定本 二十歳のエチュード (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421005

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  • 文学

  • 私の思想の原点になった数冊の本の1冊。
    この本に出会えて、私は確実に大人の世界に入った。
    初めてこの本を読んだのは、中学2年生の時。

    それまで読んだどの本もこの本とは違う対極にあった。
    世の中に嫌気がさし、両親に反抗する日々で、自殺さえ考えた毎日。
    その中で本当の虚無と孤独、自嘲する精神、自分と向き合い深く考えられるようになった。
    究極のエゴというのは、本当は自分の背に確たる思想と完全を求める精神に成り立っていると知った。

    原口統三は、敢て自分を孤独の淵に追いやり、その中でもがく自分すら嫌悪する精神を持ち、自分に正直に生きるということを追求する。
    実はこれほど純粋で、素直な精神を持ちピュアな心を持つ人はいないのではないだろうか。
    原口統三は、その純粋さゆえ自分から命を絶つという結末を選ばざるを得なかった。
    愚かといわれるかもしれないが、その自分を最後まで許さない、その心は誰にも出来ないことだったのだと思っている。

  •  原口の死は確信的であるといえる。
     芥川曰く、「誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。…僕は君に送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている。…君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであろう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動機に至る道程を示しているだけである。
    …少くとも僕の場合はただぼんやりした不安である。何か僕の将来に対するただぼんやりした不安である。」
     正直に言って、自分は原口の死は共感もないし、理解もできない。しかし、その確固としつつ揺れ動く死には敬意を表したい。

  • 080820購入。080823読了。
    原口も結局は「自我に関する自殺」でこの世を去ったのか。そうであればそれは高野悦子や三島由紀夫のそれとなんら変わりはない。印象に残った文章が多々あった。「自殺は倫理的でも道徳的でもなくただ美的である」ということ。あとがきの「それでも自殺をやってのけようとする強靭さにあきれ返る」の部分。そしてなにより原口のエチュードの文の美しさ。内容は難解で自分はほとんど表象的にしか理解できていないが、原口の「威圧」に食われないためにはそれくらいの距離感を持っていたほうがいいのかもしれない。魔力がある本だ。一生忘れることはないだろう。

  • 読まなかったし、判らなかった?

  • 仲井戸麗市、チャボはこの本を「ブルースでいっぱいだった」と言った。これがブルースならば、それが苦手な僕にも少しは理解ができるかもしれない。

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