ヴァンプドッグは叫ばない

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028992

作品紹介・あらすじ

A国MD州で現金輸送車襲撃事件が発生。遠く離れたA州で襲撃犯一味の車が乗り捨てられており、マリアと漣は州都フェニックス市へ向かう。警察と軍の検問や巡回が行われる市内。だがその真の理由は、研究所から脱走した、20年前に連続殺人を犯した男〈ヴァンプドッグ〉を捕らえるためだった。驚愕しつつもマリア達は捜査を始めるが、次々と脱走犯の過去の手口と同様の無差別殺人が起きてしまう。一方、フェニックス市内の隠れ家に潜伏していた襲撃犯五人は、厳重な警戒態勢のため身動きを取れずにいたが、仲間の一人が密室状態の邸内で殺されて…!? 厳戒態勢が敷かれた都市と、密室状態の家。二重の密室をくぐり抜け殺人を繰り返す、殺人鬼〈ヴァンプドッグ〉の正体とは? 名刑事・マリアと漣が挑む史上最大の難事件! 大人気本格ミステリシリーズ第5弾。

感想・レビュー・書評

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  • 超推し★5 マリア&漣が最怖の殺人鬼に挑む! 読み応え抜群のミステリー #ヴァンプドッグは叫ばない

    ■あらすじ
    現金輸送車を襲って逃走中の犯罪者たちが、休憩のため隠れ家に逃げ込んでくる。同じ頃に街中では、20年前に逮捕されていた連続殺人鬼が脱走をしてしまい、検問や巡回が行われることになってしまった。街が厳重な警戒態勢になってしまったことにより、犯罪者たちは隠れ家なら逃げだすことができなくなってしまう。
    そして翌朝、犯罪者のひとりが喉がえぐり取られた状態で見つかる。さらに街中でも、次々と同様の死体が発見されて…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    超大好きな待望のマリア&漣シリーズ第五弾。
    面白かったぁ~ いやー今回も堪能させていただきました。

    いつもの通り、我々の世界とは少しだけ科学文明が違った世界線。ジェリーフィッシュ、青バラ、グラスバードときて、今回はヴァンプドックですか。何だかよくわかんないけど、もうこの意味不な単語だけでワクワクなんすよね。

    まず本作のエグイところは、犯罪者たちの隠れ家で発生する連続殺人と、街での連続殺人のダブルで描かれてるところ。隠れ家での事件は、ガチ本格テイストで次々迫りくる死の恐怖を味わえるし、これが想像以上の展開になっていって、結末は驚愕過ぎて鼻水がでましたよ。

    さらに街で次々と繰り広げられる連続殺人は、もう情報が追い付かずに、お腹いっぱいです。でもマリア&漣の混乱ぶりに手に汗を握り、もう読み進めるしかないの。怒涛のミステリーフルコースって感じでしたね。

    そしていつものメンツがキュートなのよ。ガサツで天才的発想のマリアと、利発でクールな漣の凸凹コンビは最高だし、軍人ジョンは相変わらず男前で可愛いし、他にもニヤリとするキャラたちも登場して大歓喜。

    今回特にビビったのは、この圧倒的な筆致ですよ。読み応えがヤバい。辛く悲しい過去のエピソード、死に直面する閉ざされた空間描写、難解事件に対する必死な捜査網と大量の情報整理、そして綿密な謎解きと想定外の真相。キャラ小説っぽさもあるし、SFっぽさもある。でもあくまで重厚な謎解きがメインなミステリー。

    ひとつの小説なのに、こんなにも盛りだくさんな構成要素やうまみ成分を入れてきて、しかも完成度も高い作品なんて他にないのよ。ほんと今の国内ミステリーにおいて、トップレベルだと確信できる一冊ですね。

    そして肝心の謎解きも、十重二十重に楽しませてくれます。怪しい人や動機は想像できるんですが、ただアリバイを解き明かすには天才的な発想力が必要なの。でも、思いつかなくはない。情報は確かにあった、ここが肝だったよなぁ~。くやしい。

    間違いなく今年のランキングを賑わす出来ですね、大変素晴らしかったです。シリーズを読んできた皆さんは必読ですし、初めての方はシリーズ最初から読んじゃいましょう!(もちろん本作から入っても十分楽しめますよ)

    ■ぜっさん推しポイント
    NEVER FREEZES, NEVER SLEEPS, NEVER RETURN, NEVER SPEAKS…
    否定形のタイトルが面白い本シリーズですが、今回は「叫ばない(NEVER CRY)」でしたね。

    いつも読み終わった後にタイトルを眺めてみると、実は複雑な意味や想いが込められていることが分かり、胸に熱情がこみ上げてくるんです。

    ヴァンプドックは叫ばない… あまりに純粋さ故の美しさと危うさを感じて、私はただ、抱きしめたくなったのでした。

  • 犯人も二点三点し騙された。吸血鬼と強盗犯の同時進行で殺人が起き、誰が殺したのかわからないスリリングさと、死体が復活する吸血鬼要素が謎を深くしておりかなり面白かった。

  • まさに一気読み。20年以上前の連続殺人犯の逃亡と現金輸送車襲撃事件が同時に起きる。応援要請へ出向くマリアと蓮が遭遇するこの光景、怖いけど好きな〇〇〇物じゃないの!少し難解が旧友出てきたりとシリーズ物追う楽しさを堪能した。

  •  「マリア&漣シリーズ」の第5弾。非常に面白い。確かにシリーズ中最高かもしれない。但し、本書から単独で読み始めるのはおすすめできない。前作の短編集「ボーンヤードは語らない」の中の「レッドデビルは知らない」を読んでいないと、登場人物のとの関わりや背景がわからないからだ。ニッセン、アイリーン、ドミニクとったセミレギュラーの面々はともかく、今回奇しくも再会することになるセリーヌやヴィンセントは、前述の短篇に主要人物として登場しているのだ。

     「レッドデビルは知らない」は、マリアがハイスクール時代に出会った事件を描いている。そして、彼女はこの事件をきっかけに刑事となった。

     今回はホラーテイスト。「屍人荘の殺人」が好きなかたにおすすめ。

  • 2023/12/15読了
    #市川憂人作品

    マリア&漣シリーズ第5弾
    現金輸送車襲撃事件が発生。
    時を同じくして20年前に連続殺人を
    起こした「ヴァンプドッグ」が脱走する。
    厳戒態勢で身動きが取れない襲撃犯のアジトで
    ヴァンプドッグと同じ手口で殺人が起こる。
    感染症による吸血鬼化など、ストーリーは
    結構ぶっ飛んでるが全然面白く読めた。
    ライバルとの対決を示唆する終わり方で
    続編にも期待したい。

  • シリーズ最新作、今回はヴァンプドッグ。
    吸血鬼× 犬?

    今回の題材は狂犬病で、これまでと比べて
    知識のない自分にも馴染みがあり、とっつきやすかった。
    ただ、あまりにも多すぎる死人、
    そして吸血鬼?はかなりぶっ飛んだ展開。
    そして明かされる真犯人。
    けっこう早い段階で怪しいとは感じていたものの、
    犯人さん、ちょっとひとりで背負いすぎな印象が。。

    このシリーズ、
    ジェリーフィッシュ、ブルーローズ、
    グラスバード、そしてヴァンプドッグと
    限定された期間に事件が集中して起こっているのには何か意味があるのかな?
    その辺りがとても気になる。

  • マリア&漣シリーズ最新刊。待望の長編は5年ぶり、とは言えグラスバード事件からわずか十数日後の話。ジェリーフィッシュからも1年しかたっていない中でまたしてもの難事件。過去全4作とも多かれ少なかれリンクしている。冒頭いきなりの「吸血鬼」で掴みはOK。例によって特殊な設定の事件なので、これまで同様、真相は想像もつかなかった。終盤畳み掛けるような(マリアの)謎解きでは、突っ込みどころも軽くいなされた感じ。この独特な世界観がたまらない本シリーズ、最後の1行で続編確定。

  • シリーズ5作目にして、大きな動きを見せる1作。前4作にでている登場人物達もたくさん出てきて、シリーズファンとしては嬉しい限り。
    マリアの過去の宿敵が巨悪として今後遅いかかってきそうな予感のするラスト。
    どんでん返しやファンタジー要素、理系要素、パニックホラー的な要素、色々詰め込まれているのにごちゃごちゃした雰囲気がないのどころか、大満足を覚える今作。
    次作が早くでますように。


  • マリアと漣が他州から応援要請を受けた事件は、
    今回も一筋縄では解き明かせない謎に繋がる。

    強盗犯と連続殺人鬼の二つの事件が絡み合い、
    20年前に世間を震撼させたヴァンプドックの
    真相に迫る。

    二転三転して敵も味方も欺くマリアの推理に
    翻弄されるので、最後まで気が抜けません。

    マリアのハイスクール時代の知人が、
    不穏な気配とキーマンになりそうな様子を
    醸しているので次回の展開が待ち遠しい。

  • シリーズ第5作。

    今度はウィルス変異による吸血鬼(ゾンビ)もの。
    特殊設定をロジックに落とし込んでいてうまい。が、ややこしい。

    真犯人や動機は、ミステリ読みなら直感でわかるし、ストーリー構成も常道。王道ミステリだと思う。
    シリーズが進むにつれて、主人公コンビの魅力が増しているように感じられる。
    味方キャラが増えていくのも連作の醍醐味の一つ。

    ……なのだが、苦手なラスボス設定も出てきて、ちょっと萎えた。

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著者プロフィール

1976年、神奈川県生まれ。東京大学卒。2016年『ジェリーフィッシュは凍らない』で、第26回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他の著書に『ブルーローズは眠らない』、『グラスバードは還らない』(以上東京創元社)、『神とさざなみの密室』(新潮社)など。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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