現場力 (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480073129

作品紹介・あらすじ

新しい技術の開発は、ずっと現場で行われてきた。豊富な事例をもとに、日本のものづくりの比較優位を支えてきた競争力とはどういうものか、その本質を捉え直す。

感想・レビュー・書評

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  • ものづくりの現場における競争優位性や持続性を生み出す要素は何かということを、日本の中小製造業の分析や海外との比較を行いながら論じている。

    製造業の現場においては、先端的な製造設備の存在や工場の規模などがある程度競争力を生むというのは事実であろう。一方で、日本の中小製造業を見ると、必ずしもそのような資本力を持っていない企業であっても、比較的長期間にわたり競争力を保っている企業が存在する。

    そのような企業は、一般的に財務やマーケティングや生産工学的な視点で分析された数値で測ることのできない、「現場力」といったものがあるのではないかというのが、筆者らの発想の根幹にある。

    現場力というのが非常に個別性が強いものであるということから、明確な理論体系が書かれているわけではないが、本書の中では、タイの製造業との比較の中で、その要素を経済価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)という4つに分けて抽出した分析は、比較的わかりやすかった。

    それぞれの要素においては、例えばValueについては、単に汎用機や先端機器を導入することによる優位性だけではなく、特殊な課題に対して特殊な加工・製造を行う設備を自ら内製する力が重要であり、それらがあることによって他では実現することのできない価値を生むことができるという指摘は新鮮だった。

    また、競争力のある企業がそのポジションにたどり着いた経緯については歴史的な経路依存性があり、さらには生産の効率や品質には技術だけでなく生産現場の管理のあり方なども含めた複雑な要素が相互作用するため、何がその競争力を生み出しているのかが一見して分かりにくいという側面がある。これらのことがInimitabilityを生んでいるという。

    それらの特質は、一朝一夕にできるわけではなく、また必要な要素をM&Aや技術指導で補充していけば完成するというものでもない。あくまで地道に自らの取り組みを通じて築き上げていくしかないというもののように感じる。

    これらの「現場力」をもっている企業が長く存続するということは、確かにその産業の競争力を高めるために大切な要因であると思う。

  • 東2法経図・6F開架:B1/7/1494/K

  • 509.5||Mi

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