ふるさとは貧民窟(スラム)なりき (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 44
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480039736

作品紹介・あらすじ

橋板の貧民窟・岩の坂で育った社会派ルポライターが綴る、壮絶で切ない、怒涛のような少年時代の思い出。木賃宿・長屋の住人。梅毒で鼻が無い"フガフガのおばさん"、正体不明のインテリ「ゴライ博士」、ヒロポン中毒のマアちゃん、初恋のパンパンガール…。強靱で、悲惨で、温かで、そして何より自由だった戦中戦後の「東京スラム」を、深い郷愁を込めて描く。

感想・レビュー・書評

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  • そういえば「貧民窟」なんて言葉ひさしぶりに見た。
    板橋区の岩の坂のあたりがかつては貧民窟(スラム)だったらしい。そこで育った著者が戦中・戦後あたりの同地の様子を紹介してくれる。
    破天荒だったりアウトローな面々もいるし、むしろそういう人がたくさんいるけれど、それがまたさまざまな立場の人を受け入れる……というよりは、いても放っておいてくれるあるいは過干渉でない程度に接点をつくってくれる場のように感じた。いまでは貧民窟的な場ってだいぶ少ないだろうけど、同じような空気を山谷や西成のような飯場やドヤ街、あるいは歓楽街や風俗街、ひなびた温泉街などと似たような場になっているのでは。
    忌み嫌われる人や場って、ある意味、人にやさしい。それは忌み嫌われる哀しみを知っていて、それを人に負わせたくない空気があるのだろうと思う。

  • 本は、全体として面白かったが、しかし、筆者の故郷に対する愛着を感じた。また、あの、戦災被災児がいつも食べ物をもらいに来て、その後、もらうことができずに
    道路上で、涙を流しながら死んでいたという部分は、火垂るの墓を思い出させた。でも、少し、ドラマチックで、ちと、疑わしかったが、それから、初恋の少女がパンパンガールになって、その後、梅毒になって、消えていった話、文学を教えてくれたマア坊がヒロポン中毒になって、精神病院に入院したという話、若干17歳くらいで、でも、この年齢で、ヒロポン中毒とは想像を絶すると思う。でも、その後の梅毒になったパンパンガール、マア坊がどうなったか、知りたいと思いました。全般として面白かったが、ドラマチックで、疑問を持った部分もありました。

  • 編集者、週刊誌記者を経てフリーライターになったという著者は
    日本最後の貧民窟で生まれ育ったそうな。
    それを自らのバックボーンとして美化して語ることもなく、
    かと言って隠したい過去だなどとも思っていないらしく、
    明るい文体で綴られた回顧談。
    人柄のよさが滲み出ている気がして好感が持てた。
    ただ「タッちゃん」と呼ばれるアウトローなお兄さんのエピソードは
    ちょっと怖かった。
    ヒロポン(←メタンフェタミンの商品名だ、念のため)を注入すると言って
    道具を持ってやって来るタッちゃんに静脈注射を手伝わされたとか……(驚)

  • 古書店で入手しました。

    著者は、生まれ育ったスラムを毛嫌いしているわけではなく、むしろ郷愁をもってふりかえっています。それゆえ、ある種の明るさを感じながら読み進めることができました。
    かといって、厳しい貧しさを肯定できるわけではありません。
    スラムで暮らしていた著者だからこそ知っている、人々の悲しみや温かみ、どうしようもできないそれぞれの事情などを伝えてくれています。

  • 日本のスラムのお話。
    生活も住んでいる人も壮絶だけど、
    どこか温かい。
    昔の日本にはこんなところがあったんだなー。

  • 2ちゃんねる人権板で見かけた【岩の坂貰い子殺し事件】
    近所なので気になってました。

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