ぼくの東京全集 (ちくま文庫 お 8-5)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434074

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  • 90歳になる著者が執筆してきた著作をまとめたもの。戦時中の東京の様子や戦後の復興期の様子など、当時のことが上手く表現されていると思う。ただ、私的な交友関係や出来事の記述も多く、面白いところと興味を持てなかったところがあった。
    「(汽車への乗車)ドアの外にぶらさがるのが一番危険で、はずみでこぼれたり、線路脇の鉄柱にぶちあったって命を落とす者もいた」p17
    「(パンパン)1945年8月18日、内務省警保局から全国の警察署長へ、マル秘の無線通達がゆく「左の営業については積極的に指導を行い、施設の急速充実を図るものとす。性的慰安施設、飲食施設、娯楽場(カフェ、ダンスホール)。営業に必要なる婦女子は芸妓、公私娼妓、女給、酌婦、常習密淫犯者等を優先的にこれを充足するものとす」p47
    「(銀座街頭看板)新日本女性に告ぐ! 戦後処理の国家的緊急施設の一端として、駐屯軍慰安の大事業に参加する新日本女性の率先協力を求む!」p48
    「1946年1月21日、占領軍総司令部は日本政府に対して「公娼廃止に関する覚書」を発する。公娼の存続は、デモクラシーの理念と自由の発達に背反する、と。すなわち、ヤメロという命令だった」p51
    「(東京大空襲2日後、3月12日)一望千里の焼野原がひろがる一方で、焼け残った町は、雑炊食堂に行列ができ、映画館も上映していた。神保町古書店街が、ほぼそのまま敗戦後の、知的飢餓感に応えるオアシスとなった」p61
    「(銀座界隈など)戦後の東京は、埋め立てて、平らにするのが好きな町ではあるまいか。かの上野不忍池も、一時はあやうく埋め立てられて、民衆の為の健全なるスポーツの殿堂、大野球場が造られそうな形勢だった」p79
    「大丸は、そもそも京都に創業し、寛保3年(1743)に江戸に進出、明治末期までは日本橋にあった。ひところは越後屋(三越)や白木屋を抜いて、ここが日本橋の文化、繁盛地の中心点だった」p141
    「堀留町界隈は、さきの戦争末期の東京大空襲をまぬがれたところだ。大門通りの東側は、横山町、大伝馬町、富沢町などみな焼けたが、西側は人形町、芳町、小舟町などと、昭和通りのむこうの本町まで焼け残った」p146
    「(小伝馬町)牢屋敷の跡地(処刑場)はながらく更地のまま、人はここを「牢屋の原」と呼んだ。当初はタダでも貰い手がつかなかった。ここを、大倉喜八郎と安田善次郎がもらった、と「中央区三十年史」に書いてあるからそうでしょう」p150
    「(斬首)幕末の開国このかた、到来する欧米人たちに残酷と非難され、明治新政府によって廃止されたが、西洋だって中世には、城門に首をいくつもぶら下げて、みせしめにしていた。十字架もギロチンも、あちらが本場だ。人類のすることには共通性があるもので、地域差や時間差で野蛮とか文明とかいう」p158
    「(小伝馬町の牢獄)ここは地獄の一丁目で二丁目のない所だ(入ったら首をはねられるまで出られない)」p161
    「(お化けが怖い)「男の子だぞ」「兵隊さんになれないわよ」」p219
    「先生は、新聞に載った兵隊さんの手記の切り抜きを教室にもってきて、授業時間をさいてぼくらに読んで聞かせ、ときどき感涙をもよおして絶句した」p227
    「(千人力)千の升目を描いた布の上に、千人の男がひとりずつ「力」という字を書く」p231
    「パン屋の太ったおばさんは、薄い紙袋の口をフッと一吹きふくらまして、品物を入れると、その口の両端をつまんで、袋ごとくるくるまわす。するともう袋の口はちゃんと閉じて、両端に小さな耳のようなトンガリができるのだ」p282

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著者プロフィール

1927年生まれ。東京・銀座西8丁目育ち。日本大学芸術学部卒業。大学在学中の52年、『江古田文学』掲載の「新東京感傷散歩」を花田清輝に認められ、53年に「新日本文学会」に入会。以後、小説、詩、俳句、評論、エッセイ、ルポルタージュなど多ジャンルにわたり文筆活動を行う。著書に『私のつづりかた』『東京骨灰紀行』『裸の大将一代記』『悲願千人斬の女』(以上、筑摩書房)、『俳句世がたり』(岩波書店)、『通り過ぎた人々』(みすず書房)、『捨身なひと』(晶文社)、『本の立ち話』(西田書店)などがある。

「2012年 『東京骨灰紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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