20世紀をつくった経済学: シュンペーター、ハイエク、ケインズ (ちくまプリマー新書 172)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480688736

作品紹介・あらすじ

二十世紀をつくったと言われる経済学者たちは何をどう考えたのか。自由主義とは何か?社会主義とは何か?不況はなぜ起きるのか?経済学者たちが考え、苦闘した思想の痕をたどりながら、二十一世紀を生きる私たちに、資本主義の本質を問いなおす。

感想・レビュー・書評

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  • 『本の紹介』
    「20世紀を作ったと言われる経済学者たちは何をどう考えたか。その苦闘の痕を辿り、今世紀を生きる私たちに資本主義の本質を問う」

    『司書日記』
    今日は3年生男子がフラッと、という感じで図書室に入ってきました。
    「今日、授業で使いますか?」と聞くので
    「3、4時間目に少し生徒が来るかもしれないけど、少人数やから大丈夫」と言うと、図書室にて昼休みまで過ごすことに。
    本校の教育課程は3コースに分かれています。
    その中の1コースは男子生徒が少なく、体育の授業は2年生と3年生男子が合同で行っています。
    体育の先生が、来れたら来てあげてほしい、と言う旨のことをおっしゃったようです。
    で、その3年生男子は、今日の1時間目、2年生男子のために体育の授業を一緒に受けるために来たようです。
    今、教習所に通っているようで、それと重ならない時は来ると言っていました。
    お礼にいつも体育の先生が学食でお昼をご馳走してくれるそうです。前回カレーを食べたと言ってましたので、今日は、と聞きますと「カレー」と笑いながら言っていました。
    カレーが好きなのだそうです。
    2年生男子のために来るこの生徒も優しいですが、それを頼む体育の先生も優しいです。
    お昼休み、仲の良い後輩と閲覧室でニコニコと談笑してから帰っていきました。
    *3年生はもう最後の定期テストが終了し、卒業式まで休みです。

  • シュンペーター、ハイエク、ケインズを中心に、経済の概略を説明している。やや難解な箇所も見られるが、比較的時間をかけずに読むことができる。本書を読んで、より3人の考え方を深く知りたいと思えるようになる。歴史的名著から思考を整理したい。

  • 根井雅弘著「20世紀をつくった経済学 シュンペーター、ハイエク、ケインズ」(2011)
    「シュンペーター」
    *シュンペータは、若き日に出会ったワルラスの一般均衡理論を晩年に至まで極めて高く評価しました。「均衡」という概念はもともと物理学から借用してきた概念ですが、ワルラスは経済学がいつの日にか物理学に並ぶような科学となるような夢を持ち続けていました。初期のシュンペーターも同様ですが、ワルラスには重大な欠点が一つある事に気がついていました。それはワルラスの一般均衡理論を応用して静態(産出量の変化がなく、生産・消費・交換などの経済数量がつねに同じ規模で循環しているような状態)の問題を解明する事ができるが、経済数量が変化し、資本蓄積や技術革新が生じるような動態の問題の前にはそれは無力であるということです。
    *「静態」から「動態」の世界み切り込むためにはシュンペーターは「単に外的諸要因に依存しないで経済体系を一つの均衡からもう一つの均衡へ推進させるのを説明する経済変化の純粋理論が不可欠」だと認識したとき、頭の中にはマルクス(資本論)の壮大なビジョンのことがうかんできました。それは利潤獲得の衝動に駆り立てられた資本家が絶え間ない技術革新とさらなる資本蓄積に励みながら資本主義経済を動態的に進行させる過程を分析していましたが、シュンペーターはマルクスの経済理論(労働価値説や労働者の絶対的窮乏化)は受け入れなかったものの、このような資本主義経済についての動態的ビジョンからは大きな影響を受けました。この問題を徹底的に考え抜いた末に彼が到達した結論はそれは企業者による新結合(のちにイノベーションとよばれる)でした。
    *シュンペーターのいう新結合(イノベーション)とは、(1)新しい財貨の生産、(2)新しい生産方法の導入、(3)新しい販路の開拓、(4)原料あるいは半製品のあたらしい供給源の獲得、(5)新しい組織の実現、と広い意味をさしています。(現在、技術革新という訳語をあてはめる人がいますが彼らは(1)&(2)くらいです)
    *イノベーションの非連続性の強調は、静態から動態の世界に移るためには1つの大きな飛躍が必要ですが、ケインズの師匠であり英米の学会に法王のごとく君臨していたマーシャルに対する対抗心があったにちがいないと考えられます。なぜならマーシャルのモットーは「自然は飛躍せず」という言葉であり、マーシャルは経済発展は連続的な過程であることを強調していたためです。
    *経済発展の理論では、静態に始まり、好況と不況を経て新たな静態に達した所で、1つの景気循環(ビジネスサイクル)は完了しますが、留意しなければならないのは、シュンペーター独自の不況感です。彼は、不況はイノベーションによって創り出された新事態に対する経済体系の正常な適応過程としてとらえています。これに対して、ケインズの経済学では不況は有効需要(実際の購買力に裏付けられた需要のことで、国内に限れば消費需要と投資需要の合計)の不足によって生じるので、不況対策として消費や投資を増やすような政策(例えば、減税、低金利、公共投資)などが要求されます。現在は、実際の景気の動きをみるにはケインズ経済学の考え方に従う方が常識になっていますが、それだけにシュンペーターの不況観の特徴が浮き上がってきます。
    *シュンペーターは企業者をどう気づける第一として私的帝国をまた必ずしも必然的ではないが、多くの場合に自己の王朝を建設しようとする夢想と意思をあげています。第二と第三は勝利者意思と創造の喜びです。この思想は、ニーチェ的な英雄主義の世界に近づいています。

    「その他(マルクス)」
    *社会主義という言葉をきくと、自動的にマルクスの名前を思い浮かべますが、次の点に留意が必要です。マルクスの資本論は、資本主義崩壊の客観的な論理を提示し、世界中の社会主義運動に大きな影響を与えた事は事実ですが、マルクスは、いざ社会主義国家が樹立されたとき、どのような経済運営をすれば良いかについては、なにも語っていません。

    「ハイエク
    *ハイエクは「知識」というとき、科学的知識ばかりを偏重する傾向があるが、我々の意思決定のためにもっとも重要なのは、組織され得ない膨大な知識、すなわち時と場所のそれぞれ特殊的な情況についての知識であると強調しています。そしてその知識は分散した形でしか存在しないため、中央計画当局が収集する統計の中には入りにくい事こそが問題の本質である。
    *ほとんどすべての人々の側にほぼ完全な知識が存在すると仮定し、問題nアプローチするわれわれの理論的習癖が価格メカニズムの真の機能に対してわれわれを多少なりとも盲目にして、価格のメカニズムの有効性を判断するのにむしろミスリーディングな基準を適用するように我々を導いている。
    *なぜ、社会主義が広まったかということに関しては、ハイエクは、社会主義に引かれるのは知識人が多い。知識人を知識人たらしめているのは、広い範囲の話題についていつでも話したり、書いたりできること、そして自分がはなしかける対象となる人々よりも早く新しい考え方にに触れる事ができる地位や習性を有している事なのである。政府の再分配によって物質的平等をじつげんできるという思想は知識人が理論的に構築したものであり自制的に育った道徳観ではない。社会の秩序を計画的に設計できるとう思想は、自然科学の分野での成果を無批判的に社会に対して適用するという誤謬によってさらに強められていた。とりわけ過去100年のあいだに人類が自然の力を組織化する方法を学んだということが、社会の様々なことを自然の力と同様に管理すれば生活を同じように改善できるという信念を生み出すのに大きな役割を果たした。自然科学の分野での成果を誇りに感じている人々はそうした結論の虜になってしまう。しかし、制度、習慣、伝統などが長い進化の過程の中で形成されてきたものであれば、それらを計画的な設計によって用意につくるというのではなく、むしろそれらを尊重するような謙虚な態度で行う事が大切である。
    *ハイエクは個人主義(ほとんど自由主義と同義でしようされている)を「真」と「偽」の2種類に分けています。真の個人主義が「人間の諸事象にみられる大部分の秩序を諸個人の意図せざる結果として説明する」18世紀イギリスの思想家達(アダムスミスやヒューム)の流れをくんでいるのに対して、偽の個人主義は「発見できるすべての秩序が計画的設計による」と考えるヨーロッパ大陸のデカルト派の合理主義者的な流派だといっている。そして人間理性の限界を正しく認識していた真の個人主義によってのみ自由な社会は守られるのであり、後者は正反対の社会主義や全体主義をもたらし自由な社会を破壊する(真の個人主義と偽の個人主義より)。
    *ハイエクは生涯を通じて、アダムスミスやヒュームの時代の古典的な自由主義の再生を、逆に言えば、計画化は隷属への道であると主張し続けました。

    「ケインズ」
    *「一般理論」はいわゆる「自由放任主義」という経済哲学を終わりにして、資本主義の懸命な管理への道を開いた古典的名著ですが、「自由放任主」を経済問題の解決を「市場の自由な働きに全てをゆだねる」という意味にとらえると、アダムスミスからケインズに至るまでの歴史に残る経済学者の中で厳密に自由放任主義者と呼べる人はほとんどいません。なぜケインズのみが自由放任主義の終焉を宣言したかのように誤解されているのかと言えば、彼の著した同名のパンフレット「自由放任の終焉」(1926)があまりにも有名になったためです。この中でケインはマーシャルやアダムスミス、リカードなどの古典派と呼ばれる学者が決して自由放任主義者であったのではない事を正確に記してしますが、それにもあっ変わらず、「コジンッ主義自由放任こそが経済学者の教えるべき事であり、また、現に教えている事であるという一般的見解が支配的であったために裁量の経済学者の慎重で教条的でない態度は世の中に広まる事は至らなかった」と付言しています。
    *ケインズは古典派(アダムスミス、リカード、強いては師匠のマーシャル(普通は新古典派))とどこがちがうのかといえば「一般理論」以前の経済学が有効需要に焦点をあせていないという視点を強く打ち出しています。一般理論以前は、失業現象を基本的に労働市場の問題として解明してようとしました。財市場で価格が需要と供給を調整するように、労働市場では低賃金が労働に対する需要と供給を調整するだろうと。ケインズは、失業現象を労働市場の問題として取り扱うのではなく、舞台を財市場に映して社会全体の有効需要(実際の購買力に支えられた需要のこと)を問題として解明しようとしたことでした。
    *一般理論いおいては、マーシャルの意味での「短期」と外国貿易のない「封鎖経済」を想定しています。(マーシャル参考:短期においては、企業よりも消費者の主導権が強いが、長期になると消費者よりも企業の主導権が強まるが、需要曲線の傾きが急であると企業の利潤が現象する。)
    *ケインズは、ハイエクが固執した古典的な自由主義ではなく、政府による慎重な総需要管理を導入して大不況を取り除く事によってのみ、自由主義を保持する事が出来ると考えたという意味で、「習性された自由主義」の支持者でした。

    「著者のまとめ」
    *シュンペーターは企業者によるイノベーションの遂行が経済発展をもたらすという動態的ビジョンでしたが、自らの理論を経済の供給面に関わるものと理解していました。一方で、ケインズは短期の想定から有効需要の原理を引き出したケインズの静態的ビジョンとは相容れないものだと信じていました。
    *我が国の高度成長路線を突っ走っていた1960年代にはイノベーションに誘発されて民間設備投資が増大する一方で、有効需要の増大がイノベーションと促進するというように、ケインズの有効需要とシュンペーターのイノベーションが相互補完関係にあったことが知られています。ケインズは静態理論、シュンペーターは動態理論という理解ではこのような現象はとらえる事ができません。翻って、バブル崩壊のあと20年近くも長期停滞から脱する事ができずにいます。京都大学の吉川教授によれば、長期においても有効需要がイノベーションを牽引するという実証研究に基づいて「イノベーションと需要の好循環」こそが我が国の高度成長を実現したのだという視点を強調する研究者が現れ始めました。このような視点は、短期では需要面、長期では供給面が重要だと考えてきた現代経済学の思考法に反省を迫るものです。

  • 特にハイエクについて知識もなく関心も強くなかったのだが、個人主義、社会主義と期待していなかった点で思考を深めることが出来た。

  • 難しかったです。

  • サブタイトルに「シュンペーター、ハイエク、ケインズ」とあるので、それぞれについて詳細に書かれているのかと思ったら、ほとんどケインズ一色。
    後世へ影響という点でケインズを大きく扱うのは仕方ないにしても、構成がアンバランスで期待したものと違った。
    また、各人の経済学思想の違いをもっとはっきりと書いて欲しいと思った。

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著者プロフィール

1962年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。著作に、『今こそ読みたいガルブレイス』(集英社インターナショナル新書)、『英語原典で読むシュンペーター』(白水社)、『現代経済思想史講義』、『経済学者の勉強術』、『来るべき経済学のために』(橘木俊詔との共著)、『ブックガイド基本の30冊 経済学』(編著、以上四冊は人文書院)など多数。

「2021年 『16歳からの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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