市場って何だろう (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683243

作品紹介・あらすじ

自立のための様々な依存先を提供しうる市場という頼れる存在。市場をゲーム理論で読み解きながらそのあり方・可能性を考えてみる。

感想・レビュー・書評

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  • とらえにくい内容もわかりやすい例えで話されててなるほどなあーと。書いた人頭いいんだろな…
    後半はちょっと退屈だったかも。比較優位の話が面白かった。同じ仕事をしているのに日本にいるから高い賃金がもらえる、ってのは確かに不自然な状況で、今後それが是正されたら結果的に日本人の暮らしは苦しくなるのかなあ…

  • 著者は東京大学大学院経済学研究科の松井教授。世界的な業績をあげているゲーム理論の大家である。
    本書の前半では市場の特性や市場の失敗について主にゲーム理論を用いて説明し、後半では氏の後半生のライフワークとなっている差別や障害への取り組みについて述べられている。

    本書の前半と後半でガラリと内容が変わる。後半は後半で興味深いテーマであり、最終的にはサブタイトルの「自立と依存の経済学」に繋がるものの、当初イメージしていた内容とは異なるものであった。差別や障害にかかる問題への経済学・ゲーム理論の応用についての入門書と考えて読み始めると良い。
    本書では市場の仕組みについてもう少し詳細に語っていただき、差別と障害については別書籍でじっくり読みたいと感じた。

  • 331-M
    閲覧新書

  • 面白い。しかし中学の授業に使うには少々距離がある(か?)。
    導入の話題にしたいものはたくさん。(イラストは便利)

    なめとこやまの熊さん、すごくよく見かける話なのに読んだことがない(どこで見かけたのかが思い出せない)。
    エンデとか賢治とか。読まなくちゃいけない(現代の古典としてのおとぎ話。)反省する。(去年はようやくモモとホームズを読んだ。)

    自立とは依存先を増やすこと、というテーゼもこの半年で3回くらい耳にした(多分ライフか、荻上チキ。)インカーヴのこともSessionで触れられていた。この一年、読むものと聞くものと、それに教えることと、世界がつながってくる感じがして楽しい。

  • ゲームの理論の第一人者が「市場」について平易に語る1冊。前半では我々の生活の根幹に存在する市場について、具体的かつ総論的な記載があり、後半では、差別や障害者と市場と言ったテーマが語られます。後半はあまり考えたことがなかった視点で、新鮮でした。

  • 市場は依存先=選択肢を与えるところ。自立につながる。

    所属型と契約型。芸能界のような所属型は競争環境=市場が存在しない。村八分は、村から出るコストがかかる場合にのみ有効な手段。小林幸子やスマップは、インターネットで既存のシステムを揺るがした。

    眼鏡の増永の社是「良い眼鏡を作る。出来れば利益を得たいが、損をしてもよい眼鏡を作る。」

    要素価格均等化定理=労働や資本などの価格は国際価格に均等化する。国内の外国人労働者を帰したとしても、輸入が増えるから賃金は上がらない。

    「大脱出」平均寿命はGDPよりも社会平均の豊かさを表す。一人当たりGDPとの相関が高い。

    和辻哲郎「風土」

    ゲーム理論は個人対個人、と市場理論は市場対個人。
    石油製品の規制緩和議論=チキンゲーム。ナッシュ均衡が二つ存在する。

    インフレ率を民間の予測より少し高くするのが望ましい。中央銀行を独立させているのはインフレの鎮静化に役立っている。

    有期雇用の無期転換制度は、空白期間を設けることでリセットされる。
    正規と非正規の扱いを米国のようにするか、欧米のようにするか。再雇用市場がないと成り立たない。欧米のようにすると若年失業率が増大する。

    独裁者の一人勝ちもパレード効率的。公平性の概念を持たない。所得の再配分で補うしか方法がない。

    ドイツは開業医を定員制にしているので、医師の偏在が問題にならない。教師や警察官と同じ。
    マッチング制度が有用。

    宮沢賢治「洞熊学校を卒業した三人」「なめとこ山の熊」「猫の事務所」

    サッカーは引き分けの利点を減らすため、勝ったときの勝ち点を2から3にした。

    ディミアントンプソン「依存症ビジネス」依存症の罠に気づくこと。
    「銀行は裸の王様である」総資本に対して20~30%の自己資本を持つように義務づける。
    マクミラン「市場を創る」周波数オークションで市場ができた。入札は勝者への呪いが起きる。

    談合は短期的には利益があるが、長期的には参入が増えて談合に頼らざるを得なくなる。

    新日鉄と住金の合併は、国内シェアではなく海外シェアを見ると独占力はないから。規模の経済性の追及を許した。

    難病の患者の医療費は患者数が少ないので割合は低い。慢性疾患のほうが患者数が多いので多い。

    ゲイリーベッカーは差別的行動をとれば市場から駆逐されるので、偏見はあっても差別はない偽善者になるので差別はなくなる、とした。
    ケネスアローは、統計的差別によって差別が継続するとした。

    少数派は分断の恐怖ゆえに弱体化と互いの不信感を呼び起こすことになる。
    専業主婦、長期雇用は継続したほうが有利という限られた経験のなせる業である。

    自立は依存の対極。市場がないと自立できない。

    二宮尊徳「道徳なき経済は犯罪であり、経済無き道徳は寝言である」

    内館牧子「終わった人」

  • 参照してた熊谷氏の「依存先が十分な確保されて、特定の何かに依存している気がしない状態が自立だ」(162ページ)という「自立」の定義は新鮮であった。

    著者としては、市場ってそんなに悪いもんじゃないよと言いたい部分はあったのかもしれない。でも、それよりも、ひとつのものに依存することは避けて様々なつながりを持つことで自立していけるというのが一番の主張のように思えた。市場一辺倒でも制度への依存でもなく。。。

    あと、熊谷氏の著作を読んでみたいと思った。。。

  • 日常生活からイメージしやすい題材を用いて書かれた本ではあるものの、なかなか骨太な一冊。

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著者プロフィール

1962年生まれ。日本経済学会会長、東京大学経済学研究科副研究科長在任中に心サルコイドーシスにより入院、障害者手帳を取得。エコノメトリック・ソサエティ・フェロー(終身特別会員)。著書に『市場(スーク)の中の女の子』(2004年、PHP)、『高校生からのゲーム理論』(2010年、ちくまプリマー新書)など。

「2022年 『マイノリティだと思っていたらマジョリティだった件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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