日本人と遠近法 (ちくま新書 168)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480057686

作品紹介・あらすじ

日本の浮世絵はなぜ遠近法をもたなかったのか。浮世絵に限らず、日本の美術は中国やヨーロッパの影響によるものを除き、独自の遠近法をもたなかった。しかし、写実の範囲を超えた造型方法である「視点の移動」が見られる。そこには日本人の伝統的なものの見方が反映されているのではないだろうか。遠近法を突破口に、浮世絵、歌舞伎、宗教から浮き彫りにされる個と全体との関係を論じた日本文化論。

感想・レビュー・書評

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  • 遠近法を取り入れると写真のようにリアルな表現になる。写実こそがあるべき姿目指すべき理想型という(明治以降?)価値観に染まっていた私には、江戸までの絵画が、遠近法と言う科学のツールを知らないための稚拙な表現にしか見えなかった。しかし、江戸時代以前の日本美術は、遠近法を知りながらあえて遠近法を取り入れなかったのだ。私はずっとこのことが不思議で仕方がなかった。この本で言われている事はその疑問への1つの答えである。アニミズムの信仰による空間と時間の視点移動があり、それが遠近法を選択しなかったと言う仮説である。

  •  
    ── 諏訪 春雄《日本人と遠近法 19980820 ちくま新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4480057684
     
    (20150922)
     

  • 前半は、中国を経由して日本に遠近法がもたらされた経緯についての、実証的な考察が展開されています。

    後半に入ると、日本の浮世絵に見られる自由な視点の移動という特徴が、連句をはじめとするさまざまな日本文化の中に共通して見られることを明らかにしています。さらに、遠近法を生んだ西洋精神史の背後に一神教の伝統を見るとともに、多神教を基調とする日本文化と「視点の移動」のつながりについて考察をおこなっています。

    前半の実証的な議論は、この分野にまったく未知の読者としてはやや退屈で、後半の精神史的な議論は考察の範囲が広がりすぎているような印象を受けてしまいました。

  • 浮世絵には科学的遠近法がないとのこと。
    芸術は制約が大きく、不足しているものがあった方がよい場合もある。

    ps.
    根回しについての説明が最後にある。
    日本の根回しは、木の移植が原義だ。
    農業国ならではの技術。

  • [ 内容 ]
    日本の浮世絵はなぜ遠近法をもたなかったのか。
    浮世絵に限らず、日本の美術は中国やヨーロッパの影響によるものを除き、独自の遠近法をもたなかった。
    しかし、写実の範囲を超えた造型方法である「視点の移動」が見られる。
    そこには日本人の伝統的なものの見方が反映されているのではないだろうか。
    遠近法を突破口に、浮世絵、歌舞伎、宗教から浮き彫りにされる個と全体との関係を論じた日本文化論。

    [ 目次 ]
    1 遠近法とはなにか
    2 日本美術の遠近表現
    3 ヨーロッパ美術の線遠近法
    4 浮世絵の遠近法
    5 錦絵の誕生
    6 視形式の特殊性
    7 絵画の目的
    8 アニミズムと一神教
    9 日本の型文化と視点移動

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著者プロフィール

1934年、新潟県新潟市に生まれる。新潟大学卒業、東京大学人文科学研究科博士課程修了、文学博士。学習院女子短期大学教授、学習院大学文学部教授を経て、現在学習院大学名誉教授。前国際浮世絵学会理事長。元日本近世文学会代表。大韓民国伝統文化研究院顧問。研究領域は近世文芸、浮世絵、比較民俗学、比較芸能史。

●主な著書に、『愛と死の伝承』、『近松世話物集(1)(2)』、『歌舞伎開花』(いずれも角川書店)、『元禄歌舞伎の研究』、『近世芸能史論』、『近松世話浄瑠璃の研究』、『親鸞の発見した日本─仏教の究極』(いずれも笠間書院)、 『忠臣蔵の世界』(大和書房)、『江戸その芸能と文学』、『近世の文学と信仰』、『心中─その詩と真実』、『出版事始─江戸の本』(いずれも毎日新聞社)、『日本王権神話と中国南方神話』(角川書店)、『大地女性太陽三語で解く日本人論』(勉誠出版)、『鶴屋南北』(山川出版社)、『日本の幽霊』(岩波新書)、『日本の祭りと芸能』、『北斎の謎を解く』(いずれも吉川弘文館)、『霊魂の文化誌』、『江戸文学の方法』(いずれも勉誠出版)、『安倍晴明伝説』(ちくま新書)、『日本人と遠近法』(ちくま新書)などがある。

「2017年 『能・狂言の誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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