現場主義の知的生産法 (ちくま新書 340)

著者 : 関満博

• 筑摩書房 (2002年4月1日発売)

作品紹介・あらすじ

現場には常に「発見」がある!国内五〇〇〇工場、海外一〇〇〇工場を踏査した"歩く経済学者"が、現場調査の勘どころを初めて明かす。実際に行ったモンゴル二週間四〇社調査をケースに、海外調査のルートづくり、インタビューの要諦、調査結果のまとめ方など、その全プロセスを公開する。調査が終わったらとにかく早く形にする、整理はしない、現場は刈り取るだけではなく育てるもの、等々、IT時代だからこそ心に染みる、超アナログ知的生産のすべて。

感想・レビュー・書評

[gakudaiprofさんの感想 · 2022年11月17日]

小田氏の推薦本で読んだ。一橋大学での企業のフィールドワークのゼミの様子がよくわかる。それよりも、関氏の新聞やテレビに触れず奥さんから情報を得るというところが印象に残る。さらにモンゴルへの視察などでの持ち物について、旅行の参考になるであろう。
　教員養成の学生にとって、企業の現地調査はまず行われないが、学校の調査ということであれば、十分使える本である。

[saltuscafeさんの感想 · 2020年8月27日]

現場を調査する方法を取り上げた本であるが、著者のメインのメッセージは調査手法というより、「現場に長期的に関わり、現場を育てていくという姿勢がなければ、現場から得られるものもない」ということではないかと感じた。

アンケート調査をするよりも前に、まず現場の声を聴くといった進め方（アンケートは現地調査で問題点を洗い出してから行う）や、一方的に調査するだけでなく、素人なりに現場に対する提言を必ず行って帰るといった姿勢に、そのことがよく表れている。

本書自体が15年以上前の本であることから、取材にもっていくフィルムの本数など、今となっては懐かしさを感じるアドバイスもあるが、基本的な姿勢、大切なポイントは変わらないと思う。

現場と関わっていくことに対するモチベーションを高めてくれる本だった。

[あいちゅうさんの感想 · 2020年4月3日]

アクションリサーチ型の研究手法の解説書などではなく、生き方そのもの。
刺激を受けるところ多数。買ってよかった。

・本は書くものではなく売るもの。
・講演会場には先に入れ

などそのとおりだと思う。
精進していこう。

[rashitaさんの感想 · 2018年10月9日]

とりあえず「現場」を大切にしよう、という事。

扱う対象によってはこの「現場意識」はとても大切だと思う。「現場」感覚のない知的生産は机上の空論に流れがちだ。

私なんかはそういう机上の空論をもてあそぶのが相当好きなので、十分に注意したいところである。

個人的に参考になったのは、「生産性のあげ方」の部分。非常に愚直に感じるが、それこそ「現場」感覚のありなし、の差だと思う。

[ravenclaw55さんの感想 · 2017年11月19日]

「現場主義の人材育成法」より前に書かれた本。
あちらの本が、各地で企業誘致や産業育成に取り組む人々を熱く語っていたのに対し、こちらでは割と冷静に（笑）、著者の知的生産法を語る。

これも隣の人から借りた本なので、手元になくて細かいところは忘れてしまった。

ところで、この著者も、昔カードによる整理法を試みて、断念しています。
これまで、カード整理法を活用してバリバリやってますという人を聞いたことがないのだが、いったいなぜなんだろう。
あれは「知的生産の技術」（梅棹忠夫）という本が作りだした壮大なる幻想ではなかったのかしら。
儲かったのは京大式カードの会社だけだな。

私も大学時代、ちょっとだけやったことがあります。
3日で諦めましたけど。
もちろんパソコンが普及する前の話です。

[はちはちさんの感想 · 2015年4月6日]

海外も含めたフィールドワークの中で、筆者が見出した｢現場｣との関わり方を多くの具体例とともに紹介している。社内にある｢現場｣と置換えても十分に通用する内容で、最近もっぱら管理側の業務に就いている自分に取って、非常に参考になる一冊だった。

[edgeofknifeさんの感想 · 2013年12月24日]

現場主義から学ぶ事は多い　見習うべし
仕事の下請け企業調査などもこの視線で行うと良い

[hdy340さんの感想 · 2013年8月12日]

わりと当たり前のことが書いてある気がする。

[nyankoteacherさんの感想 · 2013年1月13日]

こんな素晴らしい本と著者を、今まで知らなかったのは不覚であった。
（オビには、山形浩生氏絶賛、必読！一回じゃなくて、毎月読んで襟を正せ！とある）

産業組織論などの実践的な経済学をバックボーンとする著者は、国内各地と主に東アジアの海外のフィールドを活躍の場としている。地域の現状と課題について、エネルギッシュにインタビュー調査を行い、チームの総合力で地域にプラスフィードバックをもたらすような持続的関係をつくっていく。その方法論を、志を訴えるような熱気で一般読者に紹介した本。

・現場に受け入れられるには、何度も飲んで夜更かしして、同じ話であっても繰返し語り合うべきである。
・自分の研究成果の刈り取りに汲々とするようではいけない。
・客観的なデータを処理して一丁上がりという仕事のやり方はフィールドに飛び込んで現状を鷲掴みするやり方とは対極的だ。
・日々現場に身をおき、次の時代を予見させる「最先端」と構造的な問題を浮き彫りにする「最後尾」を注意して観察・分析しよう。
・・
など、腹にズシンとくる実践のツボが満載だ。

[kerukamoさんの感想 · 2012年3月1日]

WBSを地で行く現場主義、大学生にフィールドワークならぬ社会見学をさせるという発想はなるほどと思う。

著者プロフィール

1948年富山県生まれ。成城大学大学院博士課程修了。東京都商工指導所、東京情報大学助教授、専修大学助教授、一橋大学教授を経て、2000年から一橋大学大学院教授。。主な著書に『現場発　ニッポン空洞化を超えて』『北東アジアの産業連携』『現場主義の知的生産法』などがある。1997年にサントリー学芸賞、1998年に大平正芳記念賞特別賞などを受賞。

「2009年 『キラリ！輝く元気企業』 で使われていた紹介文から引用しています。」