私たちはどう生きるべきか (ちくま学芸文庫 シ 32-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480095817

感想・レビュー・書評

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  • 究極の選択:
    アィヴァン・ボウスキーの選択
    ギュゲースの指輪
    「いったい何のためにこんなことをしているんだ」
    歴史の終わりか、それとも非宗教的な倫理の始まりか
    倫理と私益


    「そのどこが私のためになるんだ」:
    失敗に向かいつつある社会実験
    共同体の喪失

    世界を使い果たす:
    ジャン=ジャック・ルソーかアダム・スミスか
    遺産をたよりに生きること
    流し台があふれるとアダム・スミスは時代遅れになる
    どのよぅなときに私たちは裕福なのか

    この生き方の由来はどこにあるのか:
    よこしまな本能
    アリストテレスにおける金もうけの技術
    商人は神に気にいられるか
    ルターの召命とカルヴアンの恩寵
    宗教と世俗の接近
    消費者社会
    しおれた緑の新芽
    レ—ガン時代―「汝自身富め」

    利己心は人の遺伝子の中にあるか:
    利己心の生物学的論拠
    子どもに対する配慮
    親族に対する配慮
    自分が属する集団に対する配慮

    日本人の生き方:
    日本―社会的試みは成功したか
    倫理的共同体としての会社
    自己と集団

    お返し戦術:
    私たちを気づかってくれるものを気づかう
    「お返し戦術」でもっとうまくやる
    私益と倫理-当面の結論

    倫理的に生きる:
    英雄たち
    緑の新芽
    なぜ人は倫理的に行為するのか?

    倫理の本性:
    より広い視野にたって
    倫理のジエンダー
    イエスとカント、なぜ倫理的に生きるべきかについての2つの見解
    イエスとカントをこえて、究極の解答を求めて

    ある目的のために生きる:
    シーシュボスの神話と人生の意味
    専業主婦とオーストラリア先住民と檻に入れられた雌鶏
    競争に勝とうとすること
    内に向かう傾向
    自己をこえた大義

    よい生き方:
    豆粒ほどの前進
    理性のエスカレーター
    倫理的な生き方に向けて

  • 2017年11月12日に紹介されました!

  • ざっくり掴んだところだと、
    ・倫理的に生きることと利益を追求することの両立不可能性を主張する考え方を批判する
    →したがって、以上の前提を元にした「倫理的に生きることを諦めて利益を追求しさえすればよい」という考えや、「利益の追求を犠牲にしてのみ道徳的に生きることは可能だし、そうすべきである」という考えは斥けられる。たぶん前者についても反論している(前半部は読み飛ばしてしまった)。後者については、倫理的に生きるのは利益のためにもなるし、それ以外の正当化はないと反論。

    しかし、倫理的かつ利益追求的な生き方をするべきであるとして、どうやって人はそれに動機付けられうるだろうか。そこで、人生の意味の問題、ニヒリズムの問題に入る。
    永遠に岩を押し上げ続けなければいけないシシュポスの生に何を追加したら有意味になるだろうか、という問いをとりあげる。可能性の一つは、その岩によって神殿を建設するという目的であり、もう一つの可能性は、岩を押し上げたいという欲求である。シンガーは、前者によってこそシシュポスが救われるのであって、後者ではそうではないと考える。追求することで生に意味を満たしてくれる欲望と、そうでない欲望が客観的に区別されうることをシンガーは説く。
    そして、論証できているかは正直分からないが、客観的な意味の追求が、心情的な問題の解決のための処方箋でもあるし、客観的に見て意味ある生の追求を抜きにした心情的な問題の解決のみのためのアプローチは、本来の目的をも達せない、と主張する。

  • 動物の虐待があっての肉食をいつまで人間は続けるのかとせまってきますが、菜食主義にはこれからもなれる自信はまだじぶんにはないことの恥ずかしさを痛感しました。弱者を見つめた生き方ができないと、だめであることも教えられますが、できることから、まずやってみることからでないと何も始まらないことがよくわかりました。

  • 消費の批判、必要の膨張、幸福の条件、公共心の擁護、共同体と連合、イメージ戦略の暴走、分を知ること、利益第一の罠、分配のウソ、etc/

  • 第5章
    集団に対する個人の献身の不利益を減じたり、利益に転じさせられるのは文化だけ。
    第一次世界大戦中、イギリスが志願兵に頼っていたころ、少女たちがロンドンの街頭に立って、兵士になる年齢なのに軍服を着ていない男たちに臆病者のしるしとして白い羽根を贈る習慣があった。また、アメリカ先住民のシャイアン族やアラパホー族の戦士が、命を賭して戦うことを誓うと、戦場に赴くまでの数日間、女性の同意のもとで、戦士たちが望む限り多くの女性と関係を持つことができた(異性関係は、普段は厳しい掟に支配されている)。

  • 早く安倍晋三君に読んで貰わなきゃ、、、

    筑摩書房のPR
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095817/

  • この本もそうだが、倫理学の本というのは、私にとって哲学書のように知能をフル回転させて取り組むような内容でもなく、比較的気楽に、ほとんどひまつぶしのような感覚で読むことの出来る「読み物」である。それはラジカルな掘り下げは徹底されないが、それなりにゆったりと考えさせるような、やわらかな読書の時間を与えてくれる。
    ところでこの著者のピーター・シンガーという方は、オーストラリア人のようだが、私は何故かアメリカ人だと錯覚して読んでいた。
    「もし短期的にも長期的にも正義が誰の利益にもならないなら、正義に固執するのは無意味である。」(P269)
    このような考え方は、いかにもアメリカンな功利主義のにおいがする。カントの道徳論の奇怪な「純粋さ」とは反対である。
    著者は随所でヴィクトール・フランクルを持ち出してくるので、お気に入りのようだ。名前は出てこないが、心理学的にはエリクソンの系譜に親近感があるにちがいない。
    しかし、人間のもつ「利他性」の側面を高らかに称揚するくだりは、力強く、なかなかに感動的でさえある。
    日本人の集団主義的な部分を褒め称えている1章があるが、ちょっと褒めすぎだ。日本の「集団志向」は諸刃の剣であって、良い方向に作用もすれば、ひどい結果をもたらしもする。集団というゲシュタルトへの自己の統合は、極端なおろかさへと走り、ゲシュタルトに一致しないマイノリティや「外部」に包囲攻撃をしかける場合もあるだろう。それを政治家がうまく利用すれば、暴力的な全体主義に突き進むことだって可能だ。
    だがまあ、それは別の問題かもしれない。シンガーさんは日本についてあまりよくは知らないようだ。

  • 日本の集団主義が内向きのグループだけの倫理であることが書いてある。アメリカで内向きの心のために精神分析にかかるのは昔のことかと思っていたがそうではなかった。デジタルストーリーテリングがアメリカで流行るのも自分を出したいという自己愛と同時に自分の心を見つめるブームもあるのではないか。

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著者プロフィール

ピーター・シンガー(Peter Singer)
1946年生まれ. 1971年オックスフォード大学哲学士号(B. Phil.)取得. プリンストン大学生命倫理学教授, メルボルン大学応用哲学・公共倫理学研究所教授. 主著:Animal Liberation(1975:邦訳『動物の解放』(改訂版), 人文書院, 2011年), Practical Ethics(1979:邦訳『実践の倫理』(第二版), 昭和堂, 1999年), One World(2002:邦訳『グローバリゼーションの倫理学』昭和堂, 2005年), The Life You Can Save(2009:邦訳『あなたが救える命』勁草書房, 2014年)他.

「2018年 『飢えと豊かさと道徳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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