義務教育を問いなおす (ちくま新書 (543))

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480062437

作品紹介・あらすじ

いま、義務教育制度の見直しが急ピッチで進められている。だが、その方向は正しいのだろうか。義務教育は子どもと社会の根幹に関わるものだ。その在り方が歪むなら、社会もまた歪んでいく。本書では、教育社会学の第一人者である著者が、義務教育の意義を問いなおすことを出発点として、"強者の論理"に従った改革プランの問題点を整理し、「公の営み」としての義務教育改革を提言する。教育の再生を考える人のための基本文献。著者渾身の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 2005年刊行。

     4・5章は優れた説明の一方、残念ながら、2・3章が全く納得できない。というよりも、公教育の罪を含めた実例調査をしてきたのか、と疑問を感じる内容である。

    ① 私的教育機関の実情、教授手法の長短、
    ② 保護者の教員に対する目線、不適格教員に受け持たれた生徒は不平等の被害者ではないのか、
    ③ 公教育・義務教育が形式的平等を志向するならば、そこで伝達される情報量が少なすぎる実情を改善しない限り、保護者や本人は塾なり予備校を選択するだろう、
    ④ 不適格教員に受け持たれるのを運任せにするなんて容認できない。
     全く言い足りない。
    ⑤ 学習権(自由権)を強調するのならば、教育の個別性・固有性(著者は私事性というが)を追求することは、人権上当然の帰結なはず。
    ⑥ 残念ながら、日本の社会の公共空間は相当程度毀損しており、復元は難しいことを軽く見すぎている、
    ⑦ 大切だと保護者や学生本人が考えていることと、国が考えていることの乖離が大きすぎる、
     中学受験は罪も大きいが、学習習慣が身につくこと、基礎的知識が修得できること、論理操作や文章読解能力が高まるなど、功が公教育「履修」の比ではないこと。

     なお、個人的には、学校側が場所を提供し、小学高学年・中学生くらいなら週3回程度、長時間の補習・発展学習を用意してもよい。塾と提携しても良いし、別途、専用の人材を準備しても良い。
     また、対象をスポーツ(サッカー・野球など多様)や芸術活動(音楽や絵画)に拡大しても良い。
     費用は、公が場所提供をするのだから、安価な設定が可能になるはず。
     換言すれば、公教育が提示する教育活動のメニューを増やし、そのメニューのレベルを上げるべきなのだ。

    ⑧ 成果主義的・管理主義的な措置が、教員相互の協働意欲を阻害するなんて、民間では考えられない。
     そんな単純なロジックではない。
     問題なのは、成果主義の中身なのだ。部活動を懸命にやっている教員は当然成果として報われるべきだろう。そもそも、年功序列的な給与形態だけを維持している方の害が大きいのではないか。教員に限らないが、公務員の給与体系に問題がないのだろうか。
    ⑨ 学級王国といわれる担任制度の閉鎖性などの弊害について言及されない。
     著者は、受益者(生徒)の平等よりも、役務提供者(教員)の平等だけを、無自覚に重要視しているのではないか。
    ⑩ 少子化、あるいは限界集落などにおける無子化の現状から見て、現在の人的・物的な教育資産が、近未来には全体としてオーバースペックとならないか。
     子の人数の顕著な減少傾向につき、議論の前提とされていない。
    ⑪ 学校に、教員免許を持たない人材(例えば、教師の事務作業を支える秘書的な人員、クラブ活動を専門に教える元プロスポーツ選手、医師、あるいは保護者)が恒常的に、全人員の半数ほど、学校内で職務に就くことを許容するのか。
     しないんじゃないか。教員の職務軽減・少人数制(教員1人あたり生徒10人程度にする)にはこれくらいの荒療治が必要なはず。

  • 「義務教育を問い直す」というタイトルだが現代の教育の問題点と解決策を模索する本。新書だが範囲が広いうえにかなり専門性が強いので、遅々として読み進まなかった。しかし、多くの人が関心を持つ「詰め込み教育」と「ゆとり教育」で揺れる日本の義務教育に対して、終わらない「未完のプロジェクト」と称しながら、問題点を洗い出し解決の方向性を読者に見出す手助けをしてくれたこの本は多くの人に読んでもらいたいと思う。

  • [ 内容 ]
    いま、義務教育制度の見直しが急ピッチで進められている。
    だが、その方向は正しいのだろうか。
    義務教育は子どもと社会の根幹に関わるものだ。
    その在り方が歪むなら、社会もまた歪んでいく。
    本書では、教育社会学の第一人者である著者が、義務教育の意義を問いなおすことを出発点として、“強者の論理”に従った改革プランの問題点を整理し、「公の営み」としての義務教育改革を提言する。
    教育の再生を考える人のための基本文献。
    著者渾身の一冊。

    [ 目次 ]
    序章 問われるヴィジョン―どのような教育と社会の未来を構想するのか
    第1章 危機に瀕する日本の教育
    第2章 公教育・義務教育の意義と役割
    第3章 二一世紀の義務教育問題
    第4章 「ゆとり教育」の是非と行方
    第5章 グローバル化時代の学力形成
    終章 未完のプロジェクト―二一世紀の教育課題と改革・実践の指針

    [ POP ]


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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ゆとり教育や学力低下、いじめなど、教育に関わる諸問題を扱った一冊。
    ゆとり教育と学力低下は関係がない。ということをデータに基づいて証明する部分は特に面白かった。

  • お勉強用に購入。

  • 学力低下、学校改革など
    義務教育に関するマクロな部分について
    重要かつ基本的な視点を投げかける書。
    新書にしてはやや容量が多い上、
    記述内容に若干難解な部分があるものの、
    巷の教育評論よりも筋の通った見解を
    そこでは提起してくれている。


    個人的には、「教育の公共性」について
    教育社会学の祖E.デュルケムの考えと
    改正前の教育基本法にそって
    展開されているのが印象的であった。

  • ちょっと前までの教育全体の流れを理解するにはとてもよいと思います。
    内容が難しいけど、教育のプロを目指している人にはぜひ読んでもらいたい本です。
    理解するのかなり大変だったけど、勉強になりました。

    基本的には、今の教育の流れを批判的に捉えている感じです。

  • 大学院の授業の一環で「義務教育国庫負担の是非」ディベートをしたときに重宝した一冊。筆者は、義務教育国庫負担堅持という主張を取っている。先の国会でもこの意見が反映されるという決着になったはず。ただ、文から受ける印象は堅く、だいぶ難しい話もちらほら。さらっと読む本ではない。

  • 分類=義務教育・日本。05年7月。

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