江戸の朱子学 (筑摩選書 82)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015907

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  • 江戸時代における朱子学の受容が果たした役割について論じている本です。

    丸山眞男は、自然と規範が一つになった朱子学が江戸幕府の体制教学となり、荻生徂徠によってそうした朱子学への批判がなされたことを、日本精神史における「近代」の萌芽として評価しました。このような見解に対して、江戸時代の当初から朱子学が体制教学として機能していたのではないという尾藤正英の批判があります。著者はこうした議論を踏まえつつ、伊藤仁斎や荻生徂徠らの「反朱子学」そのものが、心と宇宙を包括的体系によってとらえ、心にそなわる理を原理化する朱子学を下敷きにしてはじめて成立しえたことを明らかにしています。

    また、日本近世におけるさまざまな学派の並立が、朱子学そのものを否定ないし相対化する学説の存在を容易にし、洋学の受容と「近代化」への道を開いていったのではないかという見通しが語られています。

    もう少し入門的な内容を期待して本書を手にとったのですが、思っていた内容とはすこし異なっており、著者自身の日本近世思想史に対する見方が強く押し出されています。この分野における基礎知識を欠いている者としては本書の内容がどれほど妥当なのか判断することはできませんが、興味深く読みました。

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著者プロフィール

土田 健次郎(つちだ・けんじろう):1949年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学名誉教授。 博士 (文学)。専門は中国思想、日本思想。日本中国学会理事長、日本儒教学会会長、中国社会文化学会会長を歴任。著書に、『道学の形成』(創文社)、『儒教入門』(東京大学出版会)、『江戸の朱子学』(筑摩選書)、『朱熹の思想体系』(汲古書院)など。訳注書に、山鹿素行『聖教要録・配所残筆』(講談社学術文庫)、朱熹『論語集注』(全4巻、平凡社東洋文庫)がある。

「2023年 『論語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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