弱虫でいいんだよ (ちくまプリマー新書 246)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689504

感想・レビュー・書評

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  • 弱さを考えることは強さを考えること。
    弱さにフォーカスするとそれが強さだったりする。
    ナマケモノの話や童話の話から弱さに着目していく。
    人間がピラミッド上の1番上であるかのような現代の考え方に疑問を感じさせてくれる本。
    競争に疲れた現代社会の人は読んでもいいかもしれない。
    読むと気付かされることが何かある本。

  • 娘が大学の講義の教科書として購入してた本を拝借。
    今までの競争で勝ち抜いて上を目指していく事の価値観について考えさせられた。何が強くて何が弱いのか、弱いことは悪いことなのか、色々な考え方を提供してくれる本だった。
    世界のさまざまな声なき声を聞く耳をもつこと、これを実践していこうと思う。

  • タイトルの「弱虫」というニュアンスとは少し違う。「弱虫」というと気の弱い考え方の克服の本なのかなと思うが、「弱さ」の価値をいろいろな視点で語る本。

    より競争社会、格差社会となっている現在。
    私も会社員なので、経済原理の価値観(売上、利益を出すものが偉い)は肌で感じているし、組織内での競争にもある意味巻き込まれていると思う。が、本質的にはその価値感についていけない自分がいて、息苦しく疲れ果てている。
    この本に書いてあるような話はその自分の息苦しさをほぐすための、考え方として役に立つ。

    強いものが勝ち、弱い者が負ける。弱い者は強い者よりも身分が低い。そんな画一的な価値観に異議を唱える本。

    オンリーワンでいいじゃないか、ゆっくり、急がず生きていけばいいじゃないか。と背中をおしてくれるような本。

    ちくまプリマー新書なので、青少年向けの本であるが、学校という規則がある社会の中、また、学内カーストなどと暗黙の位ができているような格差社会の縮図に息苦しさを感じている読者に、新たな考え方を与えることで、解放感をあたえられるであろう。

    なまけものは一見動作ものろく、すぐに強者の犠牲になりそうと考えるが、実際は動きを少なくすることでカロリー消費も少なくし、少しの食べ物で長く生きられる。また動かないことで捕獲者に気付かれない。と環境に適応して生き残るための術として高く、生きる能力が相当高い。

    ゴリラは階級社会ではなく皆対応な関係。これは本来人間にも当てはまり、家族という概念がこの同等の社会を形作っている。

    などの話が、なるほどと思わされ面白かった。

  • 弱さについて考えることは、強さについて考えること。

    大きいことが良いとは限らないし、小さいことが悪いとも限らない。
    良いことがいつも良いとは限らないし、悪いことがいつも悪いとも限らない。
    つまり、絶対的ではなく、相対的な価値だから。

    世の中は適者共存。弱肉強食とは異なる。
    適者と強者は混同してはいけない。
    生き残ったものが強い。

    ファーブルは虫たちについて学んだのではなく、虫たちから学んでいた。


    人間は未熟で生まれる、弱位存在で生まれる。
    それによって柔軟性を得ている。さまざな方向に適応し、変化が可能。本能よりも学習で自己発展をする。
    また、弱いからこそ愛情をたくさん受けることが必要。それにより人間らしさ、を得る。
    身体的弱さが、一方はコミュニケーション能力の発達という強さを獲得する。

    遅れることによって進む。
    弱くなることで強くなる。
    遅れてもいいけど、何かを際立たせていくべき。

    より大きく、より多く、より早く、という過剰な進歩。
    必要なのは、ちょうどいい小ささ
    ちょうどいい遅さ

    優しさが発揮できる遅さ、か適正速度。

    弱さについて考えることは、
    同時に強さについて考えること。

  • 文化人類学者で環境活動家である著者が、「ゆっくりでいいんだよ」(ちくまプリマー新書)に続けて書いた本。〈弱いよりも強い方がいいのだろうか?今の社会の価値基準が絶対ではないとしたら…。動植物の性質や古代文化から強さの陰に隠れている弱さの価値に光を当てる〉として、弱さについて様々に考えを述べています。

    「強い」「弱い」「勝ち」負け」「早い」「遅い」等という単純な二元論では、表現できないのにそのような思考に陥りがちな人間。競争主義がはびこり「自己責任」が強調される政策が続く中、共同意識が薄れこのままでは社会が崩壊するとの警告を発していると思いました。お互いの弱さ・違いを認め合うこと、誰もが依存し合いながら生きていること、金子みすゞの詩にあるような「みんな違ってみんないい」ことをどれだけ一人一人が理解し社会の仕組みにしていくのかが、重要だなと思います。

    ナマケモノの生態・インドの昔からの言い伝え「口は一つなのに、なぜ耳は二つあるのか」など、動植物に関わり世界を旅してきた著者ならではの展開(初めて知ったことが多かった)も、読者を引きつけてくれます。

    各章の節の書き出しで、その節に関わる著名人の言葉が紹介されており、それを読みつなぐもなかなか考えさせられるなと思いました。

    おすすめの一冊です。

  • 「ゆっくりでいいんだよ」に続いて「弱虫でいいんだよ」もとても響くし、とても共感。

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著者プロフィール

福岡女子大学国際文理学部教授

「2024年 『捕鯨史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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