イメ-ジ: 視覚とメディア (ちくま学芸文庫 ハ 23-2)

  • 筑摩書房
3.67
  • (9)
  • (11)
  • (9)
  • (1)
  • (3)
本棚登録 : 323
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095039

作品紹介・あらすじ

イメージが氾濫する時代において、「ものを見る」とはどのような意味をもつのだろうか。今日もなお視覚論の中核でありつづけるこのテーマに、様々な角度から新たな問題提起をしたのが本書である。メディアとしての油彩画のありよう、裸体の持つ意味と"富=所有"の関係、美術館の成立経緯、古典的絵画から現代のコマーシャル・フォトへとつながる系譜とは?美術史上の名画や巷に流布する広告など、多種多様なイメージ群を提示しつつ、それらを等価に論じ、「見ること」そのものの再検討を迫ったロングセラー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 課題図書(任意)のために読む

    とにかく「見ること」について深掘りして論じた著。
    特に写真(複製できるカメラ)がもたらしたモダニズムの変容を説明するために、油絵の役割、それを見ることの意味、見るための装置、所有について語られている。
    長々と下に書いていくが、1972年時点でこれほどにラディカル(過激)な論をBBCが放送したことに驚いた。
    なおこの著作はBBC放送のWey of Seeingを元にしたテキストとなっている。

    <見ること>
    見ることは受動的なものではなく、能動的だという。受動的な見ることは視覚的な刺激のことを指すのであって、あくまで能動的な活動で、理解し目線を向けることが、つまり「見ること」であると。
    しかし、イメージは保持される権威などから先入観持って見てしまうととんでもなくそのイメージが持つ目的と役割を曖昧にし、神秘化させてしまう。イメージによって触発された感情を鑑賞へすり替えてしまう。
    ここでいう正しく見るということはどういうことなのか。

    <見るための装置>
    この本はベンヤミン『複製技術時代の芸術作品』を土台に論じられているので、「見る」ということ自体の意味が変わってくる境界は、「遠近法概念」と「(複製が可能な)カメラ」ということになる。遠近法概念によるイメージは一点の主要光線によって物が配置される。つまり遠近法的認識がやがて権力構造と同化し、支配のための道具となる。絶対王権主義と同様な視覚の構造を遠近法が持っていた。

    <所有>
    この時代のイメージつまり油絵は保有するものの誇示に使われる目的であったことが見えてくるだろう。宗教画・肖像画はもちろんのこと新興ブルジョア層によって静物画・風俗画・風景画さえも美徳支配や所有のイメージとして作られる。作られた物は作られた場所に所有され、描くものは止まっている。それが油絵の慣習の規律となった。

    <巨匠>
    しかしその慣習を抜け出した例外的な画家たちが、油絵の価値観とは全く正反対の作品を生み出したのに、彼らが伝統の最良の実行者として喝采を浴びたのである。(例:レンブラントの自画像作品群など)

    <見ることの変化>
    油絵の時代は1500年ごろから1900年頃までとされている。
    カメラの登場によっての変化は、複数性もあるが、ここでは目線の変化と言える。一点の主要光線から配置される所有と支配のイメージからカメラによって見ている視点が複数になる。キュビズムでは見る対象は一点からではなく複数の視野が存在し、印象派は絶え間のない変化を描くようになる。つまり油絵の慣習が通用しなくなったのである。

    ベンヤミンは複数技術時代によって一回性のアウラが消失し、特権階級による支配から一般大衆の手の届くものとなると歓迎したが、カメラによってその油絵時代のイメージが失った代償もある。市場価値に絶対的に依存することになったのである。特別なものでなければそのように神秘化されなければならないという代償。

  • 美学関連の本を読みあさっていた時にリストアップした本。
    様々な視点から「見る」ということを再考している。今まで
    多くの本を読んできた私にとっても新たな視点の発見がある
    という僥倖。「男は女を見る。女は見られている自分自身を
    見る」「所有形式としての絵画」「肖像画の相貌はやがて
    マスク(仮面)になっていった」「広告は未来について語って
    いる」etc. 近々「見るということ」も読みます。

  • 2022/03/30
    説明がわかりやすい。翻訳がいいのかな?
    絵を考える時にすごく役に立ちそうな本だ

  • 学生(らいすた)おすすめポイント
    『視覚的メディアが重要視される現代、「みる」とはどのような意味を持つのだろうか。視覚論について触れられる本になっています。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/645171

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/683687

  • 原書名:WAYS OF SEEING

    1 イメージの変容
    2 社会空間になったイメージ
    3 「見ること」と「見られること」
    4 見られる女たち 取り囲む女たち
    5 所有するタブロー
    6 「見ること」のなかの「所有すること」
    7 広告の宇宙
    見ることのトポロジー(伊藤俊治)

  • 主に見ることと見られることの意義について語っているようだが、レビュー書くにあたって流し読みすると内容がぜんぜん思い浮かばず、頭に入っていないようだ。とりあえず、例となる絵画の写真がかなり多くあったので助かったような気がすることは覚えている。

  • 1972年にジョン・バージャー氏が監修したBBCシリーズを出版向けに再構成した「イメージ Ways of Seeing」と訳者伊東俊治氏による論稿「<見ることのトポロジー>」の2本立てで構成される、視覚芸術に関する美学書の文庫版です。

    ジョン・バージャー氏による「イメージ Ways of Seeing」ではルネサンス時代に誕生した油絵から現代の広告まで幅広い視覚への働きかけを共通の絵画言語の上に成り立っているものとして捉え、これを「イメージ」という一つの視点から論じようとします。そして「イメージ」をめぐる様々な構成要素―「制作者」「鑑賞者」「所有者」など―が「イメージ」の周囲でどのような相互関係を成り立たせているのかを明らかにしていきます。
    油絵を「世界の似姿を作る」という目的に特化した技法であることを指摘し、油絵を所有することは描かれた対象を欲望し所有する意思があることの現れであることを暴いてみせる第5章、現代消費社会の広告がそれまで存在した油絵と鑑賞者の関係をトレースしたものであり、油絵における<鑑賞者=所有者>という関係を呼び起こすことによって広告は私たちとの間で<鑑賞者=購買者>という関係性を成り立たせようとすることを指摘した第7章の考察は非常にスリリングで読み応えがありました。

    バージャー氏の論考を受けて訳者である伊東俊治氏が考察した「<見ることのトポロジー>」では、写真の登場によって到来した「複製芸術の時代」においてイメージの氾濫がおこり、私たちの視覚と意識の関係性が「見る」ことから「見せられる」変容したことを明らかにし、「イメージ」を見せられることにより無意識のレベルから私たちの未来への意識が規定されていることを鋭く指摘しています。

    本書は(この種の文献に比べると)非常に平易な文章と豊富な図版によって構成されており、美学書としては非常に読み進めやすいと思います。BBCのシリーズが1972年の作成であり伊東俊治氏の文章も1986年が初出であることから、残念ながら本書で展開されている論考から新しく刺激的な視点を得るということは難しいかもしれません。むしろ論点としては少し古臭い感じもしました。広告について芸術学の視点から見るということに対してはアメリカンポップの分析の観点からもだいぶ進んでいるように思いますし、私たちの意識が外部の社会構造から影響を受けているという指摘も現在では一般的な認識になっているように思われます。しかし本書において展開されている論述というのはこれらの視点の基礎となるものとなりうるため、消費社会における芸術を考えるにあたっての一つの起点としてこの本を読む価値は十分にあるのではないかと思います。

  • ◎広告について。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1926年、ロンドン生まれ。小説家・評論家・詩人。著作には、小説、詩、戯曲・シナリオ、美術や視覚メディアに関する評論、社会学的な研究としてのノンフィクションなどがある。70年代半ばにフランス・アルプスの小村ヴァレー・デュ・ジッフルに移り住み、以来そこで農業をしながら多彩な表現活動を続けている。

「2016年 『果報者ササル ある田舎医者の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョン・バージャーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×