統計学入門 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 76
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480096722

感想・レビュー・書評

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  • 統計学の入門書として、これは良書だと思う。数式の苦手な文系の読者はこれを読んだ方が良い。
    著者は社会学者であって、数学者ではない。社会学的な分析の中で、各種の統計を参照しつつ仕事をしている方なのだろう。それもあって、この本では純粋に統計学の理論のみを解説するのではなく、統計を用いながらも誤った推論の危険性や、誘導的な不正な世論調査などについても詳述され、つまり、「統計学」が数学的遊戯ではなく社会生活上の知として常に還元されている。
    しかも、いかにも平易である。数式がどんどん出てきて新しい専門用語も連発されてくるとさすがにちょっとしんどかったが、それ以外はとてもわかりやすい。やはり人文系の人は文章が上手い。
    数学者による入門書なら、こうはいかない。数学者、自然科学者の理論は、ともすれば、われわれが日常そこに生きている言語空間=社会から隔絶したところへディスクールが飛んで行ってしまう。それは決して悪いことではないのだが、私にはなかなか付いていくのが辛いところがある。
    そういえば、新奇な音響を見つけ合って「これは面白い」などと喜んでいる、「最前衛」の実験的な現代音楽の世界も、これら数学者や自然科学者に似たところがある。全然悪いとは言わないけれども、やはり社会的価値とどんどん離れていく宿命を背負っている。
    社会学者は、ふつう社会研究のついでとしていくらか小説なども読んでいることだろう。私は、いま人々が他者への寛容さを失い、ヒステリックな感情を応酬し争っているのを見て、こういう世の中になったのは、文学が失われたからだと思う。ときのネトウヨ政権が国内の大学から文系を大幅に抹殺しようなどという、手に負えないほど馬鹿げた政策を打ち出しているのも、こうした世情の反映でもある。
    文学は人の世の(社会の)関係性と意味体系(ゼマンティーク)にしっかりと根ざしながら、人間なるものの多様さをえぐりだす。
    だから、文学と人文科学は、いまこそ栄えてほしいものである。
    などと、全然本書のレビューになっていないことを書いているが、この本は、とにかく「統計データ」の取り扱いに当たっての慎重さと知性を強く要求している部分、たいへん参考になった。
    産経・読売の世論調査には気をつけろ。ということでもある。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738004

  • 統計について基本的なことが整理された本。

  • 417||Mo

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2021年 『協力の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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