ネプチューンの影 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 90
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488236076

作品紹介・あらすじ

アダムスベルグ署長は、古い連続殺人事件のひとつとしか思えない殺人事件の報に接する。ネプチューンの三つ叉槍の刺し傷のある死体。しかし、彼が追っていた容疑者はすでに死亡したはず……?! 亡霊? 模倣犯? かつて、アダムスベルグの弟が恋人殺しの容疑をかけられ姿を消した事件も同じ刺し傷だった。一人の高名な判事が真犯人だと主張するアダムスベルグは、なんと自らも新たな事件に巻き込まれる。CWAインターナショナルダガー受賞のまぎれもない傑作!

感想・レビュー・書評

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  • アダムスベルグ警視シリーズ。
    ネプチューンの三つ叉槍の刺し傷のある死体。それはアダムスベルグが長年追い続けた連続殺人犯の手口だった。しかし彼が容疑者とみなしている男はすでに死亡しているはず。彼は再び捜査を開始するが荒唐無稽な話は信じてもらえず、そうこうするうちに彼自身も事件に巻き込まれてしまう‥
    奇想天外というかなんとも変な話だった。序盤はなかなか話が見えず進まなかったが、カナダ研修に行って一気に緊迫する。(カナダ人のフランス語が訳すと九州弁なのは笑えた。そんな感じなのか?)後半はかなりご都合主義のところがあるが、アダムスベルグのピンチに助力してくれる人々の活躍が楽しい。
    本筋とは関係ないが、シリーズが飛び飛びで訳されているせいか、アダムスベルグとカミーユの関係がいまいちわからないのと、フランスではカエルにタバコを咥えさせて爆発させる遊びが普遍的なのかが気になった。

  • 刑事アダムスベルグシリーズ第3作。翻訳されている中で。シリーズも作者も初読。

    あらすじ
    三本槍で刺された死体が発見される。それはアダムスベルグが30年も追いかけていた連続事件であった。犯人はわかっている。故郷で判事と呼ばれていた男だ。しかし、彼は必ず別の人間に罪を着せ消えてしまう。現にアダムスベルグの弟は犯人にされ、逃走している。そして、今回、警察チームが研修で行ったカナダにも判事の犯行が行われ、なんとアダムスベルグが容疑者にされてしまった。

     シリーズ途中のためか、いまいち設定や登場人物のキャラクターがつかみづらかった。あと、作品のテンポも。私には唐突な感じがして読みづらかった。

  • 今までは主役なのにつかみどころのなく、元恋人カミーユへの思いだけがしつこく描写されて、いつのまにか事件を解決してる、よくわからないけど有能な警部、という印象。今作は人が代わったかのような人情物語。無罪にはなったが、悪評のため故郷から離れている弟の事件と、現在起こっている事件に繋がりを感じる。以前、その事件に深入りし、犯人には危険視されている。犯人は死を偽装し生きていて、警部を殺人事件の容疑者として、世の中から葬ろうとしていた。結構、謎解きというか、本筋に忠実に構成され、非常に楽しく読めた。

  • 大好きなヴァルガスのアダムスベルグ警視シリーズの最新訳。論理からは程遠く、浮世離れした直感だけによって真実を掴み出してしまう「困った」警察署長が、今回は自分と自分の肉親が深く関わる事件の記憶によってよって窮地に追い込まれる。本格ミステリーながらフランスサッカー部ならではと思わせる一風変わった味わいのある作品で今後も翻訳が出ることを楽しみにしている。
    小気味良い老嬢達(ジョゼットがとってもチャーミング)の言葉遣いとか、粗野なケベックのフランス語「ケバクワ」がどんな風に原語で書かれているかも知りたいなぁ。フランス語で読めるようにはならないだろうけど。

  • フランスのパリの警察署長を主人公にしたミステリー.知らなかったけどシリーズ4作目(邦訳は3冊目)らしい.
    舞台はパリとケベックで,登場人物の名前が全員フランス系で頭に入りにくいのが難点.
    でも面白かった.前3作が未読でも全く問題ないと思う.主人公達がみなキャラが立っていて,魅力的.

  • 初フレッド・ヴァルカスだけど、面白かった!何でこれまで読んでこなかったのかと思う。アダムスベルグ警視のシリーズ3作目で、前作から読めば良かったとちょっと後悔だが、面白さは充分味わえた。妄想というかイメージをフルに働かせて物事のつながりや、隠されている本質を見つけ出す推理スタイルが斬新。既に死んでいる人物を犯人と信じ続ける狂気のような信念が良い。また脇を固める彼の部下たちも個性的でちゃんとキャラが立っていて、ふわふわと何を考えているか分からないアダムスベルグに苛立ちながらも、深く信頼している所とかすごく好み。さっそく他の作品も読んでみないと。

  •  キャラの立った小説は面白い。主人公が個性的で魅力的であること、他と違う唯一無二の人間であることは何よりも大切なことだが、名前を覚えることの苦手な読者にとっては、脇役陣であれ、早い時期に他のキャラと切り分けられるほどに個性的かつ印象的な人間であってほしい。そうすると物語が活き活きして、とても面白く感じられるのだ。

     本作はその意味ではお手本のような作品だ。フランスとカナダとを往復する物語であるために、巻頭の登場人物一覧には、パリとケベックとの刑事たちの名前がそれぞれにずらりと並ぶ。他にも関係する何人もの名前が。そのうちの何人かは、物語の中でこの上なく重要な役割を、しかも相当に魅力的に果たすことになる。

     主人公アダムスベルグは直観の男であり、最も仲の良い部下ダングラールは論理の男であるという対比構造がまた全体にビターテイストの香辛料みたいに効いている。これだけ個性と魅力豊かな面々がいれば事件なんて要らないんじゃないかと思えるほどに。まったく。

     しかし、本書は本格ミステリー読者にも受けが良いのでないかと思われる。長年月における複数件の殺人事件を、ひとりアダムスベルグのみが連続殺人と確信し、その犯人の見当もつけていた。初期の頃に弟のラファエルが容疑者として巻き込まれた事件であったことから、彼は今も行方不明の弟との再会を望みつつ、極秘に資料を漁っていたのだ。しかし既に犯人と目していた男が死亡している。しかしその連続殺人の延長と思われる事件に彼は、ふたたび出くわす。

     そしてその連続殺人者の魔手はカナダ出張中のアダムスベルグをもその渦中に巻き込んでゆく。容疑者はスーパーな天才的犯罪者にしか思えないが、それを追跡するアダムスベルグも相当にウルトラである。楽しいのは、追い込まれ逃亡しつつ真相を追及するという状況であり、そうした苦しい境遇を助ける仲間たちの稀有な活躍だ。

     いくつもの出会いがあり、そこに描かれてゆく人間絵図がたまらなく面白い。前半、どこに寄り道してゆくのかと思われる助走部分を読み進んでゆくと、急展する思わぬ展開から後半部は一気に読み進めたくなる傑作である。

     フレンチ・ミステリーはこうでなければ! と思わせる作品である。本来フレンチが持つノワールの気配や、対決構造や何気ない会話を含めた全体が、エスプリとゲーム性に満ちた、実に読みどころの多い傑作なのである。新年初の一冊としては文句なしの一冊であった。

  • 2020/01/01読了

  • 主役が不愉快。

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