- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480510907
作品紹介・あらすじ
ジェンダー、反ユダヤ主義、地方性……。19世紀絵画を、形式のみならず作品を取り巻く政治的関係から読み解く。美術史のあり方をも問うた名著。
感想・レビュー・書評
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非常に刺激的な美術史研究書。
フォーマリズム(形式主義)が主要な規範となり、芸術から余計な主題を取り除くことに美術研究の主流がなっていたのに対し、著者は作品を社会的・政治的関係から読み解いていこうとする。⇨Politics
それを著者は、「美術史を"他者性"の視点から考える」と表現している。
各論文の概要や取り上げるに至った背景等については序文にかなり詳しく触れられているので、本文を読むのに参考となる。
オリエンタリズム、挿絵などの大衆芸術、まなざしの客体の女性モデル、反ユダヤ主義などの「政治」性が鋭く解き明かされていく。
クールベ、マネ、ピサロ、ゴッホ、ドガ、スーラといった大家の作品に対しても、大変刺激的な新たな視点からの読みがなされるし、従来の美術史の規範性に対する問い直しも行われる。
本書で取り上げられた作品を改めて見たくなった。 -
美術作品の裏側のストーリーをさらっている感じで、面白いっちゃ面白かったんだけど、各章の繋がりや全体のストーリーみたいなものは感じにくくて微妙に読み進め辛く感じました(ので、3)。
エドガー・ドガが反ユダヤ主義者だったという話は当方不勉強で今回初知りだったので結構ショックを受けたし、こういう思想が表出することを「結晶化」と表現していたこと、ドガにおいてはその家柄とも関連していたというのはなるほどと思いつつ、親しい友人を政治思想で失うような世界観ってリモートなようで、昨今話題の新興宗教やサロン運営を行う団体を思い起こすと自分の身にも起こる話だなと思ったりはした。
それから、植民地支配の暗い部分は絵画で描かれにくかったという点、よくよく胸に留めておこうと思いました。 -
美術館では絵画ごとのキャプションと、有名な画家ならその人についての説明などに接することができる。それも絵画鑑賞の一面ではあるし、気楽に絵画を楽しむには十分だと思っているけれど、この本のような深掘りもまた違った視点や感想を与えてくれる。
それと絵画として私たちの前に見えているのは、本当に画家たちの一部(最表面)だけなんだとつくづく思う。その作品ができるまでに積み上げられた経験・知識・思想が、技術以上に隠れている。 -
N区図書館
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絵画を芸術ではなく政治学(日本語の表現としては「社会学」の方が近いのでは)の観点から見る。踊り子によって人のフォルムや動きの表現を追求したドガが、ドレフェス事件によって仲間の画家や親しい知人とも疎遠になるほど半ユダヤだったとは知らなかった。光や色彩を追求したゴッホだが、初期作の貧しい農民などを描いた作品を見れば、社会問題を題材としたルポルタージュの挿絵画家ルヌアールを敬愛していたのは納得。スーラのグランド・ジャット島が「反ユートピア」は面白かった。
画家の周囲には同時代の政治や社会があり、その中から生まれでているのだが、つい純粋に芸術的な存在として見てしまいがち。
オリエンタリズムの絵画のオダリスク、マネのオペラ座の仮面舞踏会などで触れられてはいるが、フェミニズム色は薄い。フェミニズムの論客ならそちらの切り口での美術史も読んでみたい。 -
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