社会学の考え方〔第2版〕 (ちくま学芸文庫 ハ 35-2)

  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480097460

作品紹介・あらすじ

日常世界はどのように構成されているのか。変化する現代社会をどう読み解くべきか。読者を〈社会学的思考〉の実践へと導く入門書

感想・レビュー・書評

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  • まさに社会学の教科書。
    社会学をこれから学ぼうという人にはもちろん、社会にちょっと興味がある人にも、日常生活に何か気付きを得たい人にも良いのではないだろうか。

    日常生活に想いを馳せることになったのは、第9章。
    テクノロジーとライフスタイルでは、広告が説得の技法を駆使していかに「その製品が欲しい」と思わせるか、そのためにはCMには信頼に足る人物が使われることや意外な組み合わせについて触れられている。
    インターネットで頻繁に表示される広告を見るに、次第に接触効果か何かでほしいと思い始めていたりするわたしも毎日働きかけられていたのだと気付かされた。

    第2章で取り上げられている「儀礼的無関心」は興味深かった。都会の我関せずというのがまさにこの儀礼的無関心だ。
    「孤独は、プライヴァシーの代価である」というのが深く刺さる。
    また、道徳性について述べている部分では、最近ネットでよく見る自己責任論が出てきており、これもまた都市生活者ならではの考え方と見ることができる。
    あまりよくないことのようにも見える儀礼的無関心だが、「儀礼的無関心のお陰で、よそ者は敵として扱われることはなく、たいていの場合、よそ者に降りかかりがちな運命を免れることができる。彼らは、敵意や攻撃の標的ではなくなる。」というメリットがある。
    まさに流出入の激しい都市ならではの社会性だと感じた。
    田舎と都市とどちらがいいかと言われると、はなから田舎のコミュニティの一員として生きてきているのであればそこに慣れているであろうし、よそ者として敵視されることもなく受け入れられているからよいかもしれない。が、「どこどこのだれだれさん」ですぐに広まってしまう噂話等を考えると、プライヴァシーのために都市の孤独を選びたくもなるのもよくわかる。

    第5勝「贈与と交換」p201には、プライヴァシーについて「プライヴァシーとは、他社の圧力や要求から自由で、自分が『価値がある』と思うことだけをする状態を指す。(中略)プライヴァシーのないコミュニティは、所属というよりも抑圧みたいなものに感じられる。その一方で、コミュニティのないプライヴァシーは、『本来の自分である』というよりも独りぼっちであると感じられる。自分が自分であるのは、様々なレベルで他者とともにあるからである。(中略)かくして、自分自身のことを知るには、まず他社のことを知らなければならない。」
    と、ここにも第2章の話が生きてきている。また、第3章はコミュニティと組織について述べられており、関連性が第5章で集約されている。

    第6章の身体の諸相では、身体が自己表現の場であると述べており、エリザベス女王が外見を変えたことで「未来の花嫁」から「女王」として人々に認められる一歩となったという具体例を挙げている。

    総じて、私が興味を惹かれたところをかいつまんで考えるに、社会とは人との関わり合いの中で生まれた制度や様式などであり、社会学とはその制度や様式が整えられたり敷衍するに至った道のりや理由を解明するものというところであろうか。

    この本を読む前に「東洋的な考え方」を読んでいたので、この本の考え方ががっつり西洋的な考え方の二元論に基づくものであることを早速「第2章わたしたちとかれら」という表題から感じ取り、思わずニヤニヤしてしまった。
    まさに私に対しての他者であり、わたしを取り巻く集団所属についての考察が記されている。
    私と他者。主たるものと客たるもの。この西洋的な二元論の考え方は、社会構造を考察するために分解するための一つのツールとしての考え方であると考えると、西洋諸国で社会学が編み出されたのも頷ける。東洋的な考え方に則って全体の中の個という切り取り方では、西洋的な社会制度が現代的として受け入れられている社会を分析するには向いていないというのもあるかもしれない。

  • 社会学の入門書としては、よくまとまっていると思います。社会学でよくありそうなパターンのことを教科書的にまとめられていると思います。
    ジグムント・バウマンの著書は以前、リキッド・モダニティを読みかけて、あまりの論理性のなさに途中で投げ出したことがあるのですが、こちらはその点ではまだちゃんと読めるものです。

    ただ、文章の端々にただよう、「俺達vs奴ら」という構造と、「俺達の正しさ」が無根拠に述べられていくあたりが「やっぱり社会学(のほとんど)は身体に合わないなー」というのを再確認したという感じです。

  • 「社会学の教科書」とのことだが、日本の小中高・大学で一般に使われるような、重みの無いキーワードの羅列でしかない教科書とはぜんぜん違う。
    『リキッド・モダニティ』を書いたジグムント・バウマンは社会哲学とも呼べるほどに精緻な思考を積み重ねており、その含蓄深い文章は読んでいて非常に面白い。
    本書では、複数の人間の関係性からあらわれてくる依存や集団(およびその免疫機能)から切り込み始め、これは私の現在の主要関心事のひとつなのだが、集団の「境界線」が集団を規定するという、直接は言及されない自己組織化-オートポイエーシス理論にもつながった思想に踏み込んでいく。
    たぶん社会心理学に分類されるであろう領域での筆も冴え、とりわけ、現在の日本のネトウヨ化傾向にも直接代表される「ナショナリズム」の危険性(それは国家を利用し、利用されつつ、破滅へと向かう)を解析している章が注目である。
    また、「需要が供給を生む」という古典的な経済学の発想は無効であり、いまや広告等をとおして「供給が欲望をめざめさせ、需要を生み出す」という資本主義の段階にあることを強調している点、とても共感した。このへんを、日本の政治家、行政、企業は全然理解していないので、経済がよくなることはないだろう。
    いちおう教科書として、さまざまなトピックをめぐり歩いて行く格好ながら、ひとつひとつが深い洞察に支えられており、読み応えのある本になっている。
    良い本だ。

  • 高校生くらいに読ませるべき本

  • ジグムント・バウマンとティム・メイによる社会学概論。こちらは第2版だが、第1版とは内容が異なっているという。そこらへんは訳者によるあとがきに詳述されているので参考になる。「自由と依存」「贈与と交換」といった章は「だいたいこういう話だな」というのが想像できるが、「身体の諸相」「テクノロジーとライフスタイル」などの章は、「その話をこの文脈でするのか」という著者らの力量に驚かされるばかり(当たり前といえば当たり前)。終章の「社会学的思考」では、社会学の今後の展望が書かれているが、社会学の学問としての面白さは解釈だという点は心に刻んでおきたい。

  • 東2法経図・6F開架 361A/B28s//K

  • 361||Ba

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著者プロフィール

1925年、ポーランドのポズナニのユダヤ人家庭に生まれる。ナチス侵攻によりソヴィエトに逃れ、第二次世界大戦後ポーランドに帰国。学界に身を投じワルシャワ大学教授となるが、68年に反体制的知識人として同大学を追われる。イスラエルのテルアヴィヴ大学教授などを経て、現在リーズ大学名誉教授、ワルシャワ大学名誉教授。現代の社会学界を代表する理論家である。邦訳書に『個人化社会』(青弓社)、『コラテラル・ダメージ――グローバル時代の巻き添え被害』(青土社)、『コミュニティ――安全と自由の戦場』(筑摩書房)、『リキッド・ライフ――現代における生の諸相』『リキッド・モダニティ――液状化する社会』(ともに大月書店)、『廃棄された生――モダニティとその追放者』(昭和堂)など多数。

「2012年 『液状不安』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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