- Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480033468
作品紹介・あらすじ
樺戸、空知の北海道二つの監獄を舞台に有馬四郎助をはじめ石川県令・岩村高俊、若き日の幸田露伴、山本五十六の兄・高野襄、監獄教誨師原胤昭、酔っぱらい医者・独休庵、そして加波山事件、秩父困民党の関係者たちが繰り広げる奇想天外な物語。
感想・レビュー・書評
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樺戸集治監看守の有馬四郎助は訪れた空知の監獄で大雪で立往生。空知で厚遇を受け長居をすることになった。その間に教誨師の原を追いかけて家出して来た男爵令嬢に会う。監獄に監禁した原を殺そうと企む県令の岩村。原を救うために囚人たちとともに奇想天外な罠を県令に仕掛ける。そして奇跡が囚人の手によって起こる。
キリスト教を絡めてしまったので忍法帖のような展開は望めないが、それでも敵役の県令を肉体的には傷つけず目的を達成するあたりは面白い。その一方で山田風太郎にしては物足りない。やはりもっと派手にスカッとしたいものだ。
有馬の人間性は高く評価される。「私は彼らを囚人としてでなく、人間として処遇します。私はキリスト教について説教はいたしません。ただ私は彼らと友人になろうと努力します」関東大震災発生時の混乱でも一人も囚人が脱走しなかった驚くべき事象に対して、のちに有馬はそう語った。素晴らしい人間愛である。
さて、下巻は「地の果ての獄」が半分くらいで、残りのページは5篇の中短編を収録している。「斬奸状は馬車に乗って」の切ないストーリーが苦しい。年を取って来て、恋愛も人の気持も現実はこういうものなんだろうなと思い始めてきた。恋愛体質も終わりに向けて変わってきたということなんでしょうね詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『地の果ての獄』は前半の約2分の1弱で、あとは中短編が6編という編集。
しかし山プーのこのすっとぼけた虚無感はなんだか癖になるなぁ。
「英雄の血はかくて地上から消えた。人の世すべてかくのごとし」
なんてな一文からは「ヒュ~~」という無常の風が流れてきましたよ(笑
中短編では佐久間象山を暗殺した河上彦斎をとりあげた「おれは不知火」がよくまとまっていて乙。 -
樺戸から空知集治監に移り、物語はラストに向かって一気に突き進む。
この物語の盛り上げ方はさすがに山風。虚実入り乱れる独特の構成も相変わらず面白い。
しかし、なぜか明治物の中ではいまいち物語に没頭できなかった。 -
さまざまな人物の交錯する場所として監獄を舞台に設定したのは、さすがにうまい。ファンタジー的な味付けがあるのが本作の特徴。珍しく後味よし。
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上下分巻なので★四つだが、地の果ての獄単独では文句なくほどの五つ。
牢屋小僧が一番心惹かれるキャラクターだ。 -
20090623-20090626
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凍てつく地にある監獄に捕らわれている囚人。脱獄の計画と実行。それらを取り締まる刑吏たち。監獄赴任した上官たちの政治的思惑…。フーコーの『監獄の歴史』にあるように、ある時代の最も色濃い特色はおそらく刑罰制度および装置にあるのでしょう。風太郎のクールさ・シビアさに、読後なんともいえない気持ちになります。