イギリス気質の英語 (ラクーン英語読本シリーズ 教養レベル)

制作 : 小野寺 健 
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 11
感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480922069

作品紹介・あらすじ

自由礼讃、偏見尊重、伝統墨守、能率軽視で趣味重視の心情を貫き通すオーウェル、フォースター、チャーチル、チェスタトンなど、典型的英国文人の珠玉の英文11篇。

感想・レビュー・書評

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  • イギリス人気質が表れている(と著者が考える)短い文章(あるいは長い文章の一部)を英語で読んでいく本。
    詳細な用語解説があるから、これは辞書を引く必要がなくて楽できるかも、と思って図書館から借りてきた。

    いかにも大学の英語の教科書!って感じの風貌の本で、堅苦しく難解そうに見えたけど、意外にもおもしろかった!
    友達とかに安易に勧めると、「どこがおもしろいんじゃー」と怒られそうなので、一部マニアにしか勧められないけど。

    私が一番好きだったのは、コリン・ウィルソンの「本当のアーサー王を探して」。アーサー王伝説の背景であるアングロ・サクソン vs ケルトの攻防という歴史的事実がすごく分かりやすく解説されていて、非常に引き込まれた。

    ケルト側(アーサー王側)の方は、どっちかっていうと自分たちをローマに属していると思っていただろうね、なんていう説は斬新で衝撃。
    アーサー王のことも、He was the Roman general と言い切っていて、しかもそれなりに説得力があって興味深い。

    古くから伝わる歌をもとに発掘が行われ、実際にアーサー王の墓を発見するシーンは興奮で手が震えた。
    そういう話って、トロイ遺跡のシュリーマンだけじゃなくて、世界中にけっこうあるんだと驚く。

    あと、無知をさらけだしてナンですが、ウィリアム・モリスって私にとっては「壁紙の人」っていうイメージしかなかったのですが、なんと! 詩人でマルクス主義者ですって?(社会主義者同盟とかいう団体の指導者だったらしい)
    ていうか、壁紙って、この人の経歴のほんの端っこの部分のようで、驚いた。
    それって基礎知識? 私はぜんぜん知りませんでしたが。
    この本に取り上げられているモリスの講演の一部もとても良かった。デザイナーとしでだけじゃなく文筆家としても一流なんだと驚くばかり。

    ところで、この本の右ページには、英文に出てくる単語や文法の解説、背景の補足などが記載されているのですが、チャーチルの演説に出てきた「Accountability」という単語の解説におや?と思った。これ↓

    ------
    accountability< accountable
    If you are accountable for something that you do, you are completely responsible for it and must be prepared to justify your actions. [COBUILD]
    この「ものごとをはっきりと説明する責任」というものが、日本の政治風土にいかに欠けているかを指摘していておもしろい本に、ウォルフレン著『人間を幸福にしない日本というシステム』(篠原勝訳, 1994年11月刊, 毎日新聞社)がある。
    -------

    英語の部分はそのまま英英辞典からの引用なので読み飛ばしていただいていいのですが、目を引いたのは後半の日本語の部分。
    ほかの解説は本文に関係あることしか書かれていないのですが、このAccoutabilityのの日本語部分は、英文本文(チャーチルの演説)とはまったく関係がない。
    著者は、「これに関してはぜひ言っておきたい!」とつい一言付け加えたくなったのでしょうか。
    黒子に徹しておられたステージマスターの顔がカーテンの隙間から一瞬だけチラっと見えた、って感じで、妙に印象に残った。

    このAccountabilityの日本語の解説から今、真っ先に連想される人は、私的にはあの人しかいませんよ!!!
    そう、つい先日、謎の凶弾に倒れたあのお方・・・
    もちろんご冥福を心からお祈りしていますが、しかし彼は政治家としてはいかがなものか、というのが私の正直な気持ちなので、国葬とか言って盛り上がっている方々には困惑しかない。なんでそーなるの?
    え、まさか、各国首脳から寄せられたテンプレ弔辞を真に受けて、偉大な政治家だったと脳内で変換されてたりしないよね???と日本の将来が大変に心配になりました。

    ちなみにですが、チャーチルも政治家としては後年いろいろなので、この本に掲載されている文も「偏ってそー」などと思って興味薄で読み始めたのですが、さすが名演説家と名高いだけあります。
    著者の小野寺氏の言うとおり、使命感にあふれていて、ちょっと心が煽られます。
    演説に関する評判は嘘じゃないんだなぁ、と素直に感心した。今さらですが・・・

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