満足の文化 (ちくま学芸文庫 カ 36-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096050

感想・レビュー・書評

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  • 1992年の著作ですが、2014年に文庫化されました。
    ピケティを中心とする新「資本論」に関する議論が再燃する現代においても、今なお示唆に富む考察です。
    異端の経済学者と呼ばれることの多いJ・Kガルブレイスですが、本書においては経済理論というよりも、政治学あるいは人類学までも射程に、資本主義がかかえる課題(それこそトリクルダウン仮説など)を、独自の造語を用いながら整理しています。
    著者も冒頭で「本書のようなエッセイ」と表現している通り、平素な単語で読みやすく書かれています。
    ちなみに著者が84歳のときに書かれたとのことですが、その切れ味たるや恐ろしいです。

  • 経済的に豊かで今の生活に満足している層をガルブレイスは、『満足せる人々』と呼び、その満足せる層が、歴史的に1980年代頃から多数派となり、アメリカで支配的な政治的影響力を持っているという。

    ガルブレイスは、この新しい事態をまるで人類学者のように、善悪の価値判断を挟まずに、観察し、分析するという。

    彼らが最も嫌うのは、彼らが納めた税金が貧困層に福祉として使われる事である。
    実際には、これら下層階級が、彼らの嫌がる辛い仕事を構造的に引き受け、彼らの生活の基盤を支えているにも関わらずである。
    また、経済への国家介入に抵抗するという。
    また、彼らは、増税も嫌がる。
    彼らは、金融政策のみ支持する。

    しかしながら、データ的裏付けやそれを証明する具体的な出来事を紹介する訳でもなく、それは、一つの仮説に過ぎない。

    しかし、その仮説により、納得してしまう事象もあり、読みやすい事も加味し、経済学者が『満足せる選挙多数派』を軸に書いた軽いエッセイとして読むと面白い。

    このガルブレイスの『満足せる選挙多数派』の理論を日本に応用すると、技能実習生の酷い環境や入管施設の問題など、国会に取り上げられたり、報道されているにも関わらず、昔なら、『人権問題だ。』と、それなりに声を上げる人たちがいたと思うが、それが現在大きな問題にならないのは、彼らに選挙権がなく、日本の『満足せる選挙多数派』が、無関心だからとも言えるであろう。

  • ガルブレイスはリーマン・ショック前に世を去ったが、アメリカのリベラルサイドの論客として、大きな影響力を持っていたようだ。異端の経済学者と呼ばれていた。本書では経済学というよりも政治社会学のような印象を受ける。民主主義は必ずしも全体にとって最適な選択を為すとは言えず、現状に満足する多数派によって牛耳られてしまうために、本当の弱者が切り捨てられていく・・というところが根底にある。とはいえ、筆致は客観的であって煽るような文言は綴られていない。知的で穏やかな表現であり、良識的というのがぴったりくる。

  • 東2法経図・6F開架 332.53A/G17m//K

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