悪党どものお楽しみ (ちくま文庫 わ 12-1)

  • 筑摩書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480434296

感想・レビュー・書評

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  • ろくに読書なんてしていないけど、1月に読んだ本の中で一番楽しかった!!!!

    乗り換え駅の書店がたまたま10時まで営業していたので、暇つぶしになるものを買おうと思って手に取った短編集がこんなにヒットするなんて思わなかった。
    改心した元ギャンブラーがとあるイカサマを見破って、人助けをしたのがきっかけで、さながらホームズとワトソンのように持ち込まれたイカサマ案件を解決していくミステリ連作なんですけど、

    まだまだ25歳にもならないその元ギャンブラーは、ポーカーをしながら放蕩の旅をするんですけど、気が付けば懐かしき故郷に近づいていて、帰れば年老いた父が出迎え、早く家を出て行けといい、自分は居残りたいと、その権利を賭けてポーカーを一勝負する。自分の腕に自信のあるビルは当然、何食わぬ顔でいかさまをしようとするんだけど、できず、負け、反面すっきりした気持ちで「出ていくよ」と父に別れを告げると父は正直者であった息子を家に受けいれるわけなんですけどつまりなにが言いたいかというと父と息子なんですよ。

    そういうバックボーンを最初の物語で前提として知りながら、ビルがある一人のとてつもないお人よしのクラグホーンとともにイカサマによって大損した人を手助けしたりする人間模様を思わず、1日1話と久しぶりにゆっくりわくわく楽しみながら読んでしまった。

  • 改心した元ギャンブラーのビルは、現在は田舎で農夫として堅実な生活を送っている。その親友、都会育ちのお調子者トニーは毎度、ギャンブル絡みのトラブルに巻き込まれ、ビルに何とかしてくれと泣きつく始末。ビルは過去の経験を生かして凄腕いかさま師と対決し、巧妙なトリックを暴いていくユーモア・ミステリ連作集。

    パーシヴァル・ワイルドは劇作家でヴォードヴィル作品を数多く手がけていただけあって、1920年代のアメリカ(禁酒法、ジャズが流行しギャングが夜の帝王として街を支配していた時代)を舞台に、コメディタッチでギャンブルに興じる人々のドラマを描くさじ加減が絶妙ですね。
    話の大枠が毎回、トラブルに巻き込まれる→泣きつく→何が行われているのか調査→解決 のパターンなのでこの連作短編、続けて読むと飽きちゃいますから、毎日1作ずつ海外ドラマを楽しむ気持ちで読むのがちょうど良かったです。

    正義感溢れるけどお調子者のトニーと、それより年下なのに過去の経験から老成しているビルの組合せが、ワトソンとホームズというより、どちらかというとウッドハウス作品に近い(バーティーとジーヴスですね)感じで大変好みでした。ポーカーの際のギャンブラーとの心理戦の描写とか面白かった。

  • アメリカ文学で好きなのはフィツジェラルド、ヘミングウェイ、フォークナーらアメリカ好景気の1920年代、ロストジェネレーションの小説だ。その空気感が自分の若い頃のそれに似てるからだろうか。カードゲームの詐欺といえばPニューマンとRレッドフォードの映画「スティング」だが、あれは金融恐慌後の30年代シカゴでギャングの親分を騙す話だが20年代は上流階級の資本家が集まる会員制クラブでカードゲームが行われていた。「悪党どものお楽しみ」は元ギャンブラーで裕福だが農夫をしているビルが友人トニーの持ってくるクラブでのインチキ疑惑話に乗り出して詐欺師たちのトリックを暴いていく20年代の有名な連作ミステリ。カード賭博という条件の中で行われる盲点を突くトリックは現代エンタメ小説にはないシンプルさゆえに登場人物や空気感が短編なのに十分に描かれている。時代劇で出てくる丁半の鉄火場や現代のオレオレ詐欺的なダサい詐欺と違ってカッコよく感じるのな他所の国だからだろうか。

  • 『娯楽』★★★★☆ 8
    【詩情】★★★☆☆ 9
    【整合】★★★★☆ 12
    『意外』★★★☆☆ 6
    「人物」★★★★☆ 4
    「可読」★★★☆☆ 3
    「作家」★★★★☆ 4
    【尖鋭】★★★★☆ 12
    『奥行』★★★☆☆ 6
    『印象』★★★☆☆ 6

    《総合》70 B-

  • 時は禁酒法時代のアメリカ。
    若気の至りで18歳で家を飛び出し、6年間カード賭博師としてアメリカ各地を放浪しながらで生活していたビル・パームリーは、ひょんなことから生家のある町に戻り、敬虔なキリスト教徒である父親と再会。一目見でビルの放蕩生活を見抜いた父親は、カードでの勝負を持ちかける。

    「勝ったら家に戻っていい。負けたら出ていけ」

    賭博師として生きていたビルは、負けるはずはないと内心小躍りしながら父親との勝負に挑む。しかし、なぜか彼が磨いてきたイカサマの技術を発揮することができず、ついには…。

    というのが第一話。
    この後に続くすべての物語のイントロとなるこの第一話だけは、ミステリー要素がほとんどなく、まさにプロローグ。しかし、ただのイントロに終わらせず、最後にしっかりとビルがなぜ自らの技術を披露できなかったのか、というオチが示されるのが面白い。

    それ以降の短編では、賭博師家業から足を洗い真面目な農夫として生活を送ることになったビル。しかし、とある偶然から知り合ったお調子者のトニー・クラグホーンに頼まれたり泣きつかれたり焚きつけられたりして、各地であくどく稼ぐイカサマ賭博師たちのインチキを暴く探偵役を演じる羽目になる。時に不本意ながら、時に自ら進んで、様々なインチキを見抜き、賭博師たちを破滅させていくビルの活躍と、それをただただ称賛するだけの凡人トニーの対照が面白い。

    トニーはビルよりも年上ながら、ギャンブルに目がなく、そのうえトラブルに自ら足を突っ込んではビルにすがっていくという、なかなかダメなタイプの大人。しかし、禁酒法時代のギャンブル全盛のアメリカではこの手のタイプの男性は結構いたのではないだろうか。

    他の方もレビューで書いているが、頼りなくて自惚れ屋で成人男性としてはどうしようもないが根は善人の凡人と、それを助ける頭脳明晰で冷静沈着な天才というコンビは、ドイルのホームズ&ワトソンやクリスティのポワロ&ヘイスティングズというよりも、ウッドハウスのジーブズ&バーティに近い。どの短編も基本的な展開は似ている(トラブル起きる→トニー泣きつく→ビル登壇→解決!)ので、読み慣れてくると水戸黄門的な雰囲気で安心して読んでいけるのも良いところ。

    この著者はあまり多くの作品を遺していないようではあるが、こんな短編が書けるようならほかの作品も面白いはず。今度は別の作品も読んでみたい。

  • いい塩梅の軽いミステリ

  • シャーロックホームズ、ギャンブル版。
    トニーは間抜けだし、ジムはクレバーだし。ポーカーのルールがすこしでもわかってれば楽しい。

    乾いた、かつ読みやすい文体も好き。

  • 2017/03/29読了

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