ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い

  • 筑摩書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480847157

作品紹介・あらすじ

偉大な二人の哲学者の生涯ただ一度の出会い-灼熱した言葉の応酬…そして火かき棒が一閃する。両者の間に横たわる深淵を探りながら、二十世紀中欧の知識人を襲った過酷な運命の軌跡をたどる。

感想・レビュー・書評

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  • ゴシップ的な事柄も含めて、ポパーとウィトゲンシュタインがどのような環境の中でどのような立ち位置でどのように考えたかがイメージできた。哲学の「謎」か「問題」か、という観点で、ラッセル、ポパー、ウィトゲンシュタインの違いを説明しているところは、わかりやすかった。

  • 21

  • ヴィトゲンシュタインやポパーをはじめ、ウィーン楽団周辺の哲学者らがボチボチ登場。思想書ではなくドキュメンタリとして、ドラマチックに「火かき棒事件」があつかわれる。
    専門書ではないので、若干の知識があれば読めると思う。(おいらも一応読めたし…)

    著者の皮肉っぽい言い回しが、痛快爽快。
    とても面白くまとまっていて一気に読めた。

    しかし、ヴィトゲンシュタインをヒロイックに描いていたのに対して、ポパーは何かと厳しい言われようだったように感じた。
    人柄やカリスマ性云々はともかく、このままポパー本来の業績が紹介されないままだったら嫌だなぁ…と思ったけど、その点はきちっと(しかもかなり格好良いまとめ方で)評価されていたので、とりあえず安心。(おせっかい!)

    登場する哲学者の具体的な思想内容は、他の書籍を読む事をおすすめします。

  • ケンブリッジ大学におけるウィトゲンシュタインとカール・ポパーの「火掻き棒事件」にたいするゴシップ書。当時の会員の証言や、2人の伝記、簡易な2人の思想の紹介と論争に至るまでの二人の争点等が記されている。内容はやはりゴシップ書なので読みやすい。

  •  この本を語るにはまずポパーとウィトゲンシュタインの火かき棒事件について説明しなければならない。
     1946年のケンブリッジ大学での研究会でゲストとして呼ばれたポパーに対しホスト側のウィトゲンシュタインが火かき棒を振り回しながら哲学にはそもそも解決する問題などないと激しく攻撃を加えた。そんな中ウィトゲンシュタインが「道徳的規範の実例を挙げよ」と迫り、それに対しポパーが「ゲストを火かき棒で脅さないこと」と痛烈にやり返したことで、激怒したウィトゲンシュタインが出て行ってしまった。これが火かき棒事件である。

     しかし実はこれはポパーの一方的な証言であり、真相は違うものだった。作者はあの時本当は何があったのか、火かき棒事件とは何だったのかを考察する。
     この事件を考えるにはポパーとウィトゲンシュタインの二人の人生を知らなければならない。また二人の人生から見ることのできる当時の哲学会や世界、ユダヤ人としてのアイデンティティを理解する必要がある。このバックボーンを巡る旅がこの本の大半を占めるのだが、この部分がとても面白い。
     圧倒的な知性と魔性の魅力を持つウィトゲンシュタイン、様々な不遇に見舞われながら激しい情熱と才能で哲学会を登りつめようとするポパー。同じウィーン出身のキリスト教徒に改宗したユダヤ人でありながら、哲学を破壊しようとするウィトゲンシュタインと哲学の中心を目指したポパー。少なくともポパーにとってウィトゲンシュタインとの対決は運命の対決だったはずだ。振り回される火かき棒。だが対決はウィトゲンシュタインがポパー以外の者の言葉で途中で退出してしまうという肩透かしで終わってしまう。そしてポパーの嘘の発言が生まれた。

     一つの事件という点から多くの線をつなぎ、その事件の意味を見事に浮かびあがらせている。
     この本は哲学の本ではないかもしれないが、人間としての哲学者達の面白さを存分に味わうことができると思う。

  • いわゆるドキュメンタリーとして読みましょう。
    K R Popper やWittgensteinの入門書ではありません。

    読み物として、楽しめるものです。

  • 第二次大戦前~直後のオーストリア・ウィーン、そしてイギリス・ケンブリッジを主な舞台に、政治的・思想的背景を整理していく。英BBCのドキュメンタリー作法に忠実でTV番組を見ているかのよう。「フェルマーの最終定理」を楽しんだ方にも。ポパー・ヴィトゲンシュタインそれぞれの思想については、要点は整理されていますが物足りところ。専門書への入口として。原題Wittgenstein's Pokerのダブルミーニング[火かき棒/ポーカーフェイス・ポーカーゲーム]を訳しきれてないのは残念ですね。

  • 芥川龍之介の「藪の中」のように面白い。ふたりの科学者のあいだにおこった出来事が、みるひとごとに違っている、というもので、「物理」よりも「心理学的」に興味深い。

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