和算の歴史: その本質と発展 (ちくま学芸文庫 ヒ 10-1 Math&Science)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480090843

作品紹介・あらすじ

関孝和の円理はニュートンの微分学に相当した?いや、和算はもうすでに顧みる必要などはない!和算のイメージが大きく分かれるのは、学問的にきちんとした入門書が少ないからである。タテ書きの文書を読み解き、内容を数学的に理解できる研究者は限られる。本書は、膨大な和算資料を博捜して斯界第一人者となった著者の力篇。なじみのうすい和算表現をわかりやすく書き直し、その特長と弱点を明らかにしつつ発展の歴史をたどった入門和算史。和算家の生活、地位、算法書の出版部数にまで話題はおよび興味深い。文庫オリジナルの索引は懇切で和算小事典としても使用可能。

感想・レビュー・書評

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  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F文庫新書 ちくま学芸文庫
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=189051

  • 理数理学生 学生閲覧室||417 20124140

  • 真の和算および和算家の歴史について、非常に詳しい。随所に図や名言があり、内容がとても濃い

  •  本書は1961年4月20日至文堂から刊行された原本が文庫化されたものである。古代ギリシャ時代から現代に至るまでの西洋数学は現代日本が常用している数学であり、その数学の歴史はご存知の方も多いであろう。しかし日本古来からの数学の系譜を知っている人はどれほどいるだろうか?本書は忘れられたもう一つの数学の系譜、古代からの日本における数学の変遷・発展を研究した成果を纏めた書物である。

     ただ、ページをパラパラとめくって見てみると気づくが、とっつきにくい印象を受ける。というのは、様々な観点(歴史文化的、数学的)から網羅的に扱われており、視点を一箇所に定めていないことと、出典からの原文のままの引用抜粋がしばしば行われていて、にわかに内容把握しづらい部分も少なからずあるからである。一言で言えば、日本数学史総論のような観点で講師が解説しながら本の内容を説明して初めて了解できそうな位である。

     日本数学の歴史と言っても、古くは奈良時代に中国から漢・魏・六朝時代の数学が輸入されたようであるが、以来1000年もの間、日本においては数学者名も数学専門書籍も史上に遺されていないようである。日本独自の数学の発展の主な時代は江戸時代であり、その時代に開花発展した体系を特に和算と呼んでいる。

     本書もほとんどが江戸時代の数学史に紙面を割いている。本書で取り上げられる人物や数学技術は多岐に渡って網羅されており、日本数学史百科辞典の感がある。

     和算の欠点として、著者は①関数概念の欠如、②座標概念の未発達、③記号論の未整備、の3点を挙げている。これは数学の技術的発達においてはかなり致命的だったと思われるが、それを差し置いても微分積分の一歩手前の段階まで計算力と直観力の2本柱を武器として発達させたことは驚きである。西洋数学と比較して、和算の特徴を一言で言えば、技術というよりも技芸。美しく問を解答することだったのではないだろうか。その為に各種問題を一般化して考えたり、論を尽くす視点が無かったために前記のような3大欠陥を有する状況になったのであろう。

     また、和算が江戸時代においてどのように普及していったかを垣間見る内容も載っている。江戸時代において、和算の専門書の海賊版とも呼ぶべきものが出版されていた事実(売れていた。すなわち大衆に広まっていたことを示唆する)。また数学の教授手段として、専門家が飛脚を通じて文通で地方の門弟に遠距離教授していた事例や、専門家が何年も全国行脚しながら各地で知識を普及していった事例などを挙げている。これらは江戸時代の安定した社会が前提となって成し得たことであろうことは想像に難くない。
     
     和算を語る上で代表的な人物、関孝和を説明したURL(wiki)を以下に載せておく。

     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E5%AD%9D%E5%92%8C

     日本は明治時代以降様々な欧米列強からの技術輸入によって大変革を起こしたことは周知の事実であるが、これら技術を受け入れる素養が江戸時代に積み重ねられたことによって成し得たことであることが改めて実感される書となるであろう。

     最後になるが、和算の全体像・概要(技術の紹介と和算史)を掴むのには良書であるが、個別具体的な技術を十分に了解するためには、近年発行されている和算を取り上げた書物も合わせて参照したほうがよさそうである。巻末の解説では近年刊行された和算関係書物も多数紹介されている。

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