせ、加藤理解を進めさせてくれる。
加藤ファンには必読の書だろう。 -
131116 中央図書館
大学受験の頃、評論文の練習で加藤周一がよく出てきたような記憶がある。まさか、『羊の歌』ではなかったが。医者でありかつ文芸評論を初め文化の全方位に発言できるということで、伝統的なアカデミズムから離れたところで活動していたらしい。
古今東西文化人文科学、すべてを頭におさめ、時間軸も空間軸も分野横断も平気で、それによって余人にはできない発想ができたのだから、まさしく巨人的博学であったのだろう。
その点では林達夫とも共通するが、林が文筆には寡作であったのに対し、加藤は旺盛な表出に意欲的であったことが違うという。そこは性格によるのか、自然科学を出発点としたことによる違いではないか。
また、残されたノートは1万ページに及ぶという。さらに日本語、漢文であってもドイツ語、フランス語、英語に置き直して考える習慣としていたという。全く恐れ入る。