- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784487817146
作品紹介・あらすじ
絶海の孤島、南硫黄島。本州から南に1200kmの場所にあり、その開闢以来人類が2度しか上陸したことのない、原生の生態系が残る奇跡の島である。本書は、その島に特別なミッションを受けて挑む研究者たち(主に鳥類学者)の姿を、臨場感あふれる筆致で描く冒険小説であるとともに、進化や生態についての研究成果報告書でもある。襲い来るサメ!崩れ落ちるガケ!降り注ぐトリ!噛みつくコウモリ!大気がハエ!(サメ以外は本当です)。抱腹絶倒空前絶後の科学エッセイがここに誕生。
感想・レビュー・書評
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西ノ島については2021年9月に再調査を予定していたが、8月14日に再噴火し、2022年、2023年も10月に噴火しているため調査保留になっている。
現在の西ノ島の生態系が気になるところですが、本書の舞台は西ノ島でなく南硫黄島です。
川上さんは鳥類学者だから、クロウミツバメやシロハラミズナギドリなど鳥に着目していますが、
調査には昆虫学者や植物学者もいるし、記録班のカメラマンも同行しています。
プロの登山家も、研究者の登山ルートを作ったり、水や食料やテントを運んだりと大活躍しています。
ここは自然保護地域なので、エベレストやヒマラヤと違いお金を払えば来れる場所ではありません。
調査結果だけでなく、調査のプロセスが詳しく書かれていました。
未開の地の調査なので、思いがけないトラブルにもいろいろと出会っています。
例えば、息をすると大量のコバエが口内に侵入してくるなど、凄まじい光景が目に浮かびました。
本書の情報自体は新しいものではなく、2007年と2017年の南硫黄島の調査記録をようやく書籍化したものでした。
NHKと都立大学(首都大学東京)も参加した調査なので、何年か前にNHKスペシャルで観た人もいるでしょう。
書籍化は南硫黄島に関する講演会の後で、一人の少女から「この島の本があれば読みたい」と言われたことがきっかけのようです。
あとがきに「この本はあの時の少女に捧げたい。」とも書いてあって、だから川上さん特有の(若者には通じない)おやじギャグがないことにも納得しました。
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パラパラ漫画も楽しめました!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安定の面白さ。やっぱりハズレないわ。
南硫黄島でのそれはそれは過酷な調査を、いつもの調子でちゃかしたりしながら語る。オプティミスティックというか、ちゃかすことによって、祓いがおこなわれているような(笑)。きっと川上先生はマーシアン移民適正テストで簡単に合格しそうなキャラクタだと思う。ドMなフィールド系研究者の嫉妬心を煽る、たまらない書籍である。
鳥類標識調査や標本についてもわかりやすく完結に触れられていてとてもありがたいる。まったく温度調節できるもののない場所での腐敗しやすい標本ってどうするんか?、化学系の薬品?とか思っていたら、なんと塩漬、まあ汎用性高いですし、なんせ安全ですし、なるほどなぁ、、と。普段恵まれた環境での調査しかしていないので、ほんとにAWE。
トリダカラダイジョウブ、トリダカラダイジョウブ -
鳥類学者の著者が、小笠原諸島の更に南の無人島である南硫黄島の自然環境調査隊に参加した一部始終を纏めた1冊。著者の作品に触れるのは3冊目です。
個人的に、島への憧れのようなものは持っているのですが、火山列島のような絶海の孤島感のある島(まぁ列島なんで孤島じゃないですが)はちょっと怖さの方が先に立ちますね。。
さて本著、著者の軽妙な語りにはより磨きがかかり、純粋に娯楽として楽しめる1冊に仕上がっています。
まず、「鳥類学者」に抱くイメージとお茶目な文体のギャップ。挟まれる写真やイラスト。「ちょっと脚色」された文章(どの程度なんでしょうね(笑 等々。
「読むぞ!」とスイッチを入れていなくてもすーっと入ってくる文章で、1章も短めなので、寝る前にちょっと読むのにピッタリです。
そして、娯楽と言いながらも単に笑えるという意味の面白さだけでなく、知的側面で考えさせられる面白さも備えているのが良いところ。
鳥類学者としての匠の目が存分に発揮され、元有人島であった北硫黄島を「南硫黄島のパラレルワールドなのだ。もしも南硫黄島に人が住んだらどんな世界になるのか。そんな運命の分岐点の反対側を見せてくれる島だ。」と表現するのは思考の深さを感じさせます。
無人島に調査隊が踏み入れることを「自然に対してインパクトを与えながら、そのマイナス以上の成果を出さなくてはならない」と評したのも、なかなか研ぎ澄まされた言葉でカッコ良いなぁ!と感じました。
鳥好きだけでなく、島好きや旅好きにもオススメできる1冊です。
しかし、南硫黄島とまでの贅沢は言わず、その手前の小笠原諸島まででも旅行に行ければ良いんですが、ハードル結構高いんですよね。。同じ「都内」なのになぁ。。 -
南硫黄島は人間の侵入を拒む、絶海の孤島。
だからこその原生状態の生態系が残る、場所。
そんな島での調査と研究の日々は、あまりにも壮絶だった。
・南硫黄島の地図 ・横から見た図 ・各島との位置関係
・はじめに
第一部 探検・はじめまして 第二部 熟考・ここが天王山
第三部 灼熱・宴もたけなわ
・あとがき
鳥類学者が綴った科学エッセイは、冒険譚でもある。
小笠原諸島よりも硫黄島よりも更に南に位置する、南硫黄島。
集うのは鳥類・植物・昆虫・陸産貝類・哺乳類・
海洋生物・地質等の専門家・・・だけでなく、
プロのダイバーや山岳サポートも含めての隊員たち。
僅かな海岸に上陸&荷揚げをし、
大きな石が転がる死の廊下と垂壁をクライミングは
落石と足元の崩れる土砂。巣穴だらけの山頂までの行程と、
難行苦行の連続。しかも山頂では多くの鳥の死体と無数のハエ。
それで終わりかと思っていたら、10年後の調査隊にも
名を連ねているではないの~。しかも更に10年後にも行きたい?
研究者魂というか・・・噛まれると痛い、痛いけど嬉しいだもの。
カフェ・パラディッソの理想と現実には笑っていまったけど、
調査自体の話には目から鱗。特に10年の経過は、島自体の
変化と生物たちの状況が真面目に語られていました。
特に、海鳥を媒介して増加する外来植物の逞しいこと。
更に、ドローンの威力も時間の経過を感じさせられました。
新しい事実もあり、島のことはまだまだわかっていないと
確信し、これからも研究は終わることがないと語る。
果たして10年後はどうなっているのか?行くよね、絶対。 -
小笠原諸島にある南硫黄島を七転八倒、抱腹絶倒、紆余曲折しながらも研究者目線で調査するお話し。
耳慣れない島での生活を送るためには、用意周到な準備が重要であることは元より、調査に必要なアイテム類をどのように扱うかなどなど面白おかしく書かれていて、他には類を見ない一冊なのかなと感じた。 -
以前読んだ「鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ」が面白かったのでこちらも!
上陸調査がほとんど行われたことのない絶海の孤島・南硫黄島。二度に渡る学術調査の様子や鳥類学者視点での発見などが綴られています。
相変わらず「はじめに」から面白い書きっぷりでした。
クスクス笑いながら知見を深められて、まさか伏線回収まで体験するとは!
知らないことだらけ、目からウロコでした。
自然豊かに木が生い茂ってるのが原生だと思ってたら、そうじゃない場合もあると知ったのも驚き。
南硫黄島→北硫黄島と調査を進め、その目で現地を見て比較出来たからこそ導きだせた事実。
人を筆頭にすべての存在が影響を及ぼしあって生態系が変化していくんだと、しみじみ感じた。
そのなかでも小笠原諸島における海鳥の機能の大きさがすごい!!
すごい事が書かれているのに小難しくなく、こんなに楽しく読ませてしまう川上さん、本当にすごいです。
ユーモアとともに知的好奇心を満たしてくれる読書時間でした。
それと…、今回カツオドリの可愛さに目覚めてしまいました♪
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kosamebitakiさん、こんにちは♪
可愛らしいプロフィール画像はコサメビタキですか?
私のは、ジョウビタキ♀です。
東京で...kosamebitakiさん、こんにちは♪
可愛らしいプロフィール画像はコサメビタキですか?
私のは、ジョウビタキ♀です。
東京でコサメビタキを見たことはありません。
今は冬場なので、東京にもジョウビタキが来ていますが、春になるといなくなっちゃいます。
近所に可愛らしい小鳥たちがもう少し増えればいいのですが…(増えすぎは困りますけど)
この本を読んで、同じような想いを抱かれたのですね。
私も自分が感じたことが全て書かれているレビューを読んでしまって、レビューを放棄したことがあります。
本のあとがきや、解説と自分の思ったことがほぼ一致している時もそうです。
同じことを書いてもしょうがないし、真似してるだけみたいな罪悪感も湧いてきちゃうんですよね。
そんな時は、「○○と同じです」と書いておけば十分だと思ってます。
○○がブクログのレビューで、その方がブクログを退会されたら困りますけど(^^;
2024/02/05 -
kazuさん
コメントありがとうございます^^
フォローもしてくださってありがとうございます。
はい、写真はコサメビタキの、しかも...kazuさん
コメントありがとうございます^^
フォローもしてくださってありがとうございます。
はい、写真はコサメビタキの、しかも幼鳥です!それがおわかりになるとは!ジョウビタキ、かわいいですよね。私は気が強い女の子の方が好き。以前は冬の庭の常連でした。でも、北海道へ来てからは珍しい鳥なので、なかなか見られなくなりました。
鳥が好きで、川上一人さんは、尊敬するお一人です。
「鳥つながり」のタグで、鳥の本をまとめてます。
いや、kazuさんのレビューもう完璧でしたから。
突きいる隙がなかったですから(笑)
本を読んだら、レビューなんて大げさなものじゃなくて、すこしでも、なんか自分の読後感、みたいのを残しておきたいんです。(読んだこと忘れてまた読もうとするから)忙しいときはあまり他の方のレビュー読めなくて、いいねもあまりできてなくて、フォロワーさんには申し訳ないです。
この頃は春から秋まではほとんど本が読めないので、本棚に載せるのは、ほぼ冬のみというナマケモノですが、驚かないでね。
こんな自分ですがよろしくお願いします。
2024/02/05
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図書館新刊コーナーより。
前に同じ著者の本を読んで面白かったので。
生物多様性という言葉は結構前から言われているけれど、正直ピンと来ていなかった。
なぜ狭いエリアでのことが大事なのか、他のところに同じ生きものがいればいいのではないか、と。
この本に書かれている南硫黄島の環境を読んで、それが腑に落ちた。
狭い範囲だからこそ、その生きものが果たす役割が大きいということ。
だからこそ、その土地固有の環境が出来上がるということなのか。
公的資金を使っているから、国民に成果を伝える責任があるというのは、どの仕事にも応用できる責任感だと思った。
本編最後の一文はとても共感する。
何かを知れば知るほど、知らないことに気付かされる。 -
《色んな意味でドラマチック》
人の手が殆ど入っていない南硫黄島の研究調査の過程を著者なりに面白くした本。(もちろん、著者もしっかりした鳥類研究者。)調査期間の島での生活の苦労も分かり、読んでて面白い。(著者のギャグがどこまで本当が分からないが。)