渡邊二郎著作集1 ハイデッガーⅠ(全12巻)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (730ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480752611

作品紹介・あらすじ

『存在と時間』を「実存に基づく存在の哲学」と看破した気鋭の論考。

感想・レビュー・書評

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  • 『ハイデッガーの実存思想』と、論文「初期のハイデガー」を収録しています。

    『ハイデッガーの実存思想』は、著作集第2巻に収録された『ハイデッガーの存在思想』とともに、著者のハイデガー解釈が詳細に論じられた著作です。新カント派の影響のもとで判断論の研究に着手したハイデガーが、やがて実存の問題へと向かっていくことになる経緯を明らかにするとともに、主著『存在と時間』で明らかにされるに至ったハイデガーの思想とその問題点を明快に論じています。

    著者のハイデガー哲学に対する不満は、レーヴィットのそれと同じ方向を指しているように思われますが、詳細かつ明晰に議論が展開されています。著者はハイデガーの思索をうちからたどることで、彼が「死への先駆」に基づく本来的実存という枠組みから実存の問題を解明しようとしていたことを鮮やかに示し、そのうえで「本来性と非本来性の弁証法的関係」に対する考察がハイデガーのもとで十分に展開されていなかったことを指摘しています。

    著者は、京都学派に属する辻村公一と並んで、ハイデガー研究の両巨頭というべき存在ですが、辻村の晦渋な議論に比較すると、著者の議論の明晰さは際立っているように感じます。ただ、著者の主張している「本来性と非本来性の弁証法」という発想は、存在の歴運に聴従するというハイデガーの後期の思想への道筋を見通しがたくするとともに、ハイデガーの「存在」をふたたび人間学的な事柄に回収してしまうことにならないかという疑問を、最後まで拭い去ることができませんでした。

  • 資料ID:21302376
    請求記号:121.6||W||1

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著者プロフィール

哲学者。放送大学名誉教授、東京大学名誉教授。専攻は西洋近現代哲学。著書に『ハイデッガーの実存思想』『ハイデッガーの存在思想』(以上勁草書房)、『ニヒリズム』(東京大学出版会)、『構造と解釈』『英米哲学入門』『芸術の哲学』『はじめて学ぶ哲学』『現代人のための哲学』(以上ちくま学芸文庫)、『歴史の哲学』(講談社学術文庫)、『人生の哲学』(角川ソフィア文庫)などがあり、『渡邊二郎著作集』全12巻(筑摩書房)に集成されている。

「2021年 『増補 自己を見つめる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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