πの歴史 (ちくま学芸文庫 ヘ 7-1 Math&Science)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480089854

作品紹介・あらすじ

πとはいったい何者?円周率と名づけてはみたものの、値も素性も詳しくはわからぬままに始まったπの歴史。それは人類の歴史を映しだす小さな鏡だった。シラクサのアルキメデス、紀元前3世紀のアレキサンドリア大学、科学書に火をつけ焼き払った中世の司祭や十字軍の物語であったし、中国や日本の和算家の物語でもあった。その後、πは円とほど遠い意外な場面に姿を見せ始める。オイラーの数値計算は、ある規則の分数を加えてπの2乗や26乗を発見する!興味深いエピソードやあふれるユーモアを通して、数式に弱い人にも読書欲をかきたてるπの歴史物語。

感想・レビュー・書評

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  • 円周率は小学生のときに円の面積や円周を計算するときに習うだろう。
    その値はおよそ3.14。

    しかし、それはなぜおよそ3.14になるか知っている人がどれくらいいるだろうか?
    円周率とは何か?そして自分の手で円周率を「計算する」ことはできるだろうか?

    ちなみに2003年に東京大学の入試問題で、歴史的な一問が出題された。
    「円周率が3.05よりも大きいことを証明せよ」
    という問題である。

    半径1の円の面積は半径x半径x円周率でもとめられるので、この場合の面積は円周率そのものになる。(半径が1なので)

    ということは、半径1の円の面積を計算していけばよいことになる。
    たとえば、長さ0.1の正方形(面積は0.01)が半径1の円の中に何個入れることができるのか。
    たとえば310個いれることができるのであれば、その合計の面積は3.10になるので、円周率はおおよそ3.10ということがわかる。
    でも円周のキワの部分で空きがあるのがわかるだろう。
    もっと詳しく求めたいのであれば、長さ0.01の正方形をさらに敷き詰めればよい。
    同様に円周のキワの部分で空きがあるので、敷き詰める正方形の辺を小さくしていく。
    原理的には円周率をどんな細かさでも求めることができるのだ。
    これが古代ギリシア~中世までの円周率の求め方である。(厳密には、円周に内接する正n角形からその週の長さを求める)

    しかし、この方法では円周率の近似値は得られても、厳密な値は得ることができない。

    次の質問は、パイはm/nのような分数(有理数)で表されるものではないとしても、無理数のなのか、ということである。
    循環する少数であればそれはかならず、分数で表すことができるのは中学生で学ぶことであるが、一方で、√2のような決して循環しない数も存在する。
    円周率もこのような数ではないのだろうか?というのが次の疑問である。
    このような無理数だと何がうれしいのか、というと、それは整数を係数とする方程式の解になっているので、いろいろと分かりやすい数であるからだ。
    たとえば、√2というのは、
    x^2 -2 = 0
    という方程式の解だし、3乗根√5は
    x^3 - 5 = 0
    という方程式の解である。
    つまり、3乗根√5はx^3 - 5 = 0を満たすので、いろいろと使い勝手が良い。
    (日常生活で使いやすいというよりも理論的に扱いやすいという意味である。日常生活であれば、3.14で事足りるのだ!)

    実は、円周率はこのような無理数でないこともわかっている。
    円周率はもっともたちが悪い超越数というカテゴリーに属する数なのだ。これが証明されたのは1800年代であり、結構最近である。

    古代から現代までの円周率の算出の仕方や、それを超えて円周率の性質の歴史を説明している。

  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=129080

  • 7月22日 円周率近似値の日 にちなんで選書

    ヨーロッパでは7月22日を22/7のように表記し、これを分数(7分の22)と見なすと、アルキメデスが求めた円周率の近似値となることから。

  • 歴史上、どの人物がどう円周率を計算してきたかが分かって面白い。意外な人のつながりも分かる。

  • ジョークを理解しない人は、読まないほうがいいと思われます。
    良くも悪くも、ブラックジョークが含まれており、耐性のない方にとっては毒気のように感じてしまいがちです。

    なぜ、π=3.14…なのか、その理由というのがわからない子供たちのために良書であると感じました。

    中学生・高校生ぐらいが読むと論理式の緻密性のみを求める事に終始し、毛嫌いしていた数学が面白くなるのではないでしょうか。

    普段接する数学(論理式)に冗長性というものは少ないです。
    ですが、この概論において何故数学を学ぶのか、何故π は求められ続けられるのか、それをニュアンスとして感じることぐらいは出来ます。

    πは、3.14・・・・を求めていくココロに、その意味があるのだろうと感じます。

    数学の歴史を学ぶことで、実際に私たちは紙とペンで数式を書き表し、その理論を想像できうる。

    それはとても手軽かつ、簡単に。

  • 評価4.0

  • 3.14159265358979までは覚えてる。ローマ帝国が嫌いなんだね。

  • 人類の歴史はそのまま円周率探求の歴史である、といっても過言ではない。今から4000年前、紀元前2000年のバビロニア人やエジプト人は既に円周率という概念をもっており、さらにそれがそれぞれ25/8、256/81だと計算していたという。もちろん、当時はアラビア数字はおろか10進数や割算の概念そのものが存在していなかったのだが、ただ杭とロープと砂地のみを用いて3.1という値を知っていたのだ。それほど円という図形と円周率は古くから人類の歴史に関わりの深いものであった。シラクサのアルキメデスに始まったπへの探求は、幾多の思想弾圧の暗黒時代に晒されながらもガウス、ホイヘンス、パスカル、ニュートン、オイラー、ベルヌーイ、ビュフォン、ラプラスと言った人類を代表する科学者、数学者たちを虜にしたうえで歴史を刻んできた。そしてπが超越数(有理整数を係数とする代数方程式を満たさない複素数)であると証明された(同時に円積問題=円と同じ面積の正方形を作図することが不可能だと証明された)今でも、電子計算機の登場により少しでも多くの桁数を計算することが競われている(我々の使うパソコンでも100万桁をわずか1分で計算できてしまう)。歴史にも精通した筆者が語る、もう一つの人類史。身近で単純で、それゆえに果てしなく美しい。

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