- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480432513
感想・レビュー・書評
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台湾国民党の対中政策、香港返還、日本と香港のエンタメ業界の違い等、テレサテンの人生を辿りながら現代中華史を浮かび上げていて、かなりの力作。ただ、テレサテンをあまりリアルタイムで聴いていない身としては少し遠い物語な感じがしたのも否めない。テレサテンのヒット曲をBGMにかけながら読むようにしたら、彼女が国境を越えて人の心を掴んだ理由がようやく分かった気がする。
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テレサ・テンが亡くなってからもう24年もたつんですね。日本でヒットした「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」などの色合いから貞淑で薄幸そうなイメージがある一方、いまにして思えば晩年の天安門事件(六四天安門事件)における中国共産党の仕業を批判する姿が目立ち、反骨の人、反体制の人というイメージももっていたんだけど、この本を読んでその印象が変わった。
というのも、鄧麗君は中学中退の自身にコンプレックスがあり、常に学ぶことに励む一方で、物事を単純にとらえてしまう面があったという姿が見えてきたから。著者が彼女についてインタビューした瞳みのる氏も「歌をとおして伝えたかったメッセージは彼女なりにあったと思いますが、社会の全体が見えなかったんだと思います。本来受けるべき教育を受けていないから、ものごとを単純化してとらえてしまう。“政治ってこんなものだよ”ということがわからなかったんじゃないでしょうか」(p.18)と述べている。いやむしろ、18ページという冒頭に出てきたこの言葉を軸にしてこの一冊を読んだというべきか。
そして反骨の人、反体制の人というイメージが薄れると結局、稀代の歌手で人々から大きな人気を得ながらも私生活は満たされなかったというお決まりの評伝になってしまう。美空ひばりも島倉千代子も尾崎豊もみーんなそう。それは真実かもしれないけど、それをいったら人間みんなそんなもんだとも思うんですけどね。 -
ネット検索すると彼女の死因についていろいろ情報がでてくる。。。本当のところどうなの?というのはもはや知るよしもないが、その辺りを知りたくて読んだ。
テレサテンの生い立ちから描かれているが、生前の彼女を知る人々の証言から彼女の人柄なども偲ばれ歌を聴くのに奥行きがでたのがウレシイ。
また、テレサテン以外にも台湾出身の二人のミュージシャンが天安門事件に(というか中国と)どう接したかにも触れていて、そちらも興味深い。
読後、著者の平野さんは先日読んだ台湾のグルメ本を書いた方だと気づいた。現場の取材とそれを客観的に扱いながらも対象物への愛がそこはかとな~く感じられるところがよい。