ホーミニ・リッジ学校の奇跡! (sogen bookland)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488019594

作品紹介・あらすじ

八月、トウモロコシが穂を出し、クローバーの花が咲きみだれる。そして日が暮れるのが少しばかり早くなる-夏休みが終わる直前のその八月に、わたしたちの先生、独身の女性教師マート・アーバクル先生は突然この世に別れを告げた。そして…代理教師としてやってきたのは、なんと学校なんか大嫌いな少年ラッセルの姉さん。こうして教育熱心でタフな姉さんと、いまひとつ勉強に身が入らない生徒たちの攻防が始まった!古きよきアメリカの片隅、ホーミニ・リッジ学校の型破りだが実り豊かな学校生活を描く、ニューベリー賞作家の待望の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀初頭、インディアナ州の片田舎。廃校目前のホーミニ・リッジ学校。たった一人の女性教師が亡くなり、その代用教師として現れたのは、なんと自分の姉だった!?
    高校を卒業していない17歳が代用教員ってアリなのかとも思ったが、昔の田舎なら珍しくなかったのだろうか。何しろ教室は一つだけ、年齢の異なる生徒がそこでまとまって学ぶのだから。
    女性教師が突然亡くなり、物語が動き出すまでなかなかノれなかったのだが、姉のタンジーが代用教員に着任するところから俄然面白くなる。生徒は最低8人いなければ学校として成り立たないのだが、わずかに満たない。その生徒集めに焦るタンジー。
    勉強嫌いで、何とかこの田舎から出ていきたくてうずうずしている主人公のラッセル、こいつが鈍チンでねぇ。気が強く、代用教員になってからますますうざく感じるようになってきた姉のタンジーが美人でモテるということにも気づかず、学校でのクラスメートのケンカが、そんなタンジーに好意を寄せている故ということにも気づかず、そもそも何でタンジーはここまで教育熱心なのかという理由にも気づかず!心の中は父や姉にダダ漏れ状態だし(笑)ま、そんな彼の詰めの甘さが物語を面白くはしてるのだが。
    他にも個性的なキャラがいっぱい。大人も子供もそれぞれに濃いのだが、中でも印象的だったのは、クセ者タルボックス一家のグレン。教育なんぞ縁のないタルボックス家に、子供を学校に通わせるよう説得に向かったタンジーとラッセル。そのときに彼らの愛犬がヤマアラシに噛み付いて大怪我を負う。さっと現れ、手際よく応急処置を行ったのが、タンジーよりちょい年上のグレン。教養はないかもしれないけど、ワイルドでサバイバル知識に長けた彼にときめいてしまいました。その後のグレンの変化にも注目なのだ。
    圧巻は、終盤での授業参観シーン。この痛快さはペックらしいね~。後日談で、さらっと種明かしするのもまた心憎い。え、ウソ!?そうなの!?と、ラストはびっくりの連続で、終わりも終わりの「献辞」まで気が抜けません(ここにも某人物の後日談が!)。
    いつもペック作品は、作中の印象的な場面を表紙に持ってきているけど、今作では学校のシーンではなく、敢えてここかと。読み終えてから表紙をじっくり見ると、笑いがこみあげてきます。特にモードおばさんのひっくり返りが…(笑)
    今後もどんどんペック作品を邦訳して欲しい。心待ちにしてます!

  • 1904年、車や飛行船がやっと飛び出した時代。しかし、そんなものをほとんど見ることもなかったインディアナ州のお話。
    先生が一人、生徒が数人しかいない小さな学校。そんな学校の先生が急死してしまう。その後任に抜擢された17歳のタンジー。そして、その学校で学ぶ子供たち(大人もいる)との優しさにあふれたお話。

  • 古き良き時代(正確には1904年)のアメリカの田舎の小学校、教室は1つだけ、生徒が八人に満たなければ廃校にされてしまう。その学校の厳しい女教師は8月に亡くなってしまう。9月からの新学期、その学校にやってきたのは、学校なんて大嫌いなラッセルとロイド兄弟のお姉さん、タンジーだった!ただの大きな姉さんだと思っていたタンジーは、意外にもタフで教育熱心。こうして、勉強なんて大嫌いな兄弟VS新米先生の攻防がはじまった。
    「大草原の小さな家」を彷彿させる、ビッグダディにやんちゃ坊主にしっかりもののお姉ちゃん家族。個性的な近所の人びと、昔の田舎の暮らし、加速的に発展していくアメリカを支えたのは、こんな家族でありこんな町だったんだろうなと思う。

  • 『シカゴよりこわい町』『シカゴより好きな町』『ミシシッピがくれたもの』に続くリチャード・ペック邦訳4作目。リチャード・ペックにはずれなし、と言いたくなるほど、楽しくて、幸せな気分にさせてくれる作品である。


    20世紀初頭のアメリカ・インディアナ州の農村を舞台に、ラッセル少年の日常がユーモラスに綴られていく。

    中心となるのは、生徒数6人、ラッセルより2歳年上なだけの実の姉が代理教員という小さな学校での、突拍子もないいたずらや、恋のさや当てに彩られた学校生活なのだが、四季折々の農作業の様子といった日々の生活も描き込まれていて、楽しめる。

    年に一度の蒸気脱穀機の展示会をどれほど心待ちにし、その日は、大人も子どもも(とくに男どもは)どんなにワクワクして過ごすか。
    初めて手にする本物の野球ボールに、どんなに興奮し、教室のみんながキャッチボールに興じたか。

    日々の暮らしの中では、滅多に目にできないもの、手にすることのできないものに出逢った時の、たとえようのない幸福感。
    情報や知識が先行し、自分が体験していないことまでも、知ったふうに思ってしまいがちな今の私たちには、なかなか味わえないものかもしれない、そんな感情の高まりが描かれて、しみじみさせられる。

    物語のハイライトは、ラッセルの姉タンジーの、教員仮免許状取得のための授業参観のシーンだが、読んでいるこちらまで教室のみんなと同じよう
    にハラハラドキドキしてしまうのは、それまでにラッセルを初めとする登場人物たちやその生活に、すっかり魅了されてしまっているからだろう。
    後日談として語られるラッセルたちのその後も、うんうん、そうかそうかと思える、嬉しいものとなっている。

    そして何より、よく知っていると思っているはずの身内でも、毎日机を並べているクラスメートでも、機を見れば銃をぶっぱなしかねない強面の住人でも、人というのははかり知れない一面をもっているということ、人の奥深さがきちんと描かれているところも素敵だ。


      Teacher’s Funeral : A Comedy in Three Parts by Richard Peck



    実際は邦訳5作目。未読ではあるが、1983年集英社文庫 コバルトY.A.シリーズとして『レイプの街』が出版されているらしい。MWA賞(児童小説部門)受賞。(それにしてもこの邦題は何とかならなかったのか。原題は Are You in the House Alone ?)

  • 男の子が読んでも面白い本。私(ラッセル)が回想しながら誰か(たぶん子どもか孫)に語っている形式が所々入るので最初ちょっととまどうが、1904年のアメリカインディアナ州の田舎にタイムスリップしたようにぐんぐん読める。ちょっとびっくりするハッピーエンドなのも楽しい。 弟のいる長女というのはどこでもしっかり者で家をもり立てるものなのかなぁ。

  • アメリカの古きよき時代、ある田舎の小さな学校を中心に繰り広げられるちょっぴりドタバタな物語。
    主人公ラッセルは15歳。父親の農場を手伝いながら、いつか都会に出て大もうけしてやろうと密かに
    (家族にはバレていたが)思っていた。
    もちろん学校なんかなくなっちゃえばいいと思ってもいる。

    楽しかった夏休みが終わり、明日から新学期。
    ゆううつなラッセルにある情報がもたらされた。
    「先生が死んだ!」もしかしたら学校がなくなるかも!
    しかしラッセルの期待は裏切られ、新しい先生がやってくることになったらしい。
    でも!うそ!なんで?なんで新しい先生が姉さんなの!?
    若くて美しくてエネルギッシュな姉さんが先生になって、ラッセルにとって学校は牢獄となったのだ。

    この学校、全員で8人で下は6歳の少女から上は20歳近い青年までが初等教育を受けている。
    「大草原の小さな家」のローラが通っていた学校を思い浮かべるといいかも。
    とにかく、そんなことが起こるの?ってことがいっぱい起こってしまうこの学校。
    ユニークな大人も大勢出てきて、楽しい1冊です。

  • 100年前のアメリカの田舎の学校が舞台。『シカゴよりこわい町』「シカゴより好きな町』の豪胆なおばあちゃんの若かりしころのようなタンギーがいい。リチャード・ペックはやっぱり面白いです。

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