尾崎翠集成 (上) (ちくま文庫 お 37-1)

著者 :
制作 : 中野 翠 
  • 筑摩書房
3.80
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本棚登録 : 445
感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480037916

作品紹介・あらすじ

不思議な作品を残して姿を消した、伝説の作家の全貌。

感想・レビュー・書評

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  • まだ『第七官界彷徨』しか読んだことがないところに、他の本でちょくちょく名前を見るから気になっていた。マクラウド/シャープ繋がりからようやく冒険。

    「第七官界彷徨」のヒロイン、小野町子が登場する作品が他にもあったことにまず嬉しく驚いた。町子の存在感とともに濃淡はありつつ、真面目にとぼけた、可笑しみと一緒に侘しさと寂寥感の滲みだすほの甘さが共通していて、わかりやすく色付けされているなという印象。何かしらの「分裂」が繰り返し取り上げられている点も特徴的。「第七官界彷徨」がひとつの極致で、その後だってもっと色んな作品が生まれ得たんじゃないかなと、作家生活の短さが惜しくなる。女性が独り身で、筆一本で生計を立てる難しさ。繰り返し出てくる屋根裏の間借り、貧窮の訴えが胸に痛い。
    小野町子ものに加えて、「こおろぎ嬢」がお気に入り。「しゃあぷ氏」と「まくろおど嬢」への憧れと隔絶にそそられる。婀娜な語り口の素敵な「香りから呼ぶ幻覚」も。

  • 未読だったのが悔やまれるほど、すばらしい文体に触れた。
    小野町子の一人称だが、とにかくいっぷう変わった男たちが対話に見える独白を繰り返す、「第七官界彷徨」、
    はぐらかしの文体。
    「歩行」はその小野町子が幸田当八に恋をして、祖母に歩かされる話。
    松木氏と土田九作からも歩かされる。
    「こおろぎ嬢」うぃりあむ・しゃあぷ、と、ふぃおな・まくろおど、の話。
    スピン・オフ的位置づけ?
    「地下室アントンの夜」には、小野町子本人は登場しない。
    土田、幸田、松木氏が集まる。
    ……という連作。

    「香りから呼ぶ幻覚」は、恋の記憶を幻覚として呼び覚ますために煙草を吸う女の話。
    「詩人の靴」は若い憂鬱詩人の、恋につながりそうな外出の話。

    他にもいくつか短編。

    この時代にこれだけ幻想的な・マジックリアリズムの匂いのする・文体重視の小説を貫いた、その力量の凄まじさ。
    読み手を風邪の熱に似た状態にもっていく手腕はすごい。

  •  尾崎翠という作家さんに出会ったことは2008年のわたしにとって事件だったと思う。内向的で、感覚的で、誰にも似ていない、こんな文章を書くひとが日本に、それも大正時代にいたなんて。
     まっすぐにひとを好きでありたい、それって単純だけど、苦しくて切なくて狂おしくて、決して簡単なことではないのでしょう、ねえ。

  •  『第七官界彷徨』と『「第七官界彷徨」の構図その他』を2022年11月25日(金)に読了。2022年12月18日(日)の文学カフェのため。

  • 2002-10-00

  • 河出文庫出の「第七官界彷徨」を読んだのち、さらに深く分け入りたくなって購入。もっともらしく重々しい口調と声を聞きとったようで時おり吹き出しそうになったが、届かない彼方を、分裂する自分の奥から見据えるどこか必死なようすを思い遣るととても笑えない。大きな文人になれる要素が、彼女にはたしかに備わっていたのに――
    ……ついでに、個人的な話ではあるが、私も松下文子さんのような友人を持ちたい。まぁ、それはともかく下巻も楽しみである。

  • 女のさびしさというのをそこかしこに感じる小説集。王子様の現れない少女マンガというのがしっくりくるかな。でも、女の子の目線が優しくて、男の自分からはいたたまれなくなる。詩人の靴が好きだなぁ。あと、第七官界の髪を切る場面。

  • 乙女必読の書。

  • #「モンキービジネス」創刊号の抄出で続きを読みたくなり、「第七官界彷徨」を再読。

    #気をつけて見ると、この作品の登場人物たちは、じつによくものを食べる。「少女まんがにおけるフード描写はセックスの隠喩」という福田里香の『まんがキッチン』の説を、そのまんま当てはめてみたくなるほど(なにしろ主人公が炊事係なのだ)。かち栗の頸かざりを千切って食べる場面には、身悶え&赤面。

    #この小説を漫画化できるとしたら、誰だろう。清原なつの? こうの史代? 意外に黒田硫黄の筆加減で読んでみたい気もする。

    (2009/01/21)

  • 第七官界彷徨がおもしろかった。

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著者プロフィール

1896年鳥取生。女学校時代投稿を始め、故郷で代用教員の後上京。日本女子大在学中「無風帯から」、中退後「第七官界彷徨」等を発表。32年、病のため帰郷し音信を絶つ。のちに再発見されたが執筆を固辞。71年死去

「2013年 『琉璃玉の耳輪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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