身体が生み出すクリエイティブ (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071248

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  • お笑い芸人の斬新な「ボケ」にみられるクリエイティビティは、積極的に創造性を生み出そうという意図のもと能動的に生み出されるものでなく、自己の五感を研ぎ澄ませ「身体知=身体が中心となって発揮される知」に向き合うという日常実践の結果なのではないか?著者はこのような仮説を立て、今のところ「自己」や「身体」を持ち合わせないAIにクリエイティビティの発露は期待できないのではないか、と問う。

    確かに、クリエイティビティが一部の特殊な才能を持つ人々の専売特許ではなく、日頃の研鑽や試行錯誤から得られる身体感覚の表現型であるというアイディアには惹かれるものがある。しかも「こうすれば必ずできる」という類いのものではなく、自分の知覚がどのように構成されているかを客観的に把握し別の構成のありようを試みる「構成的知覚」のもとで直感力を行使し、可能性としてのクリエイティビティに賭けようというのも、一定の現実味があり納得できる。

    プロ棋士やお笑い芸人の創造性の発露は、人工知能が「生成と検証」での総当たり攻撃や「スキーマ=一連の関連知」というモジュールの組み合わせにより最適解を導出するやり方とは明らかに異なり、はるかに選択肢が絞られたやり方でなされる。著者によればそれは、身体を世界に没入させることで得られる接触点を基点に、候補を少数に絞って発想を得るということのようだ。現象学上の概念を用いて、「現出物」に向け意識を向かわせる(「突破する」)のではなく、直接の経験である「現出」を重視せよと説明される。しかもその際、言葉による「分節化」を用いることで感覚のある側面が捨象されるとともにより意識に上った側面がクローズアップされ、さらに感情や情動を司る中枢による選択肢限定が加わる。これこそが身体知の本質でありクリエイティビティ発露の源泉、というわけだ。

    AIに対する著者の冷めた目線が少々気になったのは確か。感情や情動によるフレーミングが不能だからというのがその理由だが、唯物論によりシンパシーを感ずる自分としては著者の二元論はやや心もとなく思えた。しかし、個人的にも例えばこのブクログのように、言葉で感想を表現しようとすると妙に書きにくいな、と感じる場面に出くわすことがある。そういう場合は「なんでこんな語彙しか出てこないんだろう?」と考えると、自分が理解できていない部分が浮かび上がってきて「もう一度違う見方で読んでみよう」という気づきに繋がることが多く、そういう意味では(方法論的な二元論という意味では)かなり共感できた。

  • 「演劇特殊研究B」山上優先生 参考図書
    電子ブック(LibrariE)
    https://web.d-library.jp/shobi_u/g0102/libcontentsinfo/?cid=JD202112300863
    ※SSOにログインし、学認を選択してご利用ください。

  • AI時代が到来するがAIが苦手とするのはクリエイティブ。論理を積み重ねた帰結はAIが得意とする。論理を跳躍する結論や発想がクリエイティブといえ,それは人間が自らの身体(運動)を通して世界に関わり,世界を識ることであり,ごく普通の営みなのかもしれない。人は機械になろうとして機械になれない自分を嘆く。人が人らしい認識をすること,そのプロセスの解明に面白さがある。

  • 「考える枠」を超えることの難しさ 人間の製造欲求

    補助線を引く
    関係づけと着眼

    デザイン固着論

    現出ー現出者

  • クリエィティブ、創造性は頭で狙って、考えて作り出すものではなく、身体の感覚、体感の中から生まれてくる。臨機応変な対応、発想はAIには出来ないこと。
    ここからは考えたこと。
    教師として子どもたちに、このクリエィティブさ、創造性を身につけることが必要ならば、まず教師がこれを身につけないといけない。日々の体感に向き合い、それを言葉に丁寧に表して追って行く。
    教師もクリエィティブさが必要な仕事だよなぁと改めて実感。クリエィティブって変化するってこととも違う?同じ?

  • 身体が生み出すクリエイティブとは一体何だろうか。

    お笑い芸人のやりとりの分析は非常に面白い。

    AIの目覚ましい進化が話題だが、この本を読んで納得したのはやはり「身体」というものの存在の大きさ。

    この本では「身体知」「からだメタ認知」などで説明しているが至極納得。

    非常に学びと気づきの多い内容でとても勉強になりました。

    おすすめです。

  • クリエイティブであることは、発想をリープできること、新しい視角から現象のフレーミングができること。
    そのためには、身体感覚に意識的に神経を研ぎ澄ませて、言語化を試みることを積み重ねると良い。理屈に頼るだけでなく、自分自身がシチュエーションに入り込んでみたときに、躰が、無意識が、何を感じ何を行うかを想像してみること。

  • 東2法経図・開架 B1/7/1307/K

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部教授。
専門分野:認知科学、人工知能、デザイン学。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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