戦国乱世を生きる力 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480510303

作品紹介・あらすじ

土一揆から宗教、天下人の在り方まで、この時代の現象はすべて民衆の姿と切り離せない。「乱世の真の主役としての民衆」を焦点とした戦国時代史。

感想・レビュー・書評

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  •  戦国時代というと、やはり信長、信玄、謙信といった戦国の英雄に目が奪われがちであるが、本書は、戦乱に逃げ惑った民衆が、乱世の真の主役ではなかったかとの問題関心の下に、戦国時代の様相を叙述したものである。

     第一章では、徳政を求める土一揆が起きる背景や、参加者がどのような者たちだったのか、流民や足軽との共通性が指摘される。第二章では、様々な争いに巻き込まれるおそれのあった村が、どのようにして平和を維持しようとしたのか、意外にも過去の遺物のように思われる本所の公家や僧侶の権威を頼ったことを、例を上げて明らかにする。
     第三章では、この時代においても、将軍が京都住民の保護に任ずる責務を負っていたこと、地方ではそれが戦国大名の役割であったことから、将軍と戦国大名とが「天下」と「国家」とを棲み分けて支配するのが、戦国時代の支配体制の枠組みであるとする。

     第四章、第五章は、宗教について論じられる。一向一揆や信長との対立・抗争といった史実は知っていても、詳しいことは知らなかったので、この箇所は非常に興味深かった。
     第六章、第七章は、信長の入京から天下統一への道行きについて。信長の示した天下布武の「天下」とはどの範囲を指していたのか、比叡山焼討ちや本願寺との争いに見られるように、信長は仏教を弾圧したのか、さらには安土宗論について、その意義は自力救済の禁止ということに本義があったのではないかなど、現在ではかなり有力となった見方が、詳しく説明されている。

     戦国大名がその支配する民衆に平和の回復をアピールしたこと、乱世に創り上げた村や町の自治体制も、近世社会の枠組みの原型として存続したことなどについて、本書全体を通して著者は解き明かしていく。
     歴史の表舞台に華々しく登場することこそないが重要な役割を担っていた民衆の姿を描こうとした著者の試みは、成功しているのではないだろうか。通読しての感想である。

  • 東2法経図・6F開架:210.47A/Ka51s//K

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著者プロフィール

神田千里(かんだ・ちさと)
1949年東京都生まれ。東京大学文学部卒、1983年同大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本中世史専攻。高知大学人文学部教授、東洋大学文学部教授を経て東洋大学名誉教授。主な著書に『織田信長』(ちくま新書)、『島原の乱――キリシタン信仰と武装蜂起』(講談社学術文庫)、『一向一揆と石山合戦』(吉川弘文館)、『宗教で読む戦国時代』(講談社選書メチエ)、『戦国と宗教』(岩波新書)、『顕如』(ミネルヴァ日本評伝選)など多数がある。

「2021年 『戦国乱世を生きる力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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