つくられる病: 過剰医療社会と「正常病」 (ちくま新書 1089)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480067968

感想・レビュー・書評

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  •  根拠のない過剰な健康不安や医療の市場化・資本化に対する批判的問題意識は至極真っ当だが、いかんせん反近代主義への盲信に拘束された疑似科学・陰謀論的嗜好に起因する恣意的な情報選択や論理矛盾がすべてを台無しにしている。

     インターネットの不確かな情報や「調べて裏をとったわけではない」(p.63)情報を無批判に自説の根拠として用いる一方、自説に都合の悪い情報は根拠もなく「デマ」(p.212)と決めつけるなどおよそ学問的な態度とは言えない。体罰やセクハラに対する肯定的文言や安易な「人権」批判も、著者の意図にかかわらず、現在の日本社会においてそうした言説が果たす政治的機能にあまりにも無自覚で感心できない。

     「本当の欲望をニセの欲望から選り分けていくことも大事だ。ニセの欲望は、必ず何かによって媒介されている」(p.232)という本質主義的言説が平然と出てくるあたりに馬脚が現れている(何ものにも媒介されない欲望などあるか! 「自分探し」のうさん臭さに通じる)。

  • マックス・ウェーバーが精神を病んだことから近代の監視システムの視点を得たというくだりが面白かった。

  • 正常病というタイトルはおもしろい。
    内容は、主に内海先生の書いているような医療批判。
    社会学者だけあって難しい、読むのがとても苦痛だった。

  • 近年は法律によって“健康”が“義務”と規定されたらしいが…「健康に暮らしたい」というようなことは、誰かに課せられる“義務”ではなく、人が持っている“権利”である筈ではないのか?本書の中にも在る話題だが、考えさせられる…

    いずれにしても、本作は「考える材料」を幾分提供してくれる…

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著者プロフィール

1956年北海道生まれ。社会学者。東京学芸大学大学院修士課程修了。札幌学院大学教授、日本社会臨床学会運営委員などを歴任。単著に『つくられる病――過剰医療社会と「正常病」』(ちくま新書、2014年)など。編著に『「心のケア」を再考する』(現代書館、2003年)など。最近の論文に「「ミスター・ノーマルがいっぱい」を、遊びつつ学ぶ」(『苫小牧駒澤大学紀要』36号(最終号)、2021年)、「医師たちには義俠心の発揮が求められている」(『性の健康』21巻1号、2022年)。本書関連論文に「ルサンチマンの社会学の構想――ニーチェ的主題の継承をめざして」(『思想』773号、1988年)。

「2022年 『鬼滅の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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