影男 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488401108

感想・レビュー・書評

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  • 今回再読。昔読んだ時の記憶より、ずっと面白いと感じたのは自分が年を取ったからか……? 今までの過去作で使われてるアノ要素やコノ要素を寄せ集めてきている所はありますが、今回はそれを『影男』というキャラが活かすことで、ただの再利用ではない面白さが感じられた印象です。良いキャラだよね、影男。

  • 『影男』
    速水荘吉、綿貫清二、殿村啓介などいくつもの名前を持つ探偵小説家・佐川春泥。異常な性癖をもつ男の写真をとり強請るかと思えば、薄幸の少女を幸せにもする影男。殺人請け負い業・須原からの依頼で殺人のシナリオを書くが自らのアイディアで殺人が行われた事に嫌悪感を感じて距離をとる影男。影男が出掛けたパノラマ国。浮気した妻・美与子と篠田を殺害しようとして影男に邪魔された川波良斉からの依頼で影男の殺害を計画する須原。篠田と美与子をイブリ殺そうとする須原。須原の運転手・斎木の秘密。明智小五郎の推理。

  • 作者60代の作という。あれやこれやと奇想天外な話のてんこ盛り、初期の作品の焼き直し感もあるが、乱歩世界の手練れた描写で再び浮かびあがる、地中の楽園大ジオラマ。現代のガラス張り水族館などが真っ青じゃないかしら。いつの時代も好きなんだな、こういうのがね。いまやAIつきのゴーグルで自由自在にバーチャルな別世界へ行けますもんね。

  • 自身の他作品の二番煎じ、と乱歩自身があとがきで言い訳していますが、ただの焼き増しの世界ではなく、より禍々しくより肉々しい感じがすさまじかった。特に地下世界の女体女体の盛り合わせ、むせそうです。
    色々な顔を使い分けて、善人と悪人を行ったり来たりの影男、最後は一体どうなるのかな??と思ったけど、あっさり他の悪党と共に一網打尽にされていてちょっとあっけなかったかな。

  • 江戸川乱歩の作品は子供の頃の怪奇的なものに対する好奇心を思い起こさせる。この世の不思議を現実と妄想のギリギリの境目で描くことがうまい。物語を読みながら、まるで隣家を望遠鏡を覗き込むようなドキドキする昂揚感は、江戸川乱歩が見ることの呪詛的な効能を突き詰めたからなのだろうか。見ることと見られることの関係性は、安部公房よりも分かりやすく描き出されている。密室を見る立場と、密室内の登場人物を通して見られる立場も想像することで、この二項目の間を行ったり来たりすることも、江戸川乱歩の作品の醍醐味だろう。

  • 一冊まるごと『影男』を主人公とした長編作品だが、オバニズム方式でどこから読んでも面白い作品となっている。
    基本的には犯罪小説だが、多くは紳士的で、善行も好む、また過度な残虐行為には嫌悪感を示すなど、少しヒーローものにも似た読み応えだった。

  • 影男の奇妙な生活
    影男と殺人請負会社須原との奇妙な対決
    地下世界のパノラマ
    濃厚な乱歩ならではの世界
    濃いいなあ
    他の乱歩小説の濃い部分を寄せ集めたような作品
    とても好きだなあ

  • 出版社/著者からの内容紹介
    東に人の弱みを探してゆすり、西でネタを拾って小説を書き、南に薄倖の少女を救い、北では美女を侍らせての豪遊……やることなすこと図に当たり意気揚々の影男。しかし殺人請負会社に関わったことから前途は一天俄に掻き曇り、刺客に狙われる破目に。悪党が鎬を削る活劇に快刀乱麻の腕の冴えを見せるは、ご存じ名探偵! 

    たまには昭和的耽美が欲しくなり読みました。うーん、劇画。影男が典型的なヒーローです。しかも完全な善人キャラでないところが大人向け(そしてエロい)。しかしながら最後はそれかい!というツッコミを全力でいれたくなる。そこまでの展開がけっこう面白いだけに。とってつけたような明智探偵の登場がほんとに余計。影男活躍譚のままずばーんと終わればよかったのに。何だったんだ。

  • おもしろかった。こういう話が好きだとはじめて思った。(中学生時)裏の世界からみた人間模様。とてもおもしろい。えどがーらんぽは天才です。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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