- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480510440
作品紹介・あらすじ
キリスト教史の最初の一世紀は、幾つもの転回点を持つ不安定な時代であった。この宗教が自らの独自性を発見した様子を歴史の中で鮮やかに描く。
感想・レビュー・書評
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本屋で見かけて購入。まあまあ面白かった。
初期のキリスト教信者のうち、ギリシャ語を使うヘレニスト・グループの活発な活動の結果、キリスト教の進展がセム的なオリエントの方にではなくローマ帝国方向に向けて広がったと主張している。でもなぜ他グループでなくヘレニストの影響だけを受けたのかは説明されず、ちょっと物足りないか。
聖書の使徒行伝6章の「ステファノたち7人の選出」のくだりは単なる選出ではなくヘレニスト・グループの分離独立であると説明していて、聖書を記述通り読むのではなく歴史史料として読んでいるのが新鮮。
新約聖書の各書が話の流れに関連してさりげなく解説され、最終的に全体が解説されるようになっているのも良い。記述方式に特徴があることも知らなかったし、作成者や作成時期が案外分かっていないのも意外だった。
注記されている聖書を参照しながら読まないとよく分からないので、電車など外出先で読む用には不適。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ちくま学芸文庫で、原始キリスト教関連書が続いていますが、こちらも面白い。
ヤコブの殺害、パウロの敗北、そして、エルサレムの陥落によって、息の根も絶え絶えになってしまったキリスト教が、パウロの後継者たちの反撃(ルカの福音書と使徒行伝)によって、息を吹き返し、ユダヤ教とは全く別の宗教として歩み始める。新約聖書の成り立ちを、周辺の歴史から解きほぐしていく手立ては、今まで思いもよらなかったけれども、とても腑に落ちる。「反撃の文書」とみると、新約聖書って、なかなかスリリングな書物になりますよね。