国語教育の危機――大学入学共通テストと新学習指導要領 (ちくま新書)
- 筑摩書房 (2018年9月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480071712
作品紹介・あらすじ
2021年より導入される大学入学共通テスト。高校国語教科書の編集に携わってきた著者が、その試行テストの内容を分析し、看過できない内容にメスを入れる。
感想・レビュー・書評
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国語の教科書編纂に携わった経験のある著者。
その経験があってこそわかる文章の取り扱いや策問の難しさについてわかりやすく書かれている。
これから正に行われようとしている共通テストや来年度からの国語教育について不安を覚えると同時に、現場の先生方の苦労も思いやられる。
一体将来どんな子どもたちが育っていくのだろうか。しっかりと検証し、修正が必要な場合にはそれを求めていくのが大人の役割だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「思考力・判断力・表現力」を測るあまり大学入学共通テスト・学習指導要領の内容が大きく変わりすぎているという筆者の主張はその通りである。
また、筆者が在籍している麻布高校の例を通じて「思考力・判断力・表現力」を身につけることがどれだけ労力を要するかが述べられている。
これを踏まえ大学入学者選抜試験で国語教育を変えるのではなく、初等・中等教育の内容から変更すべきであると論じている。
英語でもそうだが、プログラミング教育等の導入もある中で学校教育をこれ以上改善することは困難ではないだろうか。そうであれば入試制度を変革する『上からの改革』が真っ当なものと思われるが、今回の一連の騒動でこれも難しくなってしまった。
教育改革に惑わされず、今後どういった能力をどのような手段で身に着ければよいのか、ヒントを与えてくれる点ではよい本だと思う。 -
センター試験に変わって導入される「大学入学共通テスト」。その試行テスト内容を初めて読んだ。「国語」教育の目的が、あのような雑多な資料を統合して読み込む力の獲得にあるのだとは、到底思えない。
さらに、著者が指摘するような問題文がもつヒドゥン・カリキュラム性ー「自由意志」と「自己負担」という、今登場人物たちが直面している大きな問題を、「補助金」支給問題で切り抜けようという方向に導くように問いと答えが用意されている」44ペーも問題だ。
普段、業者テストはそれとして利用し、授業では多様な考えとその根拠を重視した授業を意識している。子どもたちの「国語力」をどうテストで評価するのか、そもそもテストによる評価というスタイルがよいのか、いろいろと思うところはあるが、それを考える機会になった。
著者の「国語論」をもっと読みたかった。最初の章および最後の章だけ読んだ。我孫子市民図書館から借りた。
ー大事なことは、一つのテクスト、一人の人間の中にも複数の要素があり、さまざまな価値の衝突があることをじっくりと見ることです。夥しい情報の渦に目を背けて、自分だけの世界に閉じこもりながら、それだけが世界だと錯覚し、身を固くしている者たちに対して、相反する様々な刺げき?に反応し、揺れ動く自分がいることを知り、価値の多様性のなかに見を開いていくこと。それこそが重要です。「国語」という教科は評論文とともに、小説や詩歌などの文学テクストを取り入れてきたのは、そのためです。279ペ -
共通テストに対しての批判をしつつ、国語教育はどうあるべきかを示している。
国語を教える人には必読の書。 -
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https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260238 -
共通テストでの入試「改革」での国語の扱いを知り、愕然とする。試されようとしているのは「資料」なるもののスキミング。「読解力」や「思考力」とはほど遠い。
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去年の今頃、プレテストの分析やったの思い出した。
言い方は悪いが、最低な問題だと思った。
今の時点で何かできるかという問いに
「何もできない」という意見で一致したのが印象的。
改めてこの本を読んでぞっとした。
もう教員を続けていけるか不安。
でも、どうせ5年もすれば元に戻るんだろうとも
思っているのだけれど。
変わらなくちゃいけないのは重々承知。
でも、このやり方ではないと思う。 -