地方メディアの逆襲 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480074454

作品紹介・あらすじ

東京に集中する大手メディアには見過ごされがちな問題を丹念に取材する地方紙、地方テレビ局。彼らはいかに現場と読者に向き合っているのか。当事者の声を届ける。

地方にいるからこそ、見えてくるものがある。東京に集中する大手メディアには見過ごされがちな、それぞれの問題を丹念に取材する地方紙、地方テレビ局。彼らはどのような信念と視点を持ってニュースを追いかけるのか? 報道の現場と人を各地に訪ね歩き、地方からジャーナリズムを問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 『地方メディアの逆襲』共に生きて、共に歩む。これからのメディアのあり方 - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/51028

    筑摩書房 地方メディアの逆襲 / 松本 創 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074454/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <書評>『地方メディアの逆襲』 「矛盾の芽」を見逃さず - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
      https://ryukyus...
      <書評>『地方メディアの逆襲』 「矛盾の芽」を見逃さず - 琉球新報デジタル|沖縄のニュース速報・情報サイト
      https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1480740.html
      2022/03/06
  • 地方メディアの強み
    ・現場がある
    ・時間軸の長さ
    ・当事者性

    さまざまな事例が取り上げられている
    有名どころでは
    ・橋本徹の会見と「勉強不足」の趣旨の発言について
    ・香川のゲーム条例について
    ・京都アニメーション放火殺人事件での被害者報道について
    など

  • 「ニュース砂漠」という言葉をきいたことがあります。アメリカの全3143郡のうち、新聞がないか、週刊の新聞が1紙しかない地域が半分を超えたという現象のことです。それはジャーナリズムという草の根の生えないニュースの砂漠地帯。日本はまだまだ地方紙が頑張っているのでしょうが、デジタルメディアの成長で、経営が厳しくなっているのは事実。アメリカと同じ道を歩んでいるかもしれません。そんな中、地方紙、地方局の踏ん張りのアンソロジーがこの新書です。本書にも登場する秋田魁新聞のイージスアショア計画についてのスクープは、新聞協会賞も受賞しましたし、NHKの番組にもなってました。「地方紙は死ねない」とのタイトルでした。「死なない」ではなく「死ねない」というところに地方メディアのギリギリ感を感じてしまいました。だからこそ,この本とかNHKの番組化とかで、ニュースが地産地消だけでなく、全国という市場で価値を持つビジネスモデルが必要になってくるのだと思います。どんなに大義があっても、消えていくのはJRの路線で経験済みです。本書の題名にある「地方メディアの逆襲」の「逆襲」が本当になるのは、グーグルニュースショーケースだよりじゃ、ないはず。

  • 新聞やテレビ、大手メディアがネットに押される今こそ地方メディアの時代なのかもしれない。今後のジャーナリズムのあり方を示した良著。

    こたつ記事や記者クラブでない、長期間にわたり丹念に取材を重ねる調査報道。地方紙、地方テレビ局だからこそ行える報道が実際にある。

    すっかりサラリーマン、官僚化した感のある大手メディアに比べ気骨のある人物がまだまだ地方には多く存在する。

    筆者の言う地方メディアの強み。
    1.現場があること
    2.時間軸が長い
    3.当事者性を帯びている

    イージスアショア計画をつぶした秋田魁新報、ネットの中傷やフェイクに対するファクトチェック報道の琉球新報、ドキュメンタリー番組の制作を続ける毎日放送、ゲーム条例や高知白バイ報道に疑問を投げかけた瀬戸内放送、京アニ事件で実名報道と遺族への過剰な取材に問題提起した京都新聞、自らが取材対象となったドキュメンタリーを放送し議論を呼んだ東海テレビ放送。いずれもジャーナリストとしての矜恃には深く感動。

    実際の事案を紹介し、地方メディアの大きな可能性を示した良著。

  • 週刊金曜日2022121掲載

  • 2022/01/16

  •  ネットニュースを見てがっかりすることが多い。見出しの印象と内容とに齟齬があるような、それも意図的にしているのが透けて見える。「誰のためにニュースがあるのか」(110頁)。

     被害者報道については(第5章)、知る自由・表現の自由・取材の自由と、被害者・遺族のプライバシーが衝突し、それらの対抗する利益をどのように調整するのかと問題が整理される。しかし、取材の場で起きていることは、衝突などではなく完全なすれ違いである(188頁参照)。自らを公共の利益に「奉仕する」者として正当化しておいて、自社の経済的利益を優先させ、記者の昇進を優先させることは背理である。そのような矢印の方向のずれがジャーナリズムに不信感をもたらしている。

     地球温暖化の影響がまず最初に貧困地域に圧力を与えるのと同じように、中心で起こっている問題のしわ寄せが来るのは周辺領域であるという構造があるようだ。それゆえ、地方をわがごととして直視している地方メディアは、中央に逆襲しうる存在となる。地方メディアが発信するのはローカルニュースなどではなく、日本全体の問題の核心であるかもしれない。

     記者自身の昇進のため、pv数を稼ぐためのニュースは百害あって一利なしである。ドラマチックなスキャンダルなんかより、世の中にあるのは退屈な、凡庸な悪であること(250頁)は、ニュースを受け取る私にとっても、肝に銘じておくべきだと考えた。

  • 序盤から紹介されるエピソードが立て続けにイデオロギー強め。著者のスタンスなのか、対権力・対中央ってやってるとメディア自身のスタンスがそうなるのか興味深い。反対に右傾化する在阪メディアは自主規制の緩さと対権力ではなく対首都圏メディアへの意識の強さが原因かも。
    長期間地域密着で取材することにより掴めるネタはあるだろうし地方メディアは必要だと感じた。
    あと一番地方メディアが必要な地域は東京。雪降ったとかナントカ線の人身事故とか麻布グルメとかローカルな話題は地域内で収めて外には漏らさないでほしい。

  • 第86回アワヒニビブリオバトル「【2日目】おうち時間DEビブリオバトル」1時間目 社会で紹介された本です。
    オンライン開催。
    2022.05.04

  • 昨今のあまりに体制的な報道に接する度に、もはやこの国メディアはその屋台骨から腐り切っているのではないかと思っていたが、地方にはジャーナリズムとしての矜持を持ち続けているメディアが存在していることを知った。
    経営上のことも含め、さまざまな困難もあろうかと想像されるが、どうかそれぞれの地方のジャーナリズムの希望の灯を、これからも灯し続けて行ってほしいと願うばかりだ。

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著者プロフィール

1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、現在はフリーランスのライター。関西を拠点に、政治・行政、都市や文化などをテーマに取材し、人物ルポやインタビュー、コラムなどを執筆している。著書に「第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社、のちに新潮文庫)をはじめ、『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のひたむきな生き方』(講談社)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介との共著、講談社)などがある。

「2021年 『地方メディアの逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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