案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 473
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488020231

作品紹介・あらすじ

案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる雪の密室の様相を呈していた――。“楠谷佑”のペンネームで活動する合作推理作家の大学生コンビが謎に挑むシリーズ第一弾。本格推理の俊英が二度に亙る〈読者への挑戦状〉を掲げて謎解きの愉しみを満喫させる、渾身の推理巨編! 叢書ミステリ・フロンティア20周年記念特別書き下ろし作品。

感想・レビュー・書評

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  • 念入りに組み立てられたザ・本格ミステリー! 案山子だらけの村でおきた不可能犯罪 #案山子の村の殺人

    ■あらすじ
    大学生の二人組ミステリー作家である宇月と篠倉は、学友の誘いで埼玉の山中にあり案山子村に訪れた。そこは案山子が至る所に存在する村で、ここ最近ボウガンで案山子が破損されるなど、悪戯が問題になっていたのだ。村に泊まった作家コンビが翌朝起きると、村は豪雪で埋もれていた。そして殺人事件が発生してしまい…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    スタンダードかつ丁寧に組み立てられた本格ミステリーです。骨身に沁みるなぁ~、いい作品です。まだ20代の若手先生が、こんなにもまっすぐな本格を書いてくれるなんて嬉しい限り。日本のミステリー界も安泰ですね。構成やらセリフやら謎解きやらが、ホント教科書のような本格ミステリーでした。

    特にメイントリックである不可能犯罪、そして何故こんなことになったのか?の二点は、かなり狡猾な仕掛けで唸りました。

    主人公二人の推理パートがいいんです。ひとりが仮説をあげ、もうひとりが反証をあげる。さらに議論が深まるが、推論の根本から否定意見がでる。その後、別角度の視点で正答に導く際、以前の推理で否定した根拠によって補完されていく。さらにそこから犯行の全体背景が見えてきて…なんて、まさに謎解きミステリーの王道!

    またこの二人は頭脳明晰ではあるけど決して傲慢ではなく、クールながらも情熱的。ミステリーに対する愛情が溢れ出ていて好感が持てるし、なによりお互いを尊重し合っているやり取りが可愛すぎなの。

    新しいバディ探偵として今後の活躍に期待しちゃいます、ぜひぜひ先生には続編を書いてほしいです~

    ■ぜっさん推しポイント
    国内ミステリーでスモールタウンを感じる作品は久しぶりに読んだ気がします。その町特有の文化や権力が背景にうごめき、人間関係に歪が生み出される。人間の恥ずかしい部分と傲慢さが赤裸々に映し出される部分が見え隠れし、閉鎖的で陰鬱な雰囲気が漂ってくるという。このスパイスが、作品をより良い世界観に導いてくれましたね。さて、事件にどう関連するのか… それは読んでのお楽しみ。

  • 心地よい楽しさの一冊。

    ミステリって、驚き技法はもちろんだけれど心地よさも大切だと思う。

    舞台は冬の雪舞う秩父、案山子だらけの宵街村。

    そこで起きた案山子消失から始まる殺人事件を男子大学生コンビが解き明かすストーリー。

    誰が?何のために?
    ひたすら心に植え付けられる楽しさ。

    しかも二人の心地よい佇まいがこの楽しさに拍車をかけた。

    一つ紐解かれるごとに巻き戻る、あの時。
    全てが綺麗にまとまる心地よさ。

    真冬の旅館に連泊、露天風呂も一服の清涼剤。

    真っ白な雪に埋もれた真相を掘り起こす謎解きと旅情気分との重なりを堪能したミステリ。

  • 読者への挑戦状が2回も有り、面白そうと図書館で借りてきました。が、読み終わってなんかもう、遠回りした様で疲れが残りました。

    小学校の算数の宿題を、高校の先生が方程式を使って解いている様な感覚です。(小学校の時の実体験です)

    もっと素直に描けば面白いのではと思ったのは、自分だけでしょうか?

  • この方の前作も探偵が美形だったような…容姿のいい探偵はこんなもんなんぼあってもいいですからね!!
    奇想天外などんでん返しはないが、読者にもフェアに証拠を提示してくれる。それでも私は犯人分からなかったけど。ちょっと長過ぎるきらいはあるが、久々の読者への挑戦は胸熱。

  • 推理小説を合作する、大学二年生の宇月理久と従兄弟の篠倉真舟は、友人の秀島に誘われて、彼の実家の旅館へ、山奥の村の取材旅行に行くことに。
    秩父の山奥にある宵待村は、手作り案山子が家々の前に立てられた村だった。
    旅館の前で口論する村人、何者かに打ち込まれる毒矢、消えた案山子。
    村に漂う不穏な空気の中、殺人事件が。

    雪に閉ざされた山奥の村、なんだけどスマホは繋がるし、車で移動もできる。
    それでも感じる閉塞感は山奥の村の狭い人間関係故かな。
    主人公2人はエラリーとか有栖とかとどうしても重なって見えてしまうけれど、宵待村の人々や旅館で出会う人たちの描き方が良かった。
    最後、それかーという気持ちにもなったけど、最後まで楽しかった。

  • 人里離れた村と案山子が沢山ある設定などミステリー好きにはたまらない設定です!

    しかも、『読者への挑戦』が2回も楽しめるとなればかなり期待値は高くなります!

    ただ個人的には期待値より上回る事なく、せっかくの素晴らしい設定て活きてなかった気がします・・・。

    シリーズ化して欲しいとは思います!!

  • カカシ好きなので完全に題名に惹かれた。
    内容はなんだかあまりぐっとこなかったかなあ。
    案山子がもっと話にくいこんでくるかと思っていたので残念。

  • そうそう、こういうの、こういうのでいいのよ〜と思わず言いたくなるような、いい意味で王道の作品。
    世界観も素晴らしく、時系列で人物の動きを書き出したのも久しぶり。

    忙しくて細切れで読まざるを得なかったけど、すぐに没入できる。
    さらに、宵待村、旅路、理人、真舟、とひねってないのに地名も人名もなんかおしゃれ。

    おそらくポイントは、旅路の存在で、田舎独自の慣習をうまく余所者の理人と真舟に教えてくれるところ。
    読者もそれでより入っていきやすいというか、金田一とは明らかに異なるところかも。

    会話のテンポもいいし、「なんかいいなあ」が集約された作品だった。

  • むしろ最近では珍しく感じるオーソドックスな本格もの。主人公2人のキャラクターも良く、読んでいて惹き込まれる作品だった。
    やはりエラリー・クイーンを強く意識していて、理詰めの推理で犯人にたどり着く。
    ある意味王道中の王道といった感じで個人的にはいい読書時間に浸れたが、インパクトや意外性には欠ける割りにページ数は多いため、好みは分かれるかもしれない。

  • 直球の本格物。
    案山子が多い村で起きた殺人事件を、旅行に来ていた共同作家でもある従兄が謎解きをする。

    限界集落が舞台で、ゆる~いクローズドサークル設定で、多彩な村の人物描写も丁寧だし、語り口もスムーズ。
    何よりうれしいのは”読者への挑戦”(しかも2回!)もあり、論理的な謎解きが楽しめる。
    意外性には少し欠けるが、金田一的な設定ながら旅情も仄かにあり、楽しく読めた。

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著者プロフィール

■著者
楠谷佑(くすたに・たすく)
富山県富山市生まれ。埼玉県在住。高校在学中に、『無気力探偵 ~面倒な事件、お断り~』(マイナビ出版刊)で商業出版デビュー。2018年、『家政夫くんは名探偵!』を刊行し、シリーズ化。
著書に『ルームメイトと謎解きを』(ポプラ社)がある。

「2022年 『家政夫くんは名探偵! ~夏休みの料理と推理~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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