女ふたり、暮らしています。

  • CCCメディアハウス
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784484211039

作品紹介・あらすじ

似てるけどまったく違う二人(と猫四匹)がつくる新しい家族の形!
ポッドキャストの司会として人気のコピーライター、キム・ハナとファッション誌『W Korea』の編集長を長く務めたファン・ソヌによる女ふたりの共同生活記。
ふたりの関係は単なるルームメイトでも、恋人同士でもない。長い間、一人暮らしを続ける中で楽しさや喜びよりも孤独や不安を強く感じはじめたふたりは、尊敬できて信頼できて、気の合う相手をこれからの人生の「パートナー」として選び、マンションを共同購入する。
家父長制の下で我慢を強いられる結婚はまっぴらごめんだった。
「結婚=幸せ」という限定的な考え方から解放された現代女性たちに贈る、新しい生き方の提案。

感想・レビュー・書評

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  • 「タイムマシンを手に入れたら、いちばん最初に『女ふたり、暮らしています。』を20代の、結婚前の私に手渡してあげたい。」と、大好きな作家のチョン・セランさんの言葉が帯になっている。

    「普通に生きるのが最高だと、人と同じように暮らすのがいい人生なのだと信じて疑わない人たちに反旗を翻したくなったら、証拠資料としてこの本を突き出したい」とチョン・セランさんは紹介する。

    けれど、私はそこでちょっとたじろいだ。
    なぜなら私にとって1番反旗を翻したい人物、何を隠そう、そいつは「わたし自身」なのだから。

    約25年前の結婚前夜の「わたし自身」に私は言ってやりたい。
    「25年ほど先の未来では、あんたの考え方のままじゃ本当の意味での「いい人生」は手に入らない。そんなことを女性たちは気づきはじめてるんだよ」
    女性にとって結婚=幸せと思い込んでた私。
    妻、嫁、母。そんなふうに呼ばれることが、女性の歩む「いい人生」だと、何の疑いもなく夢にさえ見ていた私。
    「そのあんたの間抜けな顔面に、このエッセイをバーンッと押しつけてやりたいよ。
    あんたは考えることから逃げてるんだよ。気づかないふりをしてる……」

    25年という年月を長いと感じるか、短いと感じるか、それは人それぞれだけど、私にとって結婚してからの25年はあっという間だった。
    その結婚生活に満足してるとも後悔しているとも、なかなかひと言では言い表せないのだけれど、この25年間を「普通の女性の人生」という凝り固まった概念のなかで生きてきた今だからこそ、心の底から思うことがある。
    子どもたちの生きる時代には、ジェンダーに囚われることなく「わたし自身」を輝かせ、社会のなかで豊かに自由に生きられる日が来ることを願って言葉にしはじめた女性たちがいる、そのことがとても嬉しいのだ。
    このエッセイを読んで「間に合った」、そんなホッとした気持ちと、未来を想像しワクワクする気持ちでいっぱいになった。

    時には大ゲンカもするけれど、ユーモアとセンスに満ちた日常には、お互いへのリスペクトと優しさが溢れている。
    ソウルに住む女性ふたりの「分子家族」。
    彼女たちの暮らしの記録は清々しい読み心地だった。

    「ひとりでも十分に楽しく暮らすことはできるけれど、ある臨界点を超えると、ほかの原子と結合して分子になることもできる。」

    「女と男という二つの原子の固い結合だけが家族の基本だった時代は過ぎ去ろうとしている。この先、多様な形の「分子家族」が無数に生まれるだろう。分子式にたとえるなら、私たち家族はW₂C₄といったところだろうか。女ふたりに、猫が四匹。今の分子構造はとても安定している。」

    いろんな形の「分子家族」がコロコロとたくさん誕生したら、どれほど色鮮やかな世界になるだろう。キラキラ光を放ち、涼やかな音色をたてながら、空気中をフワフワと自由に飛び回る、そんな「分子家族」。

    『女ふたり、暮らしています。』を読みながら、ちょっとしょんぼりしている25年前の「わたし自身」をちらりと横目で見る。
    「まあ、あんたの歩んできた人生もなかなかのもんだったよ。なんやかんや頑張ったよね、わたし」
    25年前の私と今の私。この先25年後の私はどうしているだろう。ちょっと不安なんだけど……、まだ生きてる、よ、ね?
    「あんたの生きる社会は、幸せの粒子で溢れているかい?」

  • いや〜、羨ましい生活の形。
    特に韓国では『嫁』の役目の重さは日本以上みたいなので、自分もこんな風な暮らしがしたいと憧れる人は多いんじゃないだろうか?
    しかしこの本の2人みたいにピッタリ合うパートナーを見つけるのは相当に難しい事のようにもっと思えます。コミュ力と人間力が高くないとね。

    気が合って、お互いの弱みをさらけ出せてお互いの強みでそれをフォローできて、ケンカと仲直りを繰り返しながら折り合っていく。そんな友達と一緒に暮らすのは心強くて心地よいだろうな。その上気の合う緩い温かい繋がりのご近所さんまで居るなんて羨ましいの極地!桃源郷か!

    読んでいて気分のいいエッセイでした。

  • ◆友人同士、幸せも波乱も
    [評]小島慶子(エッセイスト・タレント)
    女ふたり、暮らしています。 キム・ハナ、ファン・ソヌ著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/112899?rct=shohyo

    『女ふたり、暮らしています。』(キム・ハナ、ファン・ソヌ/著 清水知佐子/訳 CCCメディアハウス) – K-BOOK振興会
    https://k-book.org/yomeru/20210309/

    女ふたり、暮らしています。 | CCCメディアハウス - 書籍
    http://books.cccmh.co.jp/list/detail/2504/

  • 韓国での生活事情が先ずわかります。そして、パートナーとしての女性2人の生活。いままでにない新しい形だとは思いますが、ダイバーシティ・多様性が叫ばれている昨今重要な事だと思います。法の制度が追いついていけばいいなと。
    その生活に共感を持つこともあれば学ぶこともありとても新鮮な気持ちで読むことができました。

    とても印象に残ったフレーズは
    「夫婦の間には些細なことなどひとーーっつもありまへん。積もりに積もったものが靴下一つで爆発するんです。なみなみと水が入っているコップに一滴でも加えたら溢れるでしょう。それと同じです。
    相手を変えようとすることは争いを生むだけでそもそもそれは不可能なことだ。2人一緒に同じ目標のために努力すること、それがまさに団体生活に必要なチームスピリット」

    まさにそうだなぁと思いました。

  • 28.性的マイノリティのカップルの話しかと思って読み始めたけれど全く違い、自立した女性2人と猫4匹の自然体な生活エッセイ

    結婚でもなく、一人暮らしでもなく
    生活を楽しむための2人暮らし

    生活する上でそれぞれ得意なことを担当しつつ、価値観の違いでぶつかる事も
    それでも互いに歩み寄り、理解しようとし
    そして何より楽しもうと思いやる2人の生活がとても豊かに見える

    もちろん彼女達が培ってきた仕事と経済力があればこそ
    韓国の女性誰もが出来る事でもない実状もあると思われる

  • 時々読書の感想やお互いに本を薦め合う友達に借りて読んだエッセイ。

    音楽や文学の趣味が合うので気が合いながらも全く性質の違う2人の同居エッセイ。
    凸凹な2人が互いを心からリスペクトし合いながら、でも時々喧嘩もしながら、色んなことを乗り越えて、猫4匹と楽しく暮らしている日常が綴られている。

    料理は得意だが片付けや整理整頓が苦手で服をはじめモノをたくさん所持していたソヌと
    ミニマリストに近いような精神で少なく持って大事に手入れしながら使い、片付けや整理整頓が得意な時々台所しもべ妖精ドビーになるハナ。

    翻訳家さんの腕もあるのだろうが、とにかく2人とも賢く文章がうまい!!サクサク読めるしユーモラスなところはクスッとしてしまう。

    私が何よりも読んでいて心地よかったのは、最初にも書いたが、お互いをこれでもかというくらいリスペクトし合っているところ。
    私は結婚して夫も子どももいるが、この一緒に暮らす人をちゃんと尊敬し、尊重する姿勢というのは、同性と婚姻関係も恋愛関係もなく暮らしている2人だけでなく、夫や子どもなど家族に対しても大切にすべきことだと思った。

    些細な喧嘩から大きな相違からくる問題点を、躓きながらも解決したり折り合いをつけていく2人のそれぞれの考え方に、たくさん学ぶところがあった。

    読み返したくなったら自分でも買おうと思う。

  • 恋愛感情を持った男女2人組以外にも、ハナさん・ソヌさんみたいに、誰かと一緒に暮らす選択肢がもっと広がるといいなぁと思った。

    2人+4匹の暮らし方から、「婚姻制度以外にも誰かと一緒に暮らせるんだよ」って、勇気づけられた。

    とはいえ、恋人同士でも、家族でも、友人同士でも一緒に生活するとなればもちろんケンカや揉め事はあって…。そこも赤裸々にくすっと笑えるように書かれてて、なんだか素敵だった。




    そして日本でも、韓国やフランスのように生活同伴者システムの議論が、本当に進んでほしい…。男女の夫婦以外でも、一緒に暮らす人と税金控除や保険制度、病院付き添いとかできるといいのになぁ。

  • 久しぶりに面白い本に出会った!
    結婚意欲があるわけではないけどそろそろ一人暮らしは卒業したい。
    一人暮らしに慣れてきた自分と重なる部分、あるいは未来を見るような部分が多く、共感しながら読み進められた。
    特別なことはない、本の内容は日々の些細なことばかり。けれど、真反対の性格の2人が一緒に暮らすため考えていること、大事にしていること、喧嘩のことなどが赤裸々にこと細かに書かれている。
    2人の筆者が交互に文を連ねている形式も面白い。短編感覚でさくさく読めた。

    借りて読んだ本だけど、これは買って読むべきだったとちょっぴり後悔。
    資金に余裕ができたら買って、生活に迷うたび何度でも読み返そうと思う。

  • 新しい生き方の提示だけれど、同時に普遍的な「他人との折り合い方」「他人と生活することの豊かさ」を描いていて、とてもよかった。
    ふたりとも文才があって、お互いの目を通した人物像がとてもすてきで、愛おしくて好きになってしまう。
    わたしは結婚/出産もしているけれど、本来誰と住んでいても外から過度に期待や干渉を受けずに温かく見守られたらいいし、こういう風に家族に対して敬意と思いやりを持って暮らしていきたいと思った。

  • 非常に共感が多く、とても希望にあふれたエッセイだった。面白くて親しみやすい語り口も魅力的。気が合う友人同士での同居を詳細に描写し、「パジャマで一日中過ごす」とか緩い話題があったかと思えば、「結婚」や「家族」という枠組みの中で起こる女性差別や偏見、国の制度の問題に至るまで鋭く痛烈に書いていて、非常に好感が持てる。
    それと同時に、韓国の男尊女卑や嫁に求められるものは日本の比ではない感じがして、衝撃的だった。

    他にも、他者と暮らすことで起こる衝突や、我慢や譲歩、ケンカの技術に関しては目から鱗。ファン・ソヌさんと同じく衝突を極力避けようとする傾向にある私には、同居してから気づく
    ・他者のことを想像する力
    ・対話する力
    ・ケンカする技術 の部分は衝撃的だったし、もっと衝突して怪我をすべきなのかもしれないと考えさせられた。

    なんにせよ、「結婚」というものを現実味を持って考えられない私にしたら、非常に魅力的で希望にあふれた「分子式家族」の形態を知ることができて非常に良かった。
    こんなソウルメイトにはそうそう出会えないかもしれないが、こんな「家庭」が理想かもしれない。

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著者プロフィール

読んで、書いて、聞いて、話す人。広告代理店(第一企画、TBAコリア)に長年コピーライターとして勤めた後、作家、司会などとして活躍している。『チェキラウト――キム・ハナの側面突破』、『女ふたり、トークしています。』のポッドキャスト進行役としても人気。
著書・共著に『女ふたり、暮らしています。』、『話すことを話す』(以上、清水知佐子訳、CCCメディアハウス)、『力を抜く技術』、『わたしが本当に好きな冗談』、『15度』、『クイーンズランド姉妹ロード 女ふたり、旅しています。』、『ビクトリーノート』(以上、未邦訳)がある。

「2022年 『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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