- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480438928
作品紹介・あらすじ
統一教会・原理研究会・勝共連合の実態、活動の背景など、今に続く問題を取り上げ1970年代にいち早く警鐘を鳴らした歴史的名著。解説 有田芳生
感想・レビュー・書評
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茶本繁正『原理運動の研究』ちくま文庫。
統一教会、原理研究会、勝共連合という所謂ヤバい団体に対して、いち早く警鐘を鳴らした1977年刊行の歴史的名著の文庫化。
世界の各国がカルト団体に指定している統一教会が何故か日本では野放しにされているというおかしな状況である。しかも、何時の間にか公安のマークも外され、団体名も統一教会から世界平和統一家庭連合と変わり、密かに多くの政治家たちの選挙支援をしていたという恐ろしい事実。そして、その事実にマスコミは一切触れて来なかったというのもおかしい。
日本を揺るがした元首相の銃撃暗殺事件により注目を集めた統一教会の日本での活動の歴史は60年以上も前に遡ると言う。統一教会は1970年代から強引な勧誘や募金、桜田の壺で有名な高額で怪しげな物品販売で資金を集めていた。
自分が学生の頃、創価学会の第三文明研究会と統一教会の原理研究会には近付くなと言われていた。新入生が入学する頃、大学のキャンパスには部活の勧誘と共にやたら親しげに話し掛ける学生が第三文明研究会や原理研究会といった怪しげな会に勧誘するビラが配っていたのを覚えている。
統一教会は日本に上陸するや反共活動と手を組み、日本のフィクサーと呼ばれる人物たちの後ろ盾で政治の中枢とも結び付いていくのだ。何故か公安のマークが外された後も統一教会の暗躍は続く。その中の一つが政治家への選挙支援である。政治家は選挙支援の見返りに旧統一教会の会合に顔を出したり、メッセージを送ったりと統一教会の存在を正当化していたのだ。それが元首相の銃撃暗殺事件へとつながる。
現代は、本著が刊行された1977年よりもさらにヤバい時代のようだ。一体、誰が、何が正しいのか解らなくなった混迷の時代。政治には期待出来ず、明るい未来を見出だせず、自然災害と隣国の共産国からの攻撃に怯えるだけの時代。政権を担うのが旧統一教会を後ろ盾にする自民党と創価学会を後ろ盾にする公明党の連合政権という恐ろしさ。
旧統一教会も創価学会も教祖による異状な集金システムが稼働している点ではその本質は変わらない。
岸田は旧統一教会に解散命令を出すとか言っているが、出さないという公算の方が強い。旧統一教会の支援が無ければ、自民党議員の大半が落選するのは目に見えている。従って、解散命令を出したとしても形式だけに過ぎないように思う。
本体価格840円
★★★★詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
予約。
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旧統一教会研究の古典。
有田芳生による解説が本書の書かれた時代から現在までを射程に入れて述べられておりよかった。 -
2023年10月読了。
1977年に出版されたものを再編集して文庫化した図書。話題でもあるので経緯を知るための参考として読んだ。
43ページ
笹川良一は全日本空手道連盟の会長だったことがある。笹川と空手の団体、なんだろうねこの相性の良さは。
85ページ
かつて台湾では原理運動を厳しく取り締まられた。「反共」のメリットを差し置いてでも原理運動の反社性を見ての措置であったならば慧眼と言えるだろうが、現在の台湾では原理運動や統一教会問題はどう取り扱われているのだろう。
99ページ
「血分け運動」についての記載。悍ましいので詳述は避けるがこういうものが広まってしまうのはある種のストックホルム症候群のようなものか。
104ページ
文鮮明40歳、韓鶴子19歳の1960年に結婚。文は4度目の結婚。何度結婚しようが自由だが奇怪な人物とは言えそうだ。
111ページ
明治神宮内に統一教会の「聖地」がある(あった?)という奇異な現象。どういう発想で他の信仰の拠点を自分たちの聖地に指定できるのか、俄かには理解しがたい。
114ページ
「原理運動き入る学生のタイプをみると、過激派をふくめた左翼学生運動に参加することもできず、といってノンポリでいることもできない、なにか人生に指標をもとめ、社会に矛盾を感じているという、ひとくちでいえば平凡で〝純情〟な学生が多いといわれる。
121ページ
金満体質の文・韓夫妻の生活(ニューヨーク郊外に私邸等)と人参茶などを売り歩いてボロ雑巾のように成り果てる一般信者の対比的に見るにつけ、こんなインチキ「宗教」が正義であるはずがないと思わざるを得ない。
129ページ
一連の報道で既に広く知れ渡っていると思うが、原理研、統一教会、勝共連合は同根の組織であり、原理研は理論の研修組織体、統一教会は宗教法人、勝共連合は統一教会を母胎とした政治団体。恐ろしいのはこんな宗教カルト団体が時の政権与党内に長年にわたってガッツリ食い込んでいてそれが長年にわたって批判されることもなく有形無形の支援をする/される関係性にあったということ。
145ページ
何故「合同結婚するのか」の理論的説明。到底理解できる範疇を超えている。
204ページ
「統一グループ」とでもいうべき企業コングロマリットについての記載。他方で他の宗教団体も細かく見れば多かれ少なかれある種の「経済ブロック」を築いているのだろう。問題はそれに自覚的であるか否か。
244ページ
当時の現役の首相や首相経験者、右翼の大立者、右翼界隈の政治家、神社本庁、自衛隊関連団体が挙って統一教会の主催する会議体を支援していた。現役の政治家からすれば本当に「昔からそうだったから」懇ろな関係性を維持してきたし、別に何が問題なのかも理解できないのだろう。
248ページ
日韓双方の癒着問題とも言える。
260ページ
著者による結びとして、「国際的に問題化している統一協会の活動について、日本人も関係ありとうたがわれているにもかかわらず、政府当局の取り組みはきわめて弛緩している。反共であればなんでもいいという政府与党の態度は、野合というよりは犯罪的である。私はそこに限りなく腐敗した自民党の病根を見る思いがする。」
解散命令請求が出て(2023年10月)新たな展開を迎えつつあるが、無関心を装う人が多ければ多い程、この問題は根絶されずに次世代に引き渡されてしまうように思う。