もっと、狐の書評 (ちくま文庫 き 19-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480424570

感想・レビュー・書評

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  • 読み込んだ本を自分のものにしている、という表現さえも厚かましいくらいフラットに書かれた書評だった。一冊の書評が文庫の見開き1ページで読める手軽さもいい。

    特にコラム『書評者に「名前」なんているでしょうか』には強い感銘を受けた。

    「書評者は伝達者だと思う。肝心なのは、本を閉ざして自己主張することではなく、本を開いて、そこに書かれていることを伝えることのはずです。」

    このコラムで書かれた彼のスタイルに、筆者が本に向ける澄んだ眼差しの源を見たような気がした。彼のように本を読み、語りたいと思わせる、そんな書評だった。

  •  あの夕刊紙『日刊ゲンダイ』(政治経済、芸能やスポーツ、大人の男性向けコンテンツ((?))などの柔らか系まで、じつに幅広い時事ネタが踊る)で、約22年も特異な存在感を発揮し続けた<狐>の書評。
     ペンネームは<狐>とのみ記され、知的で硬派で濃密で、ただならぬ質量の書き手の文学的知識を示したその欄は、今や伝説です!

     語り継がれる『水曜日は狐の書評』の文庫版(絶賛絶版中)を知人に貸したところ、返してもらえないまま音信不通に★ 嘆き悲しみ、無事を祈りながら(友じゃなくて本の)、手もとにある『もっと、狐の書評』(2008)を繰り返し読んでます。
     本書は、過去に刊行された4冊の山村狐さん(?)書評集から選りすぐった数篇に、未収録書評、インタビュー、データ等々を追加した、狐セレクション的なお宝本です。

    <狐>の書評は、約800字(♪)でまとめ上げているのも特色の1つ✧ 800字というのは、書籍化するとちょうど見開き2ページで、非常におさまりが良いことも分かりました。その短さで、作品の価値を凝縮して伝える、鮮やかな800字書評の世界に、感嘆しきりです★

     私は、<狐>さんの正体が秘密のままでもいいと思っていたし、人間でなくても驚かないつもりでした。動物が尻尾をペンにして文章を綴ったり、妖狐が夜な夜なパソコンの画面に向かっていたら面白い……★ なんて失礼なイメージを膨らませるのも楽しみだったものです。

     しかしある日、「ついに狐がヴェールを脱いだ」との噂が一部で駆けめぐり、本書巻末にもその辺の事情が記されています。以後、狐氏の書いたものには山村修なる人間名が刻まれましたが、程なくしてその方は亡くなりました。
     ご自身でヴェールを脱がなければ、周りから暴露されたのでしょう★ タブロイド的な宿命か。私はそうでもなかったけれど、「脱ぐ」のを見たくて詮索する人は少なくなかったようです★

  • やはり、読者を増やしそうな書評ですね。
    取り上げている本のジャンルも広くて、それでも、すべてのジャンルに対して詳しい考察を加えているのがものすごいことだと思います。
    ただ、編集がジャンル別になっているのはどうかと。
    掲載日順に並んでいた方が、読者もあまり飽きないんじゃないかと思います。
    あと、評論を書く人間の匿名性については、「狐」の意見に全面的に賛成です。

  •  高島俊男さんが、 『本が好き、悪口言うのはもっと好き』の中で、とても褒めていたので、読んでみました。
     たしかに、とても参考になる書評でした。短文なのに、どれもその本を読みたくさせるものばかりです。高橋さん曰く、書き出しも、しめくくりも両方とも上手い、カキダシスト兼キリスト、だそうです。
     『書評者に「名前」なんか要るでしょうか』の中で、狐さんも、高島俊男さんを絶賛していたので、お互いに褒め合ったことになります。

  • 2013.9.30市立図書館

    短くも要を得た書評ももちろんいいのだけれど
    (好奇心かきたてる紹介文のせいで、読みたい本が芋づる式に
     増えていってしまうのにはこまるけれど)、
    最後におかれた文章「書評者に「名前」なんか要るでしょうか」
    に共感した。

    「狐の書評は点が甘く賞めてばかりで、実名でもいいのでは?
     匿名ならもっと辛辣にかいてはどうか」
    という狸さんの書評への反論。

    匿名性を隠れ蓑にして悪言暴言を平気でひとに浴びせたり
    傍若無人の自己主張がまかり通ったりする
    この頃の、ネットメディアに辟易しているので。

    本に書かれていることを的確にとらえて、
    十全に伝えるためには「自分のこと」は問題にならないはず、
    そういう姿勢で綴られた書評は、やはり読んでいても気持ちいい。

  • 2008年7月10日初、並、カバスレ、帯なし
    2013年7月9日、松本筑摩店BF

  • 取り上げたすべての本を「面白そうだ」と思わせる手腕。短文の手本でもある。

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