文天祥 (ちくま学芸文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480511232

作品紹介・あらすじ

モンゴル軍の入寇に対し敢然と挙兵した文天祥。宋王朝に忠義を捧げ、刑場に果てた生涯を、宋代史研究の泰斗が厚い実証とともに活写する。解説 小島毅

感想・レビュー・書評

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  • 戦前は忠君の代名詞とされ、良いように利用された感があるが、実感として、良くも悪くも試験秀才の人。確かにすぐ裏切る節操のない人より、好感は持てるが、戦乱の世では生きにくい人という印象。

  • 陳舜臣の「中国の歴史」にも崖(やまかんむりはない)山悲歌と正気の歌の二章を割いて文天祥を書いているが、著者との違いが面白い。

    著者は文天祥を忠君愛国なドン・キホーテと見るのに対して、陳は悲劇の英雄と見る。この違いは研究者か作家か、という違いからなのか。日本人と華人、或いは片や昭和九年生まれの国民学校卒業(国民学校教育の反動として)、片や大正十三年生まれの神戸華僑という境遇の違いからか。

    自分は著者の見解に同する。不遇なインテリが科挙主席という一点を拠り所として国家と己が滅びゆく中で気骨を見せた、という印象である。

    喜久屋書店阿倍野店にて購入。

  • 忠臣のアイコンというべき人物の評伝。元に降った高位高官が数多いる中、科挙首席の宰相が最後まで筋を通し刑死した、そんな生き様に価値や感動を覚える、人々が普遍的に待つ詩情こそが、彼の名を不朽のものにした。逆に言えば、文天祥という人は己が心情を文章に遺した以外特筆すべき事績が無く、宋朝復興の抵抗運動はすべて空回っている(ドンキホーテという単語が文中にもある)。理屈を超えたところにある、人物の評価というものを感じた。本書は科挙の成り立ちや仕組み、宋末の社会情勢などにも筆が及び、むしろこちらの方が読みどころだったように思う。

  • 国家に殉じた忠臣の鑑として喧伝され後世の権力者に利用された文天祥の生涯を小説のような筆致で記述され興味深く読める。科挙に及第して状元となり、その優秀さ・真なる儒教的道徳心ゆえに中央官界では不遇となる中でモンゴル帝国の侵攻にあい、北への連行からの脱出劇をへて抵抗軍活動を行うも中央からはなおも冷遇され囚われの身となり、幾度ものフビライの重用勧誘に応じず命を落としたその時々の状況がスペクタクルに描写されているが、これらは単なる空想ではなく文天祥本人が編纂した詩文集や同時代に近い史料を多く博捜した著者だからこそと言える。これは忠君愛国者と理解・利用された虚像よりも真に迫るものだと思う。

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著者プロフィール

梅原郁(うめはら・かおる):1934-2020年。京都市生まれ。1957年京都大学文学部史学科東洋史学卒業。62年同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学名誉教授。文学博士。専門は中国宋代史、法制・制度史。著訳書に『宋代官僚制度研究』(同朋舎出版)、『宋代司法制度研究』(創文社、日本学士院賞)、沈括『夢溪筆談』(平凡社東洋文庫)、朱熹編『宋名臣言行録』(ちくま学芸文庫)など。

「2022年 『文天祥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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