新釈 現代文 (ちくま学芸文庫) (ちくま学芸文庫 タ 30-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480092236

作品紹介・あらすじ

伝説の大学受験国語参考書、ついに復刊。そこには、「たった一つのこと」しか説かれていない。それは、論の展開を正確に「追跡」して論旨を把握すること。1959年の刊行当時、知識偏重から論理重視への転換期にあった受験現代文の特質をみごとに捉えた、今に通じる画期的な方法だった。さらに、本書は「人間主義・合理主義・人格主義」を柱とする近代思想の啓蒙書でもあった。ポスト・モダン以降の思想が批判してやまない「近代」が志向していたものが忘れられつつある今こそ、本書を読む意義がある。20年以上も定番であり続けた名著に新たな命が宿るときが来た。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、大学の受験に備えて勉強中の諸君のために、入試現代文の解き方を説いたものと称しています。

    この本は、結局「たった一つのこと」を語ろうとするものです。

    内容は、「簡明正確」でわかりやすいものでした。

    ■予備
    ・現代文とは、何等かの意味において、現代の必要に答えた表現のことです。
    ・「現代の必要に答えた」という条件と、「表現である」という条件においてです。
    ・「表現」ということばは、少なくとも二つの意味を持っております。一つは単に「文」という意味です。「文法的文」と言ってもおなじです。もう一つは、それを読む「他人を予想した文」を指す場合です。
    ・公的表現の性格について説明する場合に「筆者の願い」、その表現の公的性格を形作ることになるわけです。
    ・すべての公的表現には、自分の立場を読者に伝え、それを読者に認めさせようとする筆者の願いが根底に流れている。

    ■前提
    ・筆者の願いが公的表現の性格を形成する。
    ・読むものの内にどうしてもなくてはならない二つの前提について記します。

    ・その前提の一つは、読者自身の問題意識、「現代文とは、何等かの意味において、現代の必要に答えた表現のことです」
    ・問題意識とはつまり知識のことになります。知ろうとする心と知られたものとの関係がそこに成立します。そして、この両者はもともと切り離すことのできないものです。知ろうとする心ののないところに知識は生まれるわけはありません。
    ・現代文の根底をなすものは、現代の思想である。
    ・明治維新をきっかけとした近代日本の歴史は、結局ヨーロッパ文化の移植による、封建制打破の歴史であったわけです。
    ・人間主義というのは、ヒューマニズムの訳語です。他に人道主義・人本主義・人文主義などの訳語もあります。ヒューマニズムこそ、ルネサンスの精神であり、ひいては近代文化全体の母胎となったものです。

    ・その前提の二つは、私は内面的運動感覚という、長い名で呼びたいと思います。それは、「論理の感覚」と呼んでもいいです。

    ■方法
    ・たった一つのこととは、入試現代文という断片的な表現に関する方法です。そしてそれは、ひと言でいえば、「追跡」ということです。どこどこまでも、筆者を追跡するという方法です。
    ・追跡は一歩一歩、出来れば筆者の足跡の一つ一つを踏みつつ、なされなければなりません。追跡に飛躍は禁物です。
    ・私が「たった一つのこと」として、「追跡」をいう場合は、そのうちに当然「停止」をもふくむのです。だからそれは、「たった一つのこと」なのです。「追跡」「停止」の二つに分けて記すということには、全く便宜的な意味しかないのです。
    ・追跡という方法は、すでに記したとおり、出発・追跡・停止の三つの部分から成り立つものです。
    ・停止は、追跡の到達点において立ち止まり、前後左右を展望し、追跡の経路を回想し、すでに終わった追跡の全体に関して、その意味を明らかにするところに目的があります。すなわち、「今、自分はどこにいるか」がわれわれの停止して把握すべき最大の目標なのです。

    ■適用
    ・出題者の立場をよく理解し得さえすれば、おのずから、答案の書き方もわかってくるはずです。
    ・特に「簡明に記せ」という注文がついてない場合であっても、常に「簡明」に書くことを忘れてはいけません。それに私は「正確」の二字をつけ加えたいと思います。「正確」というのは、一つは「過不足なく」ということです。もう一つそれに「文字を正しくきれいに」という意味も加えます。
    ・「何を聞かれているか」に即して、「簡明正確」に答えるようにすることだけが、現在は諸君の唯一の道なのです。
    ・「たった一つのこと」がどれだけ体得できたか。「たった一つのこと」はどれだけの力を示し得るか
    ・二度読んでください。どんな書物でもそうですが、二度読んではじめて読んだと言えるのです。

    目次

    読者へのことば たった一つのこと
    第1章 予備
    第2章 前提
    第3章 方法
    第4章 適用
    後記にかえて
    (付)問題の解答
    解説(石原千秋)

    ISBN:9784480092236
    出版社:筑摩書房
    判型:文庫
    ページ数:272ページ
    定価:1100円(本体)
    発売日:2009年10月30日第7刷

  •  現在60代の後半から70代の方にとって、半世紀前に受験生だったような人たちにとって、これはかなり懐かしい参考書です。
     今の高校生には、おそらく読むことも活用することも難しいのではないでしょうか。文庫化されて本屋の棚に残っているとしても、手に取って頷いたりしているのは老人ばかりではないかという気がしますがどうなのでしょう。
     しかし、今こそ現役の受験生諸君に読んでいただきたいのがこの参考書です。要するの答えが書いてない、解き方が書いてないからです。
     「ハウツー本」に育てられている秀才が、答えのない現実のぶつかるとどうなるか、コロナ騒動が教えてくれているのはそういうことではないでしょうか。
     騙されたと思って、この参考書で考え始めてほしいと思います。
     ブログにも、グダグダ書いています。よければ覗いてみてください。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201905180000/

  • 当時大学受験国語はこの1冊さえマスターすれば十分と言われた最強の参考書『新釈現代文』である。1959年に刊行されたこの伝説の参考書が、50年の時を経て2009年に文庫本として復刊していた(筑摩書房より。出版元の新塔社は廃業)。実のところ、このたった一冊でさえ徹底的にやり遂げたという実感はない。ただひたすらに圧倒されてしまったという敗北感だけが痛烈に残っている。

    この年で再挑戦して初めて気付いたことがある。それは、受験生に大学で学問する覚悟を問うような良問と、親身に一途に読者の成長を願って綴られた解説で本書が埋め尽くされていたという事実だ。当時の自分には先生の有難い意図に気付く学力も余裕もなかったことを思い知らされた。大学紛争の起こった成城大学学部長時代に、ロックアウトした学生に毅然とした態度で一歩も引かなかったという気骨ある人柄の一端を示すエピソードも本書を読むと説得力が増す。

    『出題者が設問を通して受験生に何を理解してほしいと願っているかを出題者の立場に立って洞察し、聞かれたとおりに安全かつ簡明な答案を書く』

    『現代文がわからないという場合の多くは、実はあなたがたの問題意識が極めて希薄であるか、または全然欠如していることの告白である』

  • 大学入試の国語を解くのに必要なのは、筆者の論を追跡すること。豊富な例題を説きながらそれを体得していくようになっている。
    選択肢が「相対的にこっちの方が傷が少ないからこっち」みたいな、設問として意地悪なものだったり、解答それでいいの?みたいな物足りなさだったり、少しもやっと。

  • 職場での話の中に出て、読んでみようと思った。
    話していた人いわく、現代文を読む上でなんでもよく切れる、丈夫な’ナイフ’のようなものを筆者は提案したかったようだ、ということだった。

    その、’ナイフ’というのはどういうものか知りたくて読み始めたが、結論から言うとそれは「追跡」ということに集約されるようだった。
    作者の意図や文脈を追跡するという意味で。
    もちろん、その一言に集約する上で色々なメカニズムやノウハウがあるわけで、読み応えのある本だった。

    また、巻末に筆者が「珠玉の15冊」として挙げている文学作品があった。
    その15冊からは帝大文学部卒の、筆者の広い教養を感じられて、唸った。

  • 独特の中高大の入試問題解説書を上梓する石原千秋氏が、「自らの大学受験時代にほとんど唯一読破した参考書」ということで、興味をそそられ、挑戦。元来、現代文参考書は、著者、問題作成者、解答作成・解説者、そして読み手(私)の四者が鬩ぎあう感じがして、解説に突っ込みつつ、あるいはおおっと納得しつつ読むのが楽しく、本書も面白く読み進められた。文庫なのも通勤電車内で読める意味で正直助かる。なお、本論とは全く関係ないが、解説中、ものの例えで、原子物理学が原爆と原発との間でアンビバレントに扱われているのが時代かなぁ、とも。

  • 50年ほど前に出版された、現代文の参考書。
    当時は定番の参考書だったらしい。
    内容は実に重厚で、正直社会人が仕事の合間に片手間で取り組めるレベルではない。が、しかし、参考書としては実に奥深い内容であり、本当の実力をつけることができるのではないかという印象を受けた。また、自分が進学校の国語の先生だったら、生徒にやらせてみたいなとも思った。
    今回は、あくまで参考書として評価を付けた。自分が消化出来なかったのは時間と実力と根性不足ということで。

  • 懐かしいというのとも違う不思議な感覚にとらわれる。
    大学受験のとき現代国語が一番苦手だったはずなのだが、今になると結構すらすらと問題が解けたりする。
    日本語力というのは年齢とともに自然に向上していくものなのだろうか。
    受験国語も満更悪くないのではと思ったりもする。

  • 大学入試現代文とは何か、またその現実的な対策についての丁寧な解説。ちゃんとした高校現代文の授業3年間分を1冊にまとめたものといえる。

  • もはやこれが読めたら現代文だいじょうぶだと…

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