- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488115074
作品紹介・あらすじ
私立探偵エルヴィス・コールは、最近妙に金回りがいい息子タイソンのことを調査して欲しいという、母親からの依頼を受ける。どうやら少年は仲間と裕福な家からの窃盗を繰り返しているらしい。警察に捕まる前に逃亡中のタイソンを確保し、なんとか自首させたいという母親。だが、コールの先回りをするかのように、何者かが少年の仲間を殺していた。そしてタイソンの身も危険が……。大評判となった『容疑者』『約束』に続く第3弾登場。
感想・レビュー・書評
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よめば読むほどコールとパイクが好きになる。いいなあ、読後のこの明るさ。
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残念ながらスコット&マギーは登場しない。
でも、章ごとに視点が変わる面白さは、前作同様でキレキレ。
主人公の探偵エルヴィス・コールの一人称視点を中心に、依頼人で逃亡中の少年の母デヴォンや、逃亡中の少年タイソン、コールの相棒ジョー・パイクなどの三人称視点で、読者を飽きさせない。
今回特に、冒頭の「登場人物」欄ですでに「悪党」と紹介されているステムズとハーヴェイ、通称「でかい男とばかでかい男」のパーツが良い。
二人の描写は多く、その「悪党」ぶりも半端なく描かれている、が、この二人のやり取りを読んでいるうちに、なんだか愛着が生まれてくる。
この不思議さは、いい。
「訳者あとがき」でも「このコンビでスピンオフができるのではと期待した」と言わせるほどで、まるでドン・ウィンズロウの小説に出てくるような「悪役」の愛らしさが、ますます読者を魅了する。
今回コールは、父性の片りんを見せている。
あまり詳細には語られていないが、どうやら以前関係のあった女性の連れ子のようだ。
逃亡中のタイソンに対する「乱暴」でも「暖かい」接し方も、コールの「父性」への憧れとも感じられる。
「探偵稼業」という王道のお仕事小説ではあるものの、コール&パイクやその他の登場人物が読者を魅了するキャラクターで溢れている……いっきに読んでしまう原動力なんだろう。 -
私立探偵コール、パイクシリーズ。警察よりも先に息子タイソンを見つけて欲しいとの依頼。窃盗を繰り返しているタイソンら3人とそれを追うコールたち。そしてそのタイソンたちを探すでかい男とばかでかい男の2人組。この2人の悪党がなかなか冷酷でいい味を出している。それとタイソンの母親や仲間のアンバーと女性の存在感も大きいのも好み。脇にいる人物たちが魅力的で面白い。このシリーズもスコット、マギーのコンビのシリーズもどちらもどんどん発売になると嬉しい。
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この作家は女性の描き方がうまい。訳者もあとがきでそう言っている。そう。実に巧いのだ。主要登場人物のみならず、ワンシーンのみ登場するだけの脇役に至るまで、こと女性に関しては個性が際立っている。作者はよほど女性から痛い目に遭っているのかもしれない。あるいはとても優しくて女性にもてる作者の人間観察力がそうさせるのかもしれない。
さて、ともかく。スコット&マージという捜査犬シリーズを離れ、いよいよエルヴィス・コール&ジョー・パイクという作者のメイン・シリーズである。ぼくには初読である。しかも新作。二人の単独シリーズとしては何と19年ぶりとなるらしい。何故? Why? 無論、『容疑者』『約束』と、捜査犬マージの大活躍により、本シリーズのこちらも再会に至ったのだ。読者も読者だし、作者も作者である。何より、マージ様々なのだ。
女性の描写は際立っている。それに比して、コール自身はあまり色のない、地味で堅実な私立探偵である。スペンサーみたいに料理は上手だけど、恋愛中の女性は、前作『約束』で知り合った超多忙の大物警察官であり、電話二本の通話という形でしか、ここでは登場しない。食事を一緒に、という約束をして、それが仕事で流れたくらいだから、まだ深い恋愛関係にはないのかもしれない。
代わりにと言ってはなんだが、コールは猫と一緒に暮らしている。不機嫌な猫。名前すら与えられていないみたい。「猫」というように「私=コール」は描写する。その突き放した関係が、何とも独身男と猫のリアリズムである。コールにはまた、別れた妻とその子供が、ルイジアナのバトンルージュにいる。遠い。別れた妻とはうまく行っていないものの、子供は時に一緒の時間を過ごすらしい。家のテラスで、テコンドーとカンフーを組み合わせた技を、二人で伝授し合うシーンが少しだけある。コールの愛すべき人間性だ。
さて本作の事件。「悪党」としか登場人物表で紹介されていない二人のでかい男のコンビが、全編を通して暗躍する。そう、「悪党」。彼らは窃盗犯の若者トリオを捜していて、次々と関係者から情報を絞り出しては殺してゆく。残忍極まりないが、二人の道中は不思議な対話に満ちている。タランティーノ映画とも違う。もう少しフリークな感じで。病気な感じで。どこか、心底怖くなるような二人。
逃げ回る窃盗犯若者トリオのうち一人が彼らに追われる。残るは少年と少女。コールは少年の母親から捜索依頼を受けたのだ。少年の母親の個性も際立っている。強い。怒りを秘めている。少年への愛に溢れ、張り詰めてている。さらに少女アンバーの個性が凄い。アンバーの母も姉も強烈である。これでは、世界は、女たちによって振り回されているんじゃないかと思ってしまう。作者の手を離れ、暴れ出しているようにしか見えない女性たち。それを遠慮がちにガードしてゆくコール&パイクという図。
彼女らを、暴力で虐げようとするのが、件の悪党二人。勧善懲悪ならわかりやすいのだけど、コールが保護する少年少女も多重窃盗犯で破れかぶれの身なのだから、警察の出る番はほぼない。闇の中を逃げ回る者とそれを追う者、それを解決しようとするコール&パイク。三つ巴の回転木馬が回る。法の裏側で。これまた女性警察官カセットをなだめつつ、だまくらかしつつ。
からっとして残酷でタフなLA産ハードボイルドである。それでいて心が熱くなるヒューマンな物語でもある。コール独自のルールで解決に導くやり方と、覚悟。完璧に近い探偵の印象は、前作でも感じさせてくれた。過去作品にも手が出したくなる、これは実に厄介なシリーズである。
次作はまたコール&パイクらしい。しかし主人公はパイクの方のようだ。いつも暴力の側を分担する寡黙でストロングな相棒の。アメリカではこの6月に上梓されるとのこと。コールたちの世界を縦横に走り抜ける自由闊達な女性たち。彼女たちとの再会や、新しいじゃじゃ馬との出会いが、何よりも楽しみな気がしてならない。
本作では、最も壊れていながら何よりも生命感を感じさせ、終始元気だった少女アンバーに、最優秀インパクト賞を! -
泥臭さがなくなってきてだいぶ洗練されてきたかな。
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エルビス・コールが探偵のシリーズ3作目。シリーズ知らずこの本を読む。
映像を見てるかのような、誰の視点で話が進んでるのかが章ごとのタイトルで分かるので読みやすい。
連続窃盗事件の犯人たちがたまたま盗んだあるものがきっかけで何人も殺されていく。
その「あるもの」を盗まれた人物の「素性」が分かった時点で、なんでこそ泥に入られるようなお粗末セキュリティなお家だったのか、もやもや腑に落ちないまま読了。 -
2017年発表
原題:The Wanted -
警察犬マギーのシリーズではありません。
「指名手配」は探偵コール&パイクシリーズ17作目で、「サンセット大通りの疑惑」以来19年ぶりの邦訳(訳者あとがきより)です。
ロバート・クレイスのWikiにある作品リストだとわかりにくいですね。
マギーが登場する「容疑者」は当初単発作品のつもりだったのではないでしょうか。
しかしこの作品が作家を復活させるほどの人気を得たので、
新たに得た読者層を続編「約束」に導いてコール&パイクに出会わせ、
マギーは?と思っているうちにコール&パイクの魅力にひきつけて本流のシリーズに誘う仕掛けかな。
仕掛けにはまった私は「指名手配」でさらに2人に魅了され、
それと共になぜコールとパイクはこんな女性や子どもを守ろうとするのか不思議になって、入手難しいコール&パイクシリーズ1作目から読むことになりました(笑) -
コールとパイクは勿論のこと、逃亡中の少年タイソン、その母親のデヴォン、皆んなキャラが立っていて、次のページになって仕方がなくなる。間違いなく面白い!