公立中高一貫校 (ちくま新書 1047)

著者 :
  • 筑摩書房
3.31
  • (3)
  • (8)
  • (9)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 90
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067524

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 学習塾の日能研が著者となる中高一貫校についての新書。2008年発行。

    公立に比べて、個性が強い私立学校。
    その中でも「私立ならでは」な中高一貫校が持つ多様な特徴を(少々強引なカテゴリーわけも含みながら)紹介する。

    「当時の文部省は、私立中高一貫校が激烈な受験指導「だけ」を行って、大学合格実績を達成していると思い込んでいた(p.55)」というくだりが、公立高校出身者には印象的。
    転校で人が入れ替わる公立高校とは違い、基本的に同じ教員がずっとそこにいて設立者や出資者が変わらなければ経営理念が変わらない私立校は、公立校よりも振れ幅の大きい変化が可能らしく。それがうまくいった学校が、急速に学力向上を果たすこともあるらしい。

    中高生という多感な時期を、6年間同じメンツで過ごすのが中高一貫校。それだけに、適切な人間関係づくりを心掛ける学校も多いらしく。だからこそ、受験指導「だけ」ではない指導が効いてくるらしい。それは納得のいくところでもあった。

    ただ…それも踏まえた上で…まだまだ自分がはっきりしていない小学校高学年の段階で、多感な中高生の6年間をエッジの効いた中高一貫校で過ごすという選択を取ることのリスクを感じたのも本音かもしれない。合えばすごくいいんだけど…合わなかったときはしんどいから。

    ただ…私立校は公立校以上に「選んで」入る学校。
    その意識は持つべき、と感じた一冊だった。

  • すごくためになった。
    受験というより、子育て本であるようだ。

  • やはり、親として、勉強法が気になるのですよ。その中で気になったのは…★P55、公立中高一貫校の授業はどこが違うか?ですが、「ポートフォリオ」学習法で、答案用紙は点をつけて返却するだけではなく、できていない箇所は集中的に苦手克服学習が成される。生徒が間違えたところをひたすらダメだしし、再考させ、とにかく一つの問題も未解決・未消化のまま放置しない。→いいですねぇ。★P61、体験作文を通して、添削され、1本の課題について3回4回のやり直しは当たり前、それを耐えられる、諦めずに粘り強く前に進む、どのような場面に出くわしても何とか事態を切り拓こうとする気持ちを磨き、生き抜くための強い心を作る。★P79、今求められるのは、自分の頭で考え、人にものを伝える力として、親に強制されて勉強させられてきたおかげで受験戦争に勝つのではなく、自分の意思を明確に伝えることのできるプレゼンテーション能力や問題解決能力、ストレスに対する耐性、精神的なタフさや協調性、道徳心や公共心など、社会性だけではない、社会に出た時の基盤となる強さを得るのは、とっても難しい、けれど、ぜひ、会得するような機会は持つことのできるように努力したい、★P95、「パズル道場」を展開されているCOO小澤氏の言葉の、絵は二次元の箱でも三次元として把握して理解する”イメージ化能力”、問題に直面した時に、仮説を立てて検証し、選択・判断できる”仮説思考力”が必要であり、数学のセンスの有無に現れ、他の科目でも応用が利く能力が人間の能力にとって極めて重要であること、P187、進学者の例として、数学は”体系数学”、”ニュートレジャー”を使っていること、そして進度がとても速い。★P214、公共心を育むことは難しいが、「目に見えぬ美少女」を例にして考えさせたり、「楢山節考」を用いて、姥捨て山の話から人口の増加と限りある食料について考える機会となったり、★P223、「利益衡量能力」を身に着けさせることが親として大切であったり、★P233、ヘルシンキ宣言を用いて、世の中には考えて考えて、考え抜いてもなお、答えが出ないようなことがあることを知ったり、など、★P228、親が子供にできること、として「好奇心と観察する気持ちを培う」「公共心と道徳心を育む」「価値が衝突する利益をさまざまに比較できるようになる」など、過程で育むべき三つの資質について例示してあったり、★P236、「人間力を強く備えている子ども」が合格できるのであり、複雑に入り組んだ問題を継続的に考え、判断することができ、他社をけん引するのみならず他者との対話、・調整を通じ、社会の中で「公共性」を実現できる子供が求められていて、数的な能力として規則性、判断推理、空間把握の力、理科的な能力として身の回りにある出来事や自然の観察力、「公共性・公共心」が意識されている。など、色々と気づきがあり、学びになりました。子どもというよりも、親にも当然必要な内容で、楽しくもありました。

  • つまらない

  • 公立中高一貫校と私立との違い、必要な勉強、親としてのぞまれる姿勢が、よく理解できた。

    親が子どもにできること
    1 好奇心と観察する気持ちを培う
    2 公共心・道徳心を育む
    3 利益衡量能力を身につけさせる

  • 著者が色々な中高一貫校を取材してきたことは分かった。しかし、結局何が言いたいのだろうか?と、最後まで分からなかった。各校を紹介したかったのか、それともこんな統計データがあるということの紹介をしたかったのか。いまやネットでも色々と調べられる情報がある中で、真新しいものがあまりないのが残念。間口を広げすぎた感じがした。公立中高一貫校を目指す親御さんのための初級編といった程度と考えれば、まぁいいという内容。

  • ≪目次≫
    第1章  新しいブランドの誕生
    第2章  公立中高一貫校の問う能力、資質ー学習塾、教育産業はどのよ     うに考えているか
    第3章  公立中高一貫校で問われる新しい能力因子
    第4章  親子で乗り切った「公立中高一貫校」受検
    第5章  子供たちから見た公立中高一貫校の特色と生活
    第6章  親の力で、子どもを公立中高一貫校に合格させる
    〈付録〉平成25年度適性検査問題分析一覧

    ≪内容≫
    受験教育のエキスパートによる公立中高一貫校の分析。入れる側の立場から公立中高一貫校を見て、適性検査の分析や子どもたちの資質、学校の様子を書いている。逆の立場である、教師側から言わせてもらうと、「適性検査の作問、採点の大変さ」「授業の組み立ての大変さ」が気になった。一部の県は統一問題を作成しているようだが、学校独自で行う場合の”学力検査ではない”作問は頭が痛いだろう。
    また、各学校の求める「生徒像」が似ているのだが、公立ならではの「公共心・道徳心」「利益衡量能力(複数の対立する利益を比較して衡量する力)」というのに惹かれた。
    前に読んだ河合敦の「都立中高一貫校の真実」という、内部本と比較して考えたい。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

小林公夫(こばやしきみお、ハカセ公夫)
一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。一橋大学博士(法学)、作家。
ハカセ公夫名でFM栃木RADIOBERRYのDJも務める。新書を多数書いており、主著に「ドラゴン桜」9巻でも取り上げられた「論理思考の鍛え方」(講談社)をはじめ、『「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』、『「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる言葉』(以上、PHP研究所)、「東大生、医者、弁護士になれる人の思考法」、「公立中高一貫校」(以上、筑摩書房)、「高学歴な親は何故子育てに失敗するのか」(中央公論新社)などがある。

「2022年 『2025年度版 出るとこだけ! [一問一答]一般常識&最新時事』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小林公夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×